「サブスクリプション」モデルでDXが加速する――国内市場規模は5年で1.5倍に拡大特集:サブスクリプション×DX

なぜサブスクリプションビジネスはここまで盛り上がったのか、レンタルやリースとの違い、サブスクリプションサービスを支えるプラットフォームビジネスなどから、成功するサブスクリプションの姿や、今後のビジネス変革のヒントを探る。

» 2019年10月01日 15時00分 公開
[ITmedia]

 新しいビジネスモデルとして「サブスクリプション」モデルに期待する企業は少なくない。従来のパッケージ売り切りモデルと異なり、商品やサービスの利用権を一定期間、継続的に提供する課金モデルだ。

 特にSaaSなどに代表されるクラウドサービスと相性が良い。2013年にAdobe Systemsが発表したパッケージ販売からサブスクリプションへの移行は、大幅な売り上げ増を達成した成功例の1つと言える。

 その後、「Microsoft Office 365」などに代表されるように、多くのパッケージソフトがサブスクリプションモデルで登場することになった。Gartnerは「2020年までに新規参入ベンダー全社と既存ベンダーの80%が、ソフトウェア販売にサブスクリプションベースのビジネスモデルを採用するようになるだろう」と予測する。

サブスクリプションサービスの国内市場規模は5600億円を超える

 今日のサブスクリプションビジネスは、ソフトウェアから物理的な「モノ」の提供のサービス化へと領域を広げている。例えば自動車やスーツ、家電などのサブスクリプションビジネスが生まれている。

 ユーザーの価値観が所有から利用に変化したことの影響も大きい。Zuora Japanの調査(世界12カ国の18〜59歳の男女1万3459人を対象に、2018年10月26日〜11月4日に実施したインターネットアンケート)によれば、日本人の75%は「持っているモノを減らしたい」と思っている。これは他国と比べて最も高い数字だ。

 矢野経済研究所の調査によれば、2018年度における国内のサブスクリプションサービス市場規模は支払額ベースで5627億3600万円だった。同研究所は、2023年度には8623億5000万円まで成長すると予測する。なお、この市場はファッション系定期宅配、ファッションサービス、食品系定期宅配、飲食サービス、生活関連、住居、教育、娯楽の8市場の合算値だ。B2Bで利用されるようなソフトウェア市場が含まれていないので、実際の市場規模はさらに大きいともいえるだろう。

サブスクリプションサービス国内市場規模予測 サブスクリプションサービス国内市場規模予測(出典:矢野経済研究所)

サブスクリプションモデルのメリットは?

 英語のサブスクリプション(subscription)は、「予約」や「(雑誌の)定期購読」という意味を持つ。また、音楽配信サービスや動画配信サービスなどの一般に普及したB2Cのサブスクリプションサービスの多くが月額課金制をとることから定額制サービスを指すイメージが強い。

 だが、サブスクリプションモデルの課金形態は定額制に限らず、従量制や複合形(スマートフォンの二段階定額制などがイメージしやすいだろう)など幅広い。定額制であっても月額と年額とでは合計金額が変わったり、無料期間が付属したりする。

 提供される商品やサービスは、一般的に対象物を購入する場合よりも安価に利用を開始できる価格に設定されている。また、トライアルコース、通常コース、プレミアムコースのように利用頻度や機能に応じて複数のプランを用意することが多い。ユーザーの利用ハードルを下げることに優位性があるビジネスモデルと言える。

 所有権ではなく利用権を得るサービスは、これまでにもレンタルやリースなどの方法があった。レンタルとの違いは、利用期間中にサービスメニューが追加されたり、機能が拡充されたりすることだ。ソフトウェアの場合は、常に最新版に更新され続けることが多く、パッケージでは別売りだったサポートなどがサービスメニューの中に組み込まれていることもある。

 リースとの大きな違いは契約期間の扱いだ。原則としてリースアップ(期間満了)まで解約できないリースと異なり、サブスクリプションモデルのサービスの多くは必要がなくなればプランの変更や停止ができる。

 ただし、サブスクリプションをうたいながらも実態は3カ月程度の短期リースだったり、パッケージの定価を契約月数で割った月賦販売だったりするものもある。サブスクリプションモデルは、モノの価値に加えて顧客満足度を高める新たな価値を提供し続けていくことが重要だ。

サブスクリプションモデルでユーザーが得られるメリット

  • 初期費用を安く抑えられ、料金を節約できる
  • 必要な時に、必要な分だけ使える(不要になったら停止できる)
  • 利用方法に応じて機能を追加したり削除したりできる(プランを変更できる)
  • 継続的なアップデートにより機能やメニューが追加される(商品やサービスが陳腐化しにくい

サブスクリプションモデルで企業側が得られるメリット

  • 継続的な収益が見込める(季節要因などによる変動が少ない)
  • 無料トライアルや安価なスタータープランの設定によって新規ユーザーを獲得しやすい
  • ユーザーの反応を継続的に取得し、分析することで新たなサービスを開発できる

サブスクリプションサービスを始めるために必要なもの

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