情報共有を目的に新聞記事のコピーを社員に配布していた企業で、それを「違法だ」とパート従業員が恐喝まがいの告発をした。さて、この会社はどう対応すべきなのだろうか。
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東京・丸の内に事務所を構える旅行代理店A社に勤めている学生時代の悪友B氏から、「久しぶりに会いたい」と連絡がきた。どうやらプライベートではなく、会社で何かあったらしい。喫茶店やレストランでもと思ったが、電話口での様子から彼の自宅へ10数年ぶりに伺うことになった。さて、今回はどういう状況だったのだろうか。
(編集部より:本稿で取り上げる内容は実際の事案を参考に、一部をデフォルメしています。)
旅行代理店でのB氏の立場は部長である。現在はさまざまな公的な情報(外務省や国際紛争の関連記事など)、新聞や雑誌、ネット記事などを集めて、世界情勢や国内の事故情報を集約し、ツアー先の経路選択での参考情報や、旅行中の顧客に対する安全情報の提供などを行っている部署のトップであった。
A社は大きな企業ではないが、主に中高年向けで旅行代金も比較的高いユニークなツアー商品や添乗員の丁寧な対応が受けて急成長している。自社で主催するツアーが売上のほとんどを占めていた。
さて、自宅に伺うとB氏から真っ先にこう切り出された。
「お陰さまで急成長していることもあって、先月から3人のパートを採用している。その1人のC君が私にクレームをしてきたのだが、その対応に苦慮しているんだ」
そのクレームとは、B氏の部署の業務に関わることであった。C君はB氏にこう告げたという。
「新聞記事から知っておくべき情報を切り抜いてコピーし、企画セクションの全員に配布していますね。これは違法であることはご存知ですか? うちの会社は今、急成長しているので、これが世間に広まれば残念ですよね」
C君は明らかな金銭要求もせず、脅迫もしていない。それだけに不気味な存在だった。この行為に不審に思ったB氏は、履歴書からC君が以前に勤めていた会社に連絡してみたところ、その会社の社長は「関わり合いたくない」と返答してきたという。B氏が何とか説得してその理由を聞き出した。
それによると、その会社の社長は以前に喝を入れるつもりで、ある営業担当者の頬を軽く平手打ちしたそうだ。その様子を見ていたC君は、営業担当者を連れて弁護士に「パワハラなのでどう対応すべきか」と相談したらしい。C君に訴えられた社長は、示談を提案して相応の金額を支払ったとのことだ。
さてさて、困った問題である。C君がこういう行動を何年しているのかは不明ではあるが、B氏としてはその前に、社内での対応を考えなくてはいけないという。筆者にそのアドバイスを求めてきたというわけだった。
本件ではスペースに都合もあるので、C君の一連の行動が突発的なものかどうかといった考察は省略する。C君の「法律に違反している」と指摘された件について、A社におけるB部長の対応と今後の対策を示してみたい。
筆者は、著作権やその周辺の法律に詳しいわけではないが、長年コンプライアンス問題や情報セキュリティ関連の仕事をしている。そう前置きした上で、B氏に以下の質問をした。
質問1:新聞以外に配布に利用しているものはないか?
(ほぼ新聞のみで、何度か外務省のWebサイト画面を印刷したことはあるという)
質問2:配布は切り抜きしたものを回覧しているのか、コピーして一人ひとりに配布しているのか?
(以前切り抜いて回覧していたが、全員が回覧し終えるまでに時間がかかるので、最近はコピーして配布している)
質問3:配布は何部くらいか?
(12人の企画部全員が対象)
質問4:切り抜きは毎日なのか、不定期なのか?
(毎日するほど暇ではないとのこと。作業自体はパートが担当しており、B氏が指示しているのは週1回程度であるようだった)
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