マイクロソフトが新OS「Windows 10」で変えようとしているのはOSだけではない。Surfaceをはじめとするハードウェアにも変化を起こそうとしている。2月に発売した2in1デバイス「Surface Book」も先進的なノートPCを目指した“とがった”プロダクトだ。
マイクロソフトの新OS「Windows 10」。タブレットとPCのUIをシームレスに切り替える「Continuum」やWaaS(Windows as a Service)など、新しい機能やシステムが盛り込まれ、今までのWindowsシリーズとは異なる、次世代のOSを提供しようという意気込みが感じられる。
しかし、同社がWindows 10で変えようとしているのはOSだけではない。OSが動作するハードウェアも同じだ。大画面デバイスの「Surface Hub」やヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」など新たなハードウェアを次々と発表しており、日本で2月に発売した2in1ノートPC「Surface Book」も先進的なノートPCを目指す“とがった”プロダクトといえる。
これまでSurfaceシリーズは、WindowsマシンのリファレンスモデルとしてWindowsの理想的な使い方を示しつつ、性能や価格も含めて、良い意味で“標準的”なデバイスを展開してきた。しかし、このSurface Bookはこれまでの製品とは一線を画すデバイスに仕上がっている。
Surface Bookは合体時に見た目がクラムシェルノートPCそのものになる「着脱式キーボード」(キーボードドック)を組み合わせて使うタイプで、キーボード部分にNVIDIAの外部GPUを搭載。画像・映像編集にも向くパフォーマンスを確保し、価格も23万円前後(外部GPU搭載モデルの場合)からとノートPCとしては「プレミア」クラスに位置する価格帯だ。単にスペックだけを見ると「クリエイター系の人しか必要ないのではないか」と思う人もいるかもしれない。
「クリエイターの人に向くのは確かですが、業務用PCという観点で見ても、オフィスワーカーのワークスタイル改革を支援する魅力的なマシンだと思います」
こう強調するのは、日本マイクロソフトでSurfaceシリーズのマーケティングを務める小黒信介さんと土屋奈緒子さんだ。一見オーバースペックに見えるマシンを業務用PCとして推薦するのはなぜなのだろうか。
Surface Bookは「本当のノートブックのようなデバイスを作る」というコンセプトで生まれたマシンだ。ディスプレイ部だけならペン入力対応の大画面タブレットとして利用でき(ポータブル・クリップボード)、裏返してキーボードにはめれば、スケッチブックのようにも使える(クリエイティブ・キャンバス)。そして、キーボードを使えば一般的なノートPCのような生産性も得られる(パワフル・ラップトップ)。
Surface Pro 4と比べると、画面が大きくなり、性能も上がったぶん、重量は約1.5倍となっている。重さを多少犠牲にしてでも、より高いパフォーマンスを必要とする業務を行いたいという人にはSurface Bookが向きそうだ。
「マイクロソフトとしては、Surface Book によってユーザーの選択肢が広がると考えています。これまで2in1デバイスの使い方や、Surfaceに興味があってもスペックやパフォーマンスの観点で諦めていたような方々にも満足して使っていただけるでしょう」(土屋さん)
Surface BookとSurface Pro 4の主なスペック比較 | ||
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製品名 | Surface Book | Surface Pro 4 |
画面サイズ | 13.5型(3:2) | 12.3型(3:2) |
画面解像度 | 3000×2000ピクセル | 2736×1824ピクセル |
外部GPU | 搭載 | 非搭載 |
タブレット単体の本体サイズ(幅×高さ×厚さ) | 約312.3×220.2×7.7ミリ | 約292.1×201.4×8.45ミリ |
キーボードもしくはType Cover装着時のサイズ(幅×高さ×厚さ) | 約312.3×232.1×13.0〜22.8ミリ | 約295×216×13.1ミリ |
タブレット本体の重量 | 約728グラム | 約766グラム〜約786グラム |
キーボードを含めた重量 | 約1516グラム〜約1579グラム | 約1061グラム〜約1081グラム(Type Cover 4装着時) |
外部GPUを搭載し、高度なグラフィック処理能力を持つモデルがあることから、CADを使う製造業や画像処理を行うカメラマン、そしてグラフィックや動画を扱うクリエイターに向くマシンではあるが、一般的なビジネスパーソンにもSurface Bookは向くという。
