日本のデジタルトランスフォーメーションは「ディスラプション」に? 今こそ欧州の中堅国に学べ!迷走する日本のデジタル改革(1/2 ページ)

国際経営開発研究所(IMD)が発表する「IMD国際競争力ランキング」では、ここ数年、日本は25位前後を推移する。上位を占めるのは北欧の中堅国だ。日本のIT投資額は年間10兆円を超し、その金額は北欧各国が束になってもかなわない額だ。しかし、なぜ世界から思うような評価が得られないのか。

» 2019年06月19日 08時00分 公開
[西野弘CeFIL]

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著者紹介:西野 弘

特定非営利活動法人CeFIL 理事/デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)共同設立者
株式会社HIイニシアティブ 代表取締役

早稲田大学卒業後、全日空商事株式会社などを経てマネジメントコンサルタント会社のプロシードを設立。25年間代表取締役を務め、2016年にはデジタル技術を活用して社会課題の解決に寄与するデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立。その他PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)日本支部やITサービスマネジメントフォーラムジャパンを設立し、「PMBOK」や「ITIL」を日本に紹介導入した。

 毎日のようにデジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータといったバズワードをビジネスメディアで目にする。しかし、それらの言葉は多くの課題をはらんでいるように感じられる。

 デジタル改革において世界から出遅れた日本企業や経営者が、急にこうしたキーワードに興味を持ち始めたのはうそのようだ。彼らはそれらの言葉の意味を本当に理解しているだろうか。理解の深度にも不安がある。AIにしても、ただデータを可視化したものをAIだと考えている経営者がいかに多いことか。対して、米国の経営者の多くは「今のAIはまだ機械学習の域を出ていない」と考える。日本よりも現状をよく理解しているのだ。

日本は欧州中堅国のデジタルトランスフォーメーションの取り組みに注目すべきだ

 「日本の大手企業は、シリコンバレーだけでなく欧州中堅国が取り組むDXやイノベーションモデルにも目を向け理解すべきだ」と私は考える。

 2019年5月中旬、私は北欧のデンマークとスウェーデンを訪問した。目的はデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)のメンバー企業の幹部視察と、ストックホルムの王宮で開催された認知症の国際フォーラムに招待されたためだ。スイスやオランダ、デンマーク、スウェーデンなど人口1000万人以下の国にも歴史の長い大手企業は数多くある。そして、英国やフランス、ドイツのイノベーションやDXに対して興味や理解を示す人も多い。

 しかし、日本は中堅国が取り組むDXについて理解どころか目を向けてすらいないように思える。実は、スイスにも私が理事を務めるDBICのようにオープンイノベーションを推進する組織「digitalswitzerland」(デジタルスイスランド)がある。銀行や保険、重電メーカー、製薬、総合食品業界などからスイスの大手企業がこのデジタルスイスランドに参加し、メンバー企業は150組織にも及ぶ。一般企業のほか、大学や国際赤十字なども参加する。彼らは欧州でのDXハブを目指して活動を進めているのだ。

 欧州訪問時に話題となったのが、スイスのローザンヌに構える世界的なビジネススクール「国際経営開発研究所(IMD)」である。DBICとも設立以来連携している。IMDは、毎年「IMD World Competitiveness Rankings(IMD世界競争力ランキング)」を発表している。訪問時には、2019年度の順位がどうなるかが話題となっていた。

IMD World Competitiveness Yearbook IMD World Competitiveness Yearbook(出典:IMD business school)

 63カ国を調査対象にした昨年の「IMD World Competitiveness Rankings 2018(IMD国際競争力ランキング2018)」では、スイスが1位であった。日本はというと、この数年間25位前後に位置し、決して上位にはランクしていない。

 そして2019年5月29日、ついに2019年度のランキングが発表された。その結果、1位はシンガポール、2位は香港、3位は米国、その後スイス、アラブ首長国連邦(UAE)、オランダ、アイルランド、デンマーク、スウェーデンと続き、日本はなんと30位に転落した。ちなみに、ダボス会議として知られる「世界経済フォーラム」で発表された「Global Competitiveness Report 2018」(2018年世界競争力レポート)では、日本は5位であった。

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