サーバもインフラSIも消える? エバンジェリストが考えるITの未来

5年後、10年後にエンタープライズITの世界はどうなっているのか――。技術革新のスピードが上がっている今、未来を予測するのは非常に難しくなっているが、IT業界に長く身を置き、サーバ、ネットワーク、インテグレート分野に精通したエバンジェリスト3人が集い、エンタープライズITの未来を語り合ってもらった。

» 2016年10月31日 10時00分 公開
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 皆さんは5年後、10年後に世界がどうなっているかを考えたことはあるだろうか。技術が進化するスピードはすさまじく、10年前にはスマートフォンさえ世の中になかったことを考えれば、正しく未来を予測するのがいかに難しいことか想像できるだろう。

 テクノロジーの力で世界はどうなっているのか。ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)もそんな“未来予想図”を描いている企業の1社だ。未来の郊外都市に住む人々の生活を予想した動画を「HP Cool Town」として2000年に作成している。

HP Cool Town from 2000

 エンタープライズITの未来は今後どうなっていくのか。そして私たちはどのように対応すればいいのか。IT業界に長く身を置き、サーバ、ネットワーク、インテグレート分野の先端ITに精通した同社のエバンジェリスト3人が集い、この動画をテーマに語り合った。

サーバは無くなる? SIも必要なくなる?

及川(ハイブリッドインフラエバンジェリスト): 皆さん、この動画を見て「懐かしいな」と感じた人もいると思います。10年ほど前に見たときは、「そんな未来が来るかもしれない」くらいに思っていましたが、今見ると、端末は音声認識で操作できるし、自動運転も十分に進化してるし、インテリジェントな腕時計もあるし、現実世界がこの予想を追い越してる部分もありますよね。

 10年以上この業界で働いてきて思うのは、「未来」って今ある物事の延長線上にあるのか、それとも断絶的な何かがあるのかという2つの視点があるのではないか、ということです。特に最近は、いろいろなプレゼンやセミナーで話を聞いていると“ディスラプション”みたいな破壊的なイメージの単語が必ず出てきますし。

 私が担当するサーバ分野は、関心分野が変わってきているなと印象を受けますね。今の延長線上の話をしても「速くなる、消費電力が減る」だけでは、あまり話を聞いてもらえない。5年後10年後を想定している「The Machine」のアーキテクチャごと変えよう、という話は食いつきがいいです。

 一方、直近の話をすると、今は用途特化型のサーバやハイパーコンバージドモデルが売れるんですよ。サーバと言うと、「全部クラウドになるんじゃないか」という人もいますが、そんなことはない。そう考えるとこれからのカギは、ある程度クラウドに寄っていく汎用的なサーバと、用途特化型サーバに二極化していく気がします。

 そういえば、SIもこのままだとどうなるのってみんな思っているんじゃないですか?

photo 左から、クラウドインテグレーションエバンジェリストの土田隆文氏、次世代企業ネットワークエバンジェリストの池田浩志氏、ハイブリッドインフラエバンジェリストの及川信一郎氏

土田(クラウドインテグレーションエバンジェリスト): そうですね。5年、10年先の未来の話になると、世の中の流れは及川さんの話に近くて、SI、特にインフラSIの人たちは、絶滅していらなくなるという風潮が強いように思います。でも私自身としては、10年後の日本では、今のインフラSIの人たちがこの世界を席巻しているんじゃないかなと思っていますよ。

及川: 土田さんの未来は明るいんですね。

土田: 直近5年後を考えれば、サーバがオンプレミスからなくなっていくと思いますね。それは、パブリッククラウドが成熟していくとともに、オンプレミスでは自動化が進むためです。とはいえ、これまでの5年や10年の中では、新しい技術を取り入れて、インフラSIの仕事が大きく減ったかと言えばそうではない。むしろ、障害が起きる箇所が増えたりして、仕事が増えるケースもありました。ただ、今後5年や10年のスパンでもインフラSIが求められるでしょう。

 日本の場合、10年後くらいではオールパブリッククラウド化やオール自動化は、そこまで進まないのかなと思っています。パブリッククラウドや自動化の仕組みを知っている人が“効果が出るように使う”必要があって、それができるのは開発の人でもなければ、コンサルの人でもない。今のインフラSIの人たちじゃないかなと思うわけです。

 ただ、今のままの仕事をしているだけではダメですね。われわれSIには、大きく2つのエッセンスが必要になると思っています。1つは全体が見えていて、どこに何を活用すべきかを判断できるフルスタックなアーキテクト、もう1つは用途特化型のプロフェッショナルサービスです。その真ん中はないし、それこそサーバと同じで、クラウドや自動化の雲の中に吸い込まれてなくなってしまうでしょう。

photo 2020年にIT部門はどうなっているのか? HPEも予想している

ネットワークと物理をつなぐ“スーパー総務”が誕生?

