スピード経営時代、企業が選ぶべきクラウドERPは?

 2016年は、ERP市場が大きく動く年になるかもしれない。これまでオンプレミスが当たり前だったERPのクラウド利用が、いよいよ本格化し始めているからだ。激しいシェア争いを繰り広げるグローバル対応ERPベンダー各社の最新動向を追った。

» 2016年01月12日 09時00分 公開
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 企業の基幹業務システムといえば、かつては自社の業務要件に合わせてスクラッチで開発するものだった。しかし現在は、販売、在庫、生産、会計などの業務を統合的に管理するERPの導入が主流になりつつある。ERPには、システム構築期間の短縮やコスト削減、柔軟な拡張性といった特徴があり、あらゆるデータとフローを一元管理することで、業務を省力化できるからだ。

Photo ERPシステムのメリット(出典:ネットコマース)

 ERPは自社開発システムとの共通点が多く、それがクラウド化を阻んできた。「基幹業務システムには経営を左右する重要な機密情報が格納されており、セキュリティ対策の観点から社外に置きたくない」「複数のシステム同士を連携させる必要性がある」――という理由から、基幹業務システムはオンプレミスで構築するのが一般的だったのだ。

 ところが、ここ1〜2年で状況が大きく変わり始めた。クラウド技術の目覚ましい進化と急速な普及により、ERPの新規導入先や更新時の移行先として、クラウドを検討し、導入に踏み切る企業が出てきたのだ。

クラウドERP時代の幕開け

 クラウドベンダー側も積極的にERPをサポートするようになり、今ではプライベートクラウドだけでなく、パブリッククラウドのIaaS/PaaSでもERPを利用できるようになった。クラウドでERPを運用すれば、オンデマンドな従量制の料金体系や、フレキシブルなキャパシティーの確保、可用性の向上といったクラウドのメリットを享受できる。

 さらに、ERPベンダー各社のクラウド対応も見逃せない。これはグローバル展開を目指す企業にとって、特に重要なポイントといえる。

 よくあるのは、日本の本社にオンプレミスのERPを導入し、海外拠点には個別にSaaS型の業務アプリケーションを導入した結果、連携が難しくなるというケースだが、こうした問題はクラウド対応ERPが一気に解決してくれるかもしれない。海外拠点の商習慣や法制度の違いを吸収し、国内と同じ指標でリアルタイムに経営状況を把握するという役割は、クラウド対応のERPが得意とするところ。BCP対策や業務プロセスの標準化にも役立つはずだ。

クラウド事業者のERPサポートが加速

 ERP市場にクラウド化の波が押し寄せる中、市場のキープレイヤーはどのような動きをしているのか。まずは、クラウドベンダーの動きを見てみよう。

 パブリッククラウド業界の巨人、Amazon Web Services(AWS)は、早い時期からさまざまなERPパッケージベンダーと提携し、AWSのクラウド基盤を利用したERPシステムの構築を実現している。AWSでも“ERP on AWS”と称し、企業の基幹業務システムが稼働するプラットフォームとして積極的に売り込んでいる。

 ERP on AWSは、製品によってサービスの提供形態が異なっている。最も多いのが、IaaSである「Amazon EC2」上にERPを構築するもので、この基本アーキテクチャはオンプレミスと大差なく、ほとんどのERPはこの形態で運用することが可能だ。例えば、2011年にAWSと提携したSAPは「認定インスタンス」という制度を設け、SAP製品が稼働可能なEC2インスタンスタイプにお墨付きを与えている。

 EC2上に構築するタイプをさらに発展させたのが、AWSのロードバランサー「ELB」やDBaaS「Amazon RDS」などのサービスを組み合わせて構築するスタイル。これにより構築期間の短縮や高い拡張性と可用性、自動化など、さらに多くのクラウドのメリットが享受できる。例えば、Amazon RDSに対応するERPには、SuperStreamなどがある。このほか、インフォアやワークスアプリケーションズのように、SaaSのプラットフォームとしてAWSを採用したERPベンダーもある。

 AWSを猛追するマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」は、IaaSである「仮想マシン」上でERPの稼働をサポートする。AWSと同様、マイクロソフトもSAPとグローバルな提携関係にあり、SAPは仮想マシン上で稼働するSAP製品をサポートしている。また、両社の日本法人同士が独自に協業関係を結んでおり、日本国内ではパートナーを通じてAzure上でのSAP導入や構築、運用のサービスを提供している。

 マイクロソフトにはERPベンダーとしての顔もある。当然のことながら同社のERP製品「Microsoft Dynamics AX/NAV」はクラウドに対応しており、そのプラットフォームとしてAzureが使われている。

