日立製作所がITサービスの強化に向けて事業構造の改革を加速させている。なぜ同社は改革を急ぐのか。そこには今後のクラウドサービス競争をめぐる思惑があるようだ。
「2015年度は事業ポートフォリオの変革を強力に押し進めたい」
日立製作所の齊藤裕 執行役副社長 情報・通信システムグループ長兼情報・通信システム社社長は6月11日、同社が証券アナリストなどを対象に都内で開いた事業戦略説明会で力を込めてこう語った。
日立の情報・通信システム事業の2015年度(2016年3月期)実績見通しは、売上高が前年度比3.3%増の2兆1000億円、営業利益が同20.5%増の1400億円。ただし、営業利益は当初(2014年6月時点)の2000億円の見通しから600億円減額した。
齊藤氏は減額の理由について、「通信ネットワーク事業における国内通信事業者向けの売り上げ減少」や「国内でのサーバやソフトウェアなどのプラットフォーム製品の需要減少」などが見込まれることを挙げ、「事業環境の変化への対応が遅れたことの反省を踏まえ、事業構造の改革を加速させたい」と語った。
では、どのように改革していくのか。
齊藤氏はまず、事業の目指す姿について、「従来の基盤領域については選択と集中によるサービス化シフトを進め、高収益型サービスへと事業ポートフォリオを変革し、全社で取り組む社会イノベーション事業の拡大とともに成長軌道を描いていきたい」と説明した。(図1参照)
高収益型サービスを目指すのは、従来の基盤領域だったシステムソリューション事業とプラットフォーム事業だ。これらをどのように高収益型サービスにするのか。
システムソリューション事業について、齊藤氏は「現在はクラウド基盤サービスが中心だが、これにビッグデータ利活用基盤などを載せてサービスプラットフォームに仕立て上げる。さらに、これをベースに業種共通あるいは業界特化型のクラウドサービスや、特長ある業種でのバリューチェーンへと拡張していく。すなわち、サービスプラットフォームをベースにしたナレッジ活用ソリューションを提供し、新たな価値を創出するサービスあるいは顧客課題解決型のサービスを拡大することによって高収益化を図りたい」とのシナリオを示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.