photo HPE 次世代企業ネットワークエバンジェリストの池田浩志氏。日本のメーカーと、US HPEのR&D同士の連携を進め、次世代のネットワーク市場・製品・ソリューションを作り上げるべく日々奮闘中

池田(次世代企業ネットワークエバンジェリスト): ネットワークの場合、ディスラプションのような新たな動きよりも、“守り”の側面が色濃いです。もともと、電話やコピー機から始まった世界であり、今後も単純に回線が太くなっていくイメージですね。

 ただ、IoTでよく触れられる世界ですが、端末側は劇的に変化するでしょう。まずは端末の活用が変わり、働き方が変わります。さらに端末がどんどん増えると、データも増え、分析しようというニーズが高まり、それに適したコンピューティングを考える必要が出てきます。物理環境からネットで情報を吸い上げ、分析結果を物理にフィードバックする世界になるので、今後はネットワーク側の人たちも、もっと物理的な視点を持たなければいけなくなるでしょうね。

 スマートファクトリーを例に挙げると、ネットワークをつなげるためには、どこに人がいてモノがあるのかという情報が必要です。ネットワークでデータを集めて分析し、その結果をネットワークで建物にフィードバックする――というサイクルを管理するのは誰でしょうか。今までは総務や、総務から派生したネットワークインフラチームとサーバチームが面倒を見ていましたが、今までと違うスキルで全体をコントロールし、物理面の面倒を見る人が重要になるはずです。

及川: スーパー総務とか、スーパービルメンテナンスみたいな感じなんですかね。

池田: そうですね。建物からITまでをインテグレートするプレイヤーが出てくるかもしれません。ゼネコンや警備会社とか。今、金融のアウトソーシングという形で、金融とITの運用が混ざった会社を作って運用するケースがありますが、SI会社とゼネコンで子会社を作って、ビルやマンション、工場全体がうまく動くよう管理する世界に変わるんじゃないかと思います。

技術革新が進んだサーバの世界とは?

及川: こうやって話してみると、未来というのはドラえもんに出てくる“キレイな21世紀”というより、ブレードランナーのような、古い街もあれば空を飛ぶ車もあるような、“混在する”イメージじゃないですか。ハイブリッドカーが走っていて、ディーゼルのダンプが走っていて、テスラが通っていくような。

 インフラの未来もハイブリッドの話とか用途に特化するとか、物理に近いところとか……現実的なラインに近いところで議論されることが多いですね。だから、最近はモヤっとした夢を語るプレゼンは受け入れられなくなってきていて、皆実践的な話を求めているように思います。

土田: クラウドにシフトして5年間やってきた中で、これまでの5年と、これから5年10年って変化のスピードが恐ろしく変わるんじゃないかなと思ってます。

及川: まだ早くなる!?

photo HPE クラウドインテグレーションエバンジェリストの土田隆文氏。オンプレミスのIaaSからパブリッククラウド、PaaSまで「今」のクラウドの技術を武器に、自社ビジネスを成長させたい企業に対し、コンサルから実装までインフラ面の技術支援をしている

土田: ビジネスのスピードを上げなければならないという話もありますが、技術革新のスピードはもっと速くなり、新しい選択肢がものすごく増えていくはずです。私は日本のお客さまと一緒に次世代インフラの検討をすることが多いのですが、もし検討に1年もかかってしまったら、それはもう“次世代”ではなくなってしまいます。

 最近は半年もすれば、技術は成熟してアップデートされますし、1年もたてばそのエリアに新たな技術が“我が物顔”で出てきているほどです。この5年に比べて進化のスピードは劇的に上がっている。サーバの世界は、技術革新が進むとどうなるんですか?

及川: 生活に入り込むサーバの世界では、単純にどんどん小さくできるのだと思います。そして見えなくなる。The Machineが目指しているのもそれですよね。小さいサイズでひっそりとあらゆる場所にいるようなイメージです。不揮発性メモリだから、電源が入っているかどうかはあまり気にしないし、発熱も気にならないから、すごく小さいところに入れられるんですよ。「入ってたっけ?」みたいな感じになる。

 もっと技術革新が進めば、サーバは究極の汎用性を追求して何にでも使えるものをたくさん買っていただくケースと、それとは別に用途特化のスペシャルエディションみたいなものを作る2つの方向に向かうと思うんです。サーバって同じものを大量生産で安くするところがあったけれど、技術も成熟したので、そのロットを減らしても何とかなる未来があるような気がしてます。

photo 自動車や道路にThe Machineを埋め込んだ都市交通管制構想の例(クリックで拡大)

今、この瞬間に変わらなければ生き残れない

及川: 技術革新が進むとコンピュータが使われる場面はどんどん増えますよね。にもかかわらず、悲観的な未来を予想する人がいるのは「今まで通りやっていたのではダメそう」という考えなのかと思うんですよ。