 このほかのクラウド事業者もERPのサポートを進めている。例えば、VMwareが同社の仮想化ソフトウェア製品の利用者向けに提供する「vCloud Air」もSAPと提携。オンプレミスのSAPをシームレスにvCloud Airのクラウドに移行し、ERPのハイブリッドクラウド環境を容易に構築することが可能だ。

“ビッグ2”はそろってクラウドに傾倒

 続いてERPベンダーの動向を見ていこう。

 グローバルERP市場で確固たる地位を築ぎ、日本国内でもトップシェアを誇るSAPは、2015年に新世代ERP「SAP Business Suite 4 SAP HANA(SAP R/4HANA)」を発表した。SAP S/4HANAは、簡単にいえば大容量データの高速分析に対応するインメモリDB「SAP HANA」上に構築されたERP「SAP Business Suite」ともいえる製品だが、SAP自身が「1992年のR/3以来、23年ぶりの新製品」というようにコードを全面的に書き直し、「データベースからどんなデータも瞬時に取り出せるERP」を目指した全く新しい製品となっている。

Photo 1992年のR/3以来、23年ぶりの新製品として登場したSAP R/4HANA

 このSAP S/4HANAには3つのエディションが用意されている。1つは「オンプレミスエディション」。これは、適用対象や機能、業種別対応が従来のSAP Business Suiteと同じものだ。2つ目は「マネージドクラウドエディション」。これもオンプレミスエディションと同じターゲットで、プライベートクラウド上にSAP S/4HANAを展開する企業向けの製品だ。

 そして3つ目の「パブリッククラウドエディション」は、基幹業務や業種固有のビジネスシナリオに対応する製品として提供される。各エディションを混在させ、一部をオンプレミス、一部をパブリッククラウドといったように、ハイブリッド環境で運用することも可能だ。このように、クラウドを強く意識した製品構成になっているのが、新製品の特徴となっている。

 クラウドERPの分野で一歩先を行くのが、オラクルだ。M&Aを繰り返して巨大化したオラクルは、「Oracle E-Business Suite」「Oracle Fusion Applications」「Oracle JD Edwards EnterpriseOne」など、複数のERP製品のラインアップを持っている。オラクルはこれらの製品ラインアップをあえて統合せず、企業の要件に合わせて各製品を自在に組み合わせることで最適なソリューションを提供しているのだ。これは、ERPの大規模なカスタマイズを望まない企業にとって最良の選択肢となっている。

 そうしたソリューションの1つとして、オラクルが注力しているのが「Oracle ERP Cloud」である。これは、グローバル展開を視野に入れた企業に焦点を当てたERPをSaaSとして提供しようというもの。オラクル製品の連携性の高さから、既存のERPをまとめる海外拠点用のサービス利用にも適している。

Photo Oracle ERP Cloudのコンセプト

進む国産ベンダーのクラウド対応

 国内外のいずれにおいても、ERPの上位シェアはSAPとオラクルが占めているものの、市場全体を俯瞰すると大きな違いがある。日本には「国産ERP」を提供する有力企業がひしめいていることだ。

 世界市場ではマイクロソフトを超えるシェアを持つインフォアは、日本で20年前からビジネスを展開しているが、長い間ビッグ2と国産ベンダーの前に後塵を拝してきた。ところが最近は、業種業界に特化したSaaS型クラウドERPを次々にリリース。クラウドERPの先駆者として巻き返しを狙っている。

 SAP、オラクル、インフォア、マイクロソフトなどの海外勢を迎え撃つ国産ベンダーも、クラウド対応を急いでいる。国産ERPとしてトップクラスのシェアを誇る「COMPANY」で知られるワークスアプリケーションズは、上述したAWSのほかにAzureやIBM SoftLayerなどのクラウド事業者と提携し、IaaSと各種サービスを組み合わせたクラウド基盤を提供している。さらに同社は、従来のアーキテクチャを見直してクラウドに最適化したSaaS型ERP「HUE」(High Usability Enterprise)を開発。これもパブリッククラウド経由で提供されている。

Photo オペレーション担当者の憂鬱、ERPの常識を根本から破壊するというコンセプトで開発された「HUE」

 ほかにも富士通が同社のERP「GLOVIA」の一部アプリケーションをクラウド(SaaS)化し、富士通のデータセンターより配信している。スーパーストリームは、グループ経営管理に強いWebベースのグローバル対応ERP「SuperStream-NX」にSaaS版を用意。PaaS、IaaSもセットにし、パートナー経由で提供している。


 リアルタイム経営、企業のグローバル化、BCP対策、コスト削減など、企業が抱えるさまざまな課題に応えてくれるのがクラウド型ERP。クラウドERP元年ともいえる2016年、いま一度、社内の基幹システムを見直してみてはいかがだろうか。


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提供:スーパーストリーム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年2月13日

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