企業のクラウド利用形態は今後、「パブリック」と「ハイブリッド」のどちらが主流になっていくのか。日本ヒューレット・パッカード社長の話を聞いて考えさせられた。
「パブリッククラウドは通過点の1つにすぎない。今後は必ずハイブリッドクラウドが主流になっていく」
日本ヒューレット・パッカードの吉田仁志社長は11月2日、同社が開いた記者会見で、企業のクラウド利用形態についてこう強調した。この会見は、米HPが11月1日付けでエンタープライズ事業の「Hewlett Packard Enterprise(HPE)」と個人向けPC・プリンタ事業の「HP Inc.」に分社化したのに伴い、HPEの日本法人である日本ヒューレット・パッカードが今後の事業戦略を説明したものである。
会見全体の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは吉田氏が会見の中で語った企業のクラウド利用形態についての見解が、冒頭の発言をはじめとして非常に興味深かったので取り上げたい。
ちなみにHPは10月、クラウド事業においてパブリッククラウドのIaaS型サービスの提供を2016年1月31日に終了し、今後はOpenStackベースのプライベートクラウドや、それとオンプレミス、あるいは他社のパブリッククラウドと連携させたハイブリッドクラウドの構築・運用を中心に展開していくことを発表した。
そうした経緯から、吉田氏の冒頭の発言は、聞きようによってはパブリッククラウドから撤退を決めたベンダーの負け惜しみにも受け取れるが、同氏の話を聞いてみると、企業のクラウド利用形態についてあらためて考えさせられるところがあった。
なぜ、ハイブリッドクラウドなのか。吉田氏は、「クラウド化の話になると、パブリッククラウドへの移行ばかりが注目されがちだが、実際の企業のシステムにはさまざまな柔軟性が求められる。その意味では、パブリッククラウドだけでなくプライベートクラウドやオンプレミスと柔軟に連携させたハイブリッドな利用環境が企業にとって最も望ましい」と説明した。
さらに、パブリッククラウドへの全面移行については、「セキュリティ面で大きなリスクがある。例えば、パブリッククラウド上でもし情報漏えいが起きた場合、そのクラウドを利用している企業は自社の重要なデータがどこにあるかも分からず、何の対処もできない可能性がある。今後、企業にとってデータがますますビジネス戦略の要となってくる中で、果たしてすべて外部に預けてよいものか。重要なデータについては自社で管理できるようにする仕組みづくりが必ず求められるようになる」と警鐘を鳴らした。
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