土田: そう思います。私自身はクラウドに関する新しいことをいち早くやるというチームにいますが、「今のままでいいのか」という懸念や不安を抱えながら、日々新しいことにチャレンジし続けています。お客さまも一緒だと思うんですけど。

 お客さまと話していても、いわゆるガートナーの「モード1」(従来の拡張性と効率、安全性、精度を重視する)と「モード2」(逐次的ではないアジリティとスピードを重視する)では、日々収益を上げているのはモード1の技術なんです。だからモード1の方って投資しやすんですよね。結果がまた今期出ると分かっているし。一方、モード2には投資しづらい。今収益をそんなに上げていないから。だけどそれってHPEも同じで、SIで稼いでいるところはどうしても仮想化などのレガシーな技術になる。モード2に投資しましょうという交渉はなかなか難しい。

 多くの人が、どれだけ危機感を持って「今、この瞬間に変わらなければ生き残れない」と思って行動できるかですよ。そこに戦略的な投資ができるかどうか。それは企業だけではなくて、HPEも直面している大きな問題です。

photo 情報システムには、安定を求める静的な部分(左)と動的な部分とのバランスが重要になる

未来のために、明日踏み出すべき一歩とは?

photo HPE ハイブリッドインフラエバンジェリストの及川信一郎氏。所属部署はハイパーコンバージドやHPE Synergyなど、x86ペースのインフラストラクチャを幅広くサポートしている。ハイブリッドインフラタスクフォースもリードしながら、「ハイブリッド」の意味の広さと格闘する日々

及川: 未来は明るいはず、でもこのままの仕事をしていてはダメだ――となると、HPE自身やユーザー企業の方々は将来に備えて、どう動くのがいいのでしょうか。

池田: ネットワークの話をすれば、今から街や工場などあらゆるモノがつながる「スマート化」に対してしっかりと準備を整える必要があると思います。IoTレディというか。そういう環境を意識したネットワークをしっかりと作ることが重要でしょうね。

及川: IoTレディに向けて、今何をしたらいいんですかね?

池田: お客さまがスマートシティやスマートファクトリーに着手するのって、もう少ししてからですね。3〜5年後で本格化してきます。完全に連携しなくても、その前にセンサーやカメラが普通に増えてくるので、ネットワークの増設や更改もずっとある。そのときに、スマート化を意識したネットワーク環境をセットアップするのが重要です。

 ネットワークは今まで土管でしたが、今後は物理やコンピューティングと連携して返す“インテリジェント”な存在になります。よく昔に言っていたスマートビルディングとかスマートファクトリーとか、ああいったものをやろうとすると、現状、「目立つ機能だけを組み合わせれば動く」と思われているところがまだあります。実際は災害時の対策や増大するセキュリティリスクへの対応が必要で、総合ベンダーのHPEだからこそ、安全かつインテリジェントにスマート化に対応できるのです。

土田: SIの立場から言うと、ユーザー企業の皆さんにやってもらいたいのは「使ってみる」ことですね。今はさまざまな形で新しい技術を試せるインフラが簡単に手に入ります。例えばパブリッククラウドも、検討の前に試したいときにはサーバがなくても、無償の範囲で使えたりします。

 あと、われわれも同じなのですが、“今”の新しい技術に対してアンテナを張っておくといいと思います。これから技術革新のスピードが上がる中で、技術はすぐに陳腐化してしまう。諦めずに分野を超えてトレンドを追い続けた人や企業が生き残るのではないかと思っています。

 私たちHPEの強みは、グローバルの実績をベースにできることと、クラウドをコアコンピタンスとして持ち続けていることです。お客さまがやりたいことを実現する、ということをゴールに、アーキテクトやクラウドプロフェッショナルのサービスを提供できます。今回お話しした変革を望むお客さまと一緒に変わっていければと思っています。

及川: 先日コピーライティングの講座で、あなたの売っているサーバのウリはなんですかと聞かれてとっさに「世界で一番売れています」と答えたら、先生に「皆さんが使われているものは、皆さん使いたいですよね」と言ってもらえました。

 HPEは、やはり安定して皆さんにサーバを供給しているというベースがまずあると思っています。システム全体を最適な状態に保ち、安定した稼働や移行を実現できる。われわれの価値の根幹はそこだと思っています。そこから次のプラットフォームをThe Machineみたいに変えるのか、用途特化型を買ってもらうのか。あるいはスタンダードなものを並べてもらうのか。

 いずれにしてもシングルベンダーが供給できる価値は、これからも続くのかなと思います。お客さまが望む大抵のフォームファクターが用意できる。これだけ広い製品を持っているのは多分HPEだけではないでしょうか。最近は、ふんわりとスタンダードなものを買うのではなくて、用途が明確な状態で選んでいただくことが増えてきた。だからこそ、何がしたいかということをぜひ、私たちに相談していただければと思っているんです。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年11月30日

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