NECとシスコ、アラクサラが協業 「日本の主要インフラ」に提供したいネットワークセキュリティの中身はNISTの行動計画を意識

金融やエネルギー、情報通信といった「日本の重要な社会インフラ」に、強固なセキュリティを提供したい――。そんな目標を掲げ、ネットワーク事業者の3社が協業を発表した。社会全体でデータ量が増加する中、3社はどのようなセキュリティを提供しようというのか。

» 2021年02月03日 07時00分 公開
[阿久津良和ITmedia]

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 シスコシステムズ(以下、シスコ)とNEC、アラクサラネットワークス(以下、アラクサラ)は2021年1月29日、戦略的協業を通じて3社の強みを生かしたネットワークを通信事業者や鉄道、道路といった重要な社会基盤(インフラ)を支える14分野の市場に提供することを明らかにした。

 14分野とは、内閣サイバーセキュリティセンター(NIST)が「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第4次行動計画」で掲げる情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス(地方公共団体を含む)、医療、水道、物流、化学、クレジットおよび石油を指す。

 NECの河村厚男氏(執行役員常務)は今回の協業の目的について「透明性、信頼性のある製品を確実な技術でセキュリティを確保し、世の中へ実装、運用する」と話した。

 「普段は直接関与していないものの、(重要インフラが)国民の生活を支えていることは言うまでもなく、関係者が連携してセキュリティ対策を講じなければならない。すなわち重要インフラ事業者とサプライヤーが連携したセキュリティ対策が必要だ」(河村氏)

 事業計画についてアラクサラの担当者は「2021年度から3年間で約180億円の売り上げを目指す。1年当たり100億円程度のビジネス規模に育てる」と述べた。

NECの河村厚男氏

 今回の協業において、3社の大まかな役割を紹介しよう。シスコは同社のルーター「Cisco NCS」シリーズから「Cisco NCS 5500」「Cisco NCS 560」「Cisco NCS 540」をアラクサラのソリューションとしてブランド化し、日本の重要インフラ事業者に提供する枠組みを形成する。

 アラクサラは、2004年にNECと日立製作所が設立したネットワークベンダーだ。同社はハードウェアが正規の製品であることを検証するソリューション「Cisco Trustworthy」とNECのブロックチェーン技術を活用し、ハードウェアを生産する工場の情報と顧客向けの情報を突き合わせて真正性を確認する。

 NECは主に重要インフラ事業者へのネットワークソリューションの納品を担当する。また、納品後の運用向けには、シスコのネットワーク管理製品「Cisco Prime NCS(Network Control System)」とテレメトリーAPIを用いたアラクサラのソリューションを活用し、ネットワークトラフィックの分析環境を顧客や運用業者に提供する。

競争関係を超えた 3社による協業のきっかけ

 今回の協業計画は約1年前から始まり、国産ベンダーとして重要インフラ事業者に製品を提供した知識や経験を持つアラクサラに、シスコが協業の話を持ち掛けたことがきっかけだという。

 アラクサラの担当者は「シスコはわれわれの競合に当たるが、自社(アラクサラ)が届かない製品領域を持っている。(協業を通じて)ビジネスチャンスにつながるのでは、との議論から、今回の3社協業に至った」と解説する。

3社による協業計画の概要

 アラクサラは、現在国内の主要インフラ市場が抱える課題として、既存のセキュリティオペレーションセンター(SOC)やネットワークオペレーションセンター(NOC)が新たなサイバー攻撃を検出しにくくなっている点を挙げる。

 同社の中川勝博氏(同社代表取締役社長 兼 CEO)は「通信トラフィックの変化や予測は、SOCだけでは不可能だ。ルーターやスイッチ、ネットワーク内の情報から、いち早くサイバー攻撃を検知することが求められる」とと話す。

ネットワーク管理ソフトやブロックチェーンも活用 3社の強みを生かした内容は

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