普段はノートPCとして使い、客先でのプレゼンの際にはディスプレイ部をはずして、タブレットとして使用する。他のWindowsタブレットでもありがちな利用シーンだが、特にSurface Bookは画面が大きく、ペンが使えることから、画面に書き込んだり、タッチ操作でページをめくったりと表現の幅を広げやすい。
「例えば新幹線の中で効率的に作業したいとか、画面が大きいほうがいいなど、業種を問わずに生産性を高めたい方にはSurface Bookがよいでしょう。画像や映像の編集を行わないのであれば、外部GPUを省いたモデルもあります」(小黒さん)
Surface Bookのキーボードは、各キーを離したアイソレーションデザインを採用しており、ほぼ“本格的なノートPCのキーボード”と言って差し支えない。マグネシウム合金で剛性があるため、ひざの上などに乗せたときでも、薄型軽量のType Coverより入力が安定しやすい。長時間タイピングをしても疲れにくいはずだ。
仕事がはかどるパフォーマンスが得られるとはいえ、やはり価格が――と考える人もいるだろう。安定性やサポート面を重視しつつ、10万円未満のマシンを選ぶケースが多い中で、20万円前後という金額を大きな負担だと考えるのも無理はない。部門ごとや全社導入などを考えるならばなおさらだ。
「さまざまなお客さまと話す中で、先進的な働き方を実践するベンチャー企業の役員が導入を検討するケースや、『全社導入は厳しいが、エグゼクティブ層に向けて導入を考えている』というケースがありました。彼らは素早い決断を求められることが多いため、パフォーマンスの高いマシンを用意するという考え方は有効だと思います。エグゼクティブ層は人前で話すことも多いですし、プレミアム感のあるデバイスを使うことで、会社としても先進性のアピールになるはずです」(小黒さん)
Surface Bookのパフォーマンスをどこで生かそうとするかは企業ごとに異なるだろう。エグゼクティブ層はプレミア機のSurface Bookを使い、それ以外の社員は標準機としてSurface Proシリーズや他のWindowsマシンにするという使い分けもいいし、クラムシェルノートPCとしての生産性が大切ならSurface Book、持ち歩きやタブレットPC単体での使い勝手を重視するならSurface Pro 4という分け方ももちろんアリだ。
これら2種類の端末であれば、社内展開用のイメージを共通で使えるため、情報システム部門としても運用しやすいうえ、Windows 10はデバイス管理関連の機能を豊富にそろえている。最近は業務部門が情報システム部門の管理から外れたマシンやツールを使う「シャドーIT」問題が話題になっているが、高性能なマシンを導入することで、個人デバイスの利用を防げるのもメリットの1つといえる。
クライアントPCに対する要件は企業によっていろいろだが、仕事を支えるという意味では、安定性やサポート面といった点はもちろん大事だ。しかし、仕事の効率を高め、革新するという点でデバイスを見直してみると、その要件は変わってくるだろう。
その観点でSurface Bookを見直してみると、デスクトップPC並みの性能を2in1デバイスに凝縮していることから、マシンにパフォーマンスが必要なために、自席に縛られている人をデスクから解放する可能性を秘めている。特に専門性が高い業種での社内コミュニケーションが活性化するかもしれない。
「自席ではドッキングステーションの『Surface Dock』で複数画面の作業、軽い打ち合わせであればタブレットだけを持っていけばいい。ともすれば、マシンスペックのせいで自席に縛られてしまいがちな人でも、気軽に社内打ち合わせができる――Surface Bookはそんな使い方が期待できるマシンです。特にエンジニアや研究職といった人たちには、ぜひ触ってもらいたいですね」(土屋さん)
今までのSurfaceおよびSurface Proシリーズは、「PCのようなタブレット」「タブレットのようなPC」というコンセプトだったこともあり、どちらかと言えば“タブレット色”の強い製品だった。一方でSurface Bookはこれまでと異なり、何より生産性に重きを置いた“タブレットの延長線上”にとどまらない製品に仕上がっていることが分かる。
ワークスタイル改革が叫ばれている昨今、経営層からITを使った社員の生産性向上を命じられる場面も増えているだろう。社員が使うPCにも、安定性やサポートといった“守り”の側面だけではなく、“攻め”の側面に着目して選んではいかがだろうか。そのときに「Surface Book」は有力な選択肢の1つになるはずだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年3月23日