スマホ時代の改正e-文書法、導入前に知っておきたいメリット、デメリットいいことばかりじゃない?

2015年に規制が大幅に緩和され、対応のハードルが大きく下がったe-文書法。2016年にもスマートフォンによる証憑の撮影が可能になるとみられ、さらに導入の気運が高まるとみられている。しかし、改正内容を見てみるといいことばかりではないようで……。

» 2016年07月19日 10時00分 公開
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2016年、e-文書法が再び改正 スマホ時代の仕様に

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 領収書や契約書の電子保管を可能にする「e-文書法」の規制が緩和されて約1年。文書保管のためのスペース削減や、輸送コストの削減など、さまざまな効率化をもたらすとして注目を集めているこのe-文書法が、2016年3月の財務省令で新たに、従来の原稿台付きスキャナに加えて、新たにスマートフォンやデジタルカメラを用いての領収書の電子化を認めることが公示された。

 e-文書法にのっとった証憑の電子化は、まだ本格的に取り組んでいる事業者は多くないものの、コスト削減や業務効率化の切り札として、興味を持っている企業も多いはず。今すぐ導入する計画はなくても、いずれ着手する時に備えてアンテナを張り、制度の把握に務めている担当者も少なくないはずだ。

 本記事では、3月31日の官報で新たに公示され、2016年9月30日に施行される規制緩和によって、従来とはどこが変わるのかを紹介する。

スマホやデジタルカメラでの撮影も対象に

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 2005年に施行されたe-文書法が、運用しやすいよう改正されたのは2015年。それまで認められていなかった「3万円以上の領収書も電子化が可能になったこと」に加えて、「電子証明書の付与が不要になったこと」が、大きなポイントだった。2016年に予定されている規制緩和では新たに、「仕様を満たしたスマホやデジタルカメラでの撮影が認められる」点がポイントになる。

 従来は読み取り装置として認められているのが「原稿台付きのスキャナー」のみだったため、電子化の作業が行えるのは、実質的にはスキャナを所有している経理などの担当部門に限定されていた。

 今回の改正でスマホやデジタルカメラが利用できるようになれば、個々の従業員が外出先で受け取った書類をその場ですぐさま電子化できるようになり、従業員は領収書を手で貼るといった作業から開放され、処理フローも迅速になる。併せて、一括して電子化の作業を行っていた経理などの担当部門の負担も軽減される。これは大きな進歩といえるだろう。

 従来の原稿台付きスキャナーの場合、読み取り解像度は200dpi以上、フルカラーまたはグレースケールといった具体的な条件が定められるとともに、4ポイントの文字が読み取れることが目安として掲げられていた。

 今回、利用が認められるスマホとデジタルカメラについては、現時点ではまだ具体的な読み取り条件は発表されていないが、現行のスマートフォンであればそのほとんどの機種が対応するものとみられている。手持ちのデバイスをそのまま使って電子化できるようになるのは、導入コストの面から考えても朗報だ。

証憑を電子化の新旧ルールをおさらい

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 もっとも、スマホやデジカメでの読み取りにあたっては、従来の原稿台付きスキャナでの読み取りと同様、幾つものルールが設けられている。既にあるルールと、今回、新たに定められたルールのそれぞれについて見ていこう。

 まず大前提として、証憑の電子化にあたっては、「事前の所轄税務署への申請」が必要だ。法定保存文書を電子化して保存するには、まずその旨を所轄税務署に申請し、要件を満たしていれば申請の3カ月後に電子データによる保存が可能になる。そのため、仮に2016年9月30日に申請を行った場合、実際に運用を始められるのは3カ月後の、2017年1月1日からとなる。

 それゆえ、申請もなしに証憑類を電子化し、やみくもに原本を処分してしまうと取り返しがつかないことになる。これは従来も、今回の追加規制緩和後も同様だ。

 加えて、電子化したデータにタイムスタンプを付与する必要があるのも、従来と同様だ。タイムスタンプの付与はデータをアップロードした先のタイムスタンプサーバで行うことになるが、領収書を受領してから電子化するまでの期間は最短で「3日間」とされているため、担当部署に集約してからまとめて処理するのは現実的ではない。実質的には、領収書を受け取った従業員本人が、電子化とサーバへのアップロードを行わざるを得ないだろう。

 さらに、今回新たに追加された、領収書をスマホまたはデジカメで撮影する前に、「自分の名前を自筆で明記しなくてはいけない」という条件には注意が必要だ。これは1枚の領収書を複数の従業員で使い回さないようにするための対策で、電子化してから画像上に名前を書き込むのではなく、撮影前にあらかじめペンなどを使って記名をしておくことが必須となる。タイムスタンプについてもいえることだが、領収書の改ざんや不正利用について、かなり念入りに対策が取られていることが分かる。

 さらに従来と同様、領収書については第三者によるチェックが必要となる。例えば従業員がスマホによる撮影を行った場合、原則として上長が原本と照らし合わせて承認することになる。それゆえ個人事業主のように1人で事業を営んでいる場合は、これらの処理を1人で完結させることができず、税理士などの第三者にチェックを依頼する必要がある。現実的に考えると、このクラスの事業者にとっては、そこまでして電子化を行うメリットは現状ではあまり高くないといえそうだ。

 また、こうした第三者によるチェックが終わるまでは、原本を処分できない点にも、留意したほうがいい。つまり、外出先でスマホやデジタルカメラを使って領収書を撮影しても、その場ですぐ廃棄してしまうのはご法度で、いったん原本を持ち帰らなくてはならない。海外で既に実現しているような、“撮影してすぐ原本を廃棄して身軽になる”といった運用にはならないのだ。

 もっともこれについては、必ずしも紙の原本がなくとも、電子化された画像を用いてチェックすれば問題ないという話もあり、まだ含みを残している。いずれにせよ、今後の課題の1つと言ってよいだろう。

業務フローの変更も視野に電子化のメリットの見極めを

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 こうしてみると、スマホやデジタルカメラによる撮影が認められたのは大きな進歩ではあるものの、それによって新たなフローが追加されて手間が増えたところもあり、決していいことばかりではないことが分かる。

 特に従来は、電子化するために新たなフローを導入するのは、書類を扱う経理などの担当部門に限られており、社内で携わる人数もさほど多くはなかった。しかし、今回の規制緩和では従業員個人が関わる部分も多く、本格的にスマホやデジカメによる電子化を業務フローに組み込むとなると、規模が大きいぶん慎重な対応が求められる。社内で部署を横断したプロジェクトチームを組んだり、支店や営業所が多い場合は個別に勉強会を行うなどといった取り組みも必要となってくるだろう。

 とはいえ、現在の制度にのっとっていち早く電子化を行っている企業では、書類の保管スペースの削減や輸送コストの低減、検索性の向上による問い合わせ工数の削減、さらには税務調査時の対応工数削減など、既に多大な効果が上がっているケースが多く、帳簿類の電子保存はこれからますます増えていくことは間違いない。

 ソリューションベンダーから続々と登場している各社の製品を参考にしつつ、自社にとって最も導入が容易で効果が高い方法を見極めることが導入の成功に向けたポイントになるだろう。


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提供:スーパーストリーム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年9月18日

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