21歳のころの自分に伝えたい、「嫉妬と恐怖」をコントロールする方法(2/2 ページ)

» 2018年04月13日 07時00分 公開
[北野唯我ITmedia]
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メディアで見聞きしたものと、実態は大きく違う

 正直なところ、今でも人間に関しては、分からないことが多い。

 特に「嫉妬」という気持ちは厄介だ。そもそも、嫉妬深いのは罪深いことなのだろうか。嫉妬心は「他人の足を引っ張る原動力」にもなるが、一方で「熱望するもの」があるということでもある。あるいは、上を目指している、と考えてもいい。

 現実的な問題として、若い頃は、嫉妬を完全にゼロにするのは難しいかもしれない。長い教育過程でできてしまった「他者と比較する癖」を治すには、人生をもう一度始めるレベルのやり直しが必要だと思う。だが、1つだけアドバイスできるとしたらこれだ。

 「メディア上で表現されているパワーと、実態のパワーは大きく違う」

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 自分自身がメディアを運営するようになり、この考えは確信に変わった。メディアに出る量や書かれていることと、実力は必ずしも比例しない。世の中には「メディアには出ているものの、本当は、すごくない人」も多く、その逆のケースも多く存在する。だから、メディアのパワーだけを信じてはいけない。それは「実態の伴わない嫉妬」であり、単なる幻想だ。

 「メディアパワーだけを、信じるべきではない」――これが言いたいことだ。

アウトプットとは、「社会全体の富を増やす行為」

 そして、振り返ってみて、あの頃、気付いていなかったこともある。それはインプットとアウトプットの関係だ。

 具体的には「インプットするだけでは、絶対に状況は逆転しない」ということだ。長きに渡って業界でトップを走り続ける人で、インプットだけしている人を今まで見たことがない。

 アウトプットとは何も、「情報を発信すること」だけではない。ここでいうアウトプットは、全体の富を増やす、つまりは自分だけではなく社会の富をも増やす行為だ。仮にあなたが何かを発信しつづけても、それが他人を含めた社会全体の富を増やさない限り、実質的には私腹を肥やすだけの“インプット”に他ならない。この世界の謎を見つけ、解き明かし、世の中を改善すること――。それがアウトプットと呼ばれる行為なのだ。

 「全体の富を増やす行為」、これがあなたに必要なプロセスだ。

 こうして嫉妬と恐怖について考えていくと、なぜ人は、アスリートの言葉を求めるのかが分かってくる。

 嫉妬が発生するには間違いなく条件がある。それは「遠すぎない、距離感」だ。例えば、普通の人がプロスケーターの浅田真央を見ても嫉妬しないのは、あまりに遠すぎるからだ。性別も年代もフィールドも才能も違う。だから嫉妬したくても、できない。

 一方で、同じ会社の同期や、兄弟はあまりに「近すぎる」。だから自分と比較しやすくなる。そして自分に「確かなもの」がないとき、その気持ちは、悪の方向に進む。これが嫉妬だ。

 最近、アスリートの存在感が増してきている理由も、この「距離感」ではないかと思う。スポーツは身近でありつつも、アスリートという「職業」は、自分とは全く世界が違う、ちょうどよい距離感だ。彼らの言葉であれば、素直に聞くことができる。そして目標に向かって進む彼らの姿は、多くの人にエネルギーを与える。


 まとめると、21歳の自分に伝えたかったことは、これだ。

 「嫉妬と恐怖」が組み合わさった環境を、決して作ってはいけない。

 そのために必要なのは次の3つだ。

  1. 孤独と向き合う長考の歴史は、あなたの中の「確かなもの」になる
  2. 社会全体の富を増やすという意味で「アウトプット」を行え
  3. 近すぎないライバルを持て

北野唯我氏プロフィール

ワンキャリアの執行役員 兼 チーフアナリスト。事業会社にて中期経営計画の立案・M&A・組織改編業務を経験し、米国・台湾に留学。帰国後、外資系戦略コンサルでの事業戦略立案業務などを経て、現在、メディア事業の統括責任者。個人のブログ「週報」に公開したブログ記事、「『天才を殺す凡人』から考える 大企業でイノベーションが起きないメカニズム」が大ヒットし、書籍出版のオファーが相次いでいる。


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