Phone Appliの新オフィスが“キャンプ場”になったわけSTOP! 名ばかり働き方改革(2/2 ページ)

» 2018年02月16日 07時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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 石原氏が、まず取り組んだのは、企業としてのビジョンを明確にし、社員が同じ方向を目指して進めるよう意思を統一すること。ビジョンを策定するために採用したのは、セールスフォース・ドットコムが採用している「V2MOM」というフレームワークだ。

 V2MOMは、「何を達成したいのか(ビジョン)」「ビジョンの追求を支える原則や信念は何か(バリュー)」「業務の遂行に必要な行動や手順は何か(メソッド)」「ビジョンを達成するために克服しなければならない課題や問題は何か(オブスタクル)」「成果を表し、測定する基準は何か(メジャー)」の5つの要素で構成され、それぞれを明確にすることでビジョンの達成を確実なものにする。

 「まずは社長と役員で会社の羅針盤としてのV2MOMを作り、それを部門長に伝えて部門ごとのV2MOMを作ってもらいます。それをどんどん下ろして社員一人ひとりがV2MOMを作るところまでやりました。さらに企業理念や文化を深く理解してもらうためのトレーニングを繰り返し行い、わだかまりやブレがなくなるようにしています」(同)

Photo コミュニケーションの壁を取り払うためにPhone Appliが始めた取り組み

 もう1つ、石原氏が重視して取り組んでいるコミュニケーション施策が「Weekly 1on1」だ。上司が部下と1週間に1回、30分間のミーティングを行い、成長していくために何が必要かを話し合うようにしている。この時間は目標とのブレを修正したり、深い信頼関係を築いたりするのに役立っているという。

 「私たちの会社には、1人の社員をありとあらゆる角度から評価する360度フィードバックという制度があります。1人の社員に対して、上司や部下、同僚、同じプロジェクトに携わった人など10人にアンケートを行って評価するのですが、この10人も上司が選ぶので信頼関係が重要になります」(同)

 新しい取り組みを始めて社員同士のコミュニケーションが増えると、社内に変化の兆しが見えてきたという。「いろいろな新しいサービスのアイデアが出てくるようになりましたし、離職率も減りました。昔は離職率が10%ぐらいだったのですが、今は数パーセントにまで下がっています」(同)

Photo 双方向でコミュニケーションできるホワイトボード「Spark Board」もいち早く設置した

会話が弾む新オフィスの仕掛け

 この2月、Phone Appliは新オフィスに移転した。コンセプトは「Collaboration and Meeting Place(CaMP)」。社員が互いに話し、アイデアをぶつけ合って、新たなサービスを生み出せるようにするための仕掛けがあちこちにある。

 アウトドア用品の開発で知られるスノーピークの子会社、スノーピークビジネスソリューションズと共につくったオフィスには、緑があふれ、自然を感じながら仕事ができるのが特長だ。

 「自然の中にいると、人は役職や年齢を気にせず、素直な気持ちで本音を言い合えるようになります。CaMPはグリーンの視認率を25%にしたり、100%天然成分の製油を入れたアロマディフューザーをあちこちに設置したり、山で収録してきた鳥のさえずりを流したりして自然を感じられるようにしています」(スノーピークビジネスソリューションズの藤本洋介氏)

Photo まるで秘密基地のようなテント。「入っていくとき思わず笑顔になり、話が弾みます」(石原氏)

 社員が最もパフォーマンスを出せる場所で自由に働けるようにしているのもポイントだ。オフィスは一部の社員を除いてフリーアドレス制となっており、一般的なオフィスにあるような机や椅子のほかにも、集中したい人のためのスペースやファミレス席、ちょっとしたディスカッションができる秘密基地のような大型テントなどが用意されている。もちろん自宅で働くのも自由で、社内には至るところにビデオ会議の環境が用意されている。

Photo キャンプ用のテーブルや椅子が置かれたパークゾーン。イベントの際にはすぐ折りたたんで撤去できるなど、フレキシブルに利用可能だ
Photo プロジェクターの投影部は社員用の荷物置き場になっている

 「私たちが目指すのは、社員が最もパフォーマンスを出せる場所で働ける選択肢を提供すること。その上で互いを尊重し、感謝しあうことを大事にしていきたいんです」(石原氏)

 「最高のオフィス空間とIT環境」(石原氏)、社員が一致団結して目指す方向に進んでいくための風土とルールを手に入れたPhone Appli。この成果は同社の新たなソリューションやサービスとして出てくるはずだ。

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