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» 2021年04月16日 10時00分 公開

情シスはDXをあきらめていないIT革命 2.0〜DX動向調査からのインサイトを探る

コロナ禍対応やサポート対応などで2020年の情シス人材は例年以上に酷使されたのではないでしょうか。

[清水 博,ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が企業のIT施策に大きな影響を与えた2020年。それを支えた情報システム部門(情シス)の方々は、緊急でのテレワーク環境の構築と業務プロセスの適合、リモートサイトでの業務増加に伴うセキュリティ対策の強化など、単純にコア業務/ノンコア業務で切り分けられない業務の増加などに多くの時間を取られ、忙殺された1年だったのではないでしょうか。

 そうした中で情シスの方々は、どのようにモチベーションを維持しているのでしょうか。事業インフラを支える情シスの働きは収益貢献と結びつけにくいことから、評価されにくい職場もあることでしょう。一方で転職市場に目を向けると、ここ数年はインフラを構築できる情シスの価値が高騰しています。目の前の実現するか定かではない自社デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のミッションなど放り投げ、より評価される場所を求め、水面下で転職の準備を進める方がいらっしゃったとしても不思議ではありません。

筆者紹介:清水 博(しみず ひろし)


 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河・ヒューレット・パッカード(現日本ヒューレット・パッカード)入社後、横浜支社でセールスエンジニアからITキャリアをスタートさせ、その後、HPタイランドオフィス立ち上げメンバーとして米国本社出向の形で参画。その後、シンガポールにある米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のマーケティングダイレクター歴任。日本ヒューレット・パッカードに戻り、ビジネスPC事業本部長、マーケティング統括本部長など、約20年間、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わる。全世界の法人から200人選抜される幹部養成コースに参加。

 2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ、世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。

 2020年定年退職後、独立。現在は、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。著書『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の他、経済紙、ニュースサイト、IT系メディアで、デジタルトランスフォーメーション、ひとり情シス関連記事の連載多数。


・Twitter: 清水 博(情報産業)@Shimizu1manITDX

・Facebook:Dx動向調査&ひとり情シス

コロナ禍で「酷使」された情シス人財、仕事のモチベーションを維持できていたか

 デル・テクノロジーズが実施した「第2回 DX動向調査」*1では、コロナ禍の中で「会社のITの状況を常に考えながら、個人のキャリアアップを見据える」情シスはどのようにモチベーションを保っているかについても調査しました。

*1 デル・テクノロジーズ「第2回 デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」(調査期間:2020年12月15〜31日、調査対象:従業員1000人以上の国内企業、調査方法:オンラインアンケート、有効回答数:661件)


 筆者は事前に、情シスは「リモートワークの構築業務のために基本的にオフィス出社が原則」だったり、「リモートワーク用のインフラを強化するために夜中にデータセンターに出向く必要」があったりするという話を伺っていたので、厳しい調査結果が出るものと予想していました。

 実際は、予想と大きく異なり、調査対象の情シスの約半数当たる49.6%が「高いモチベーション」をキープしている(5.5%が「極めて高い」、44.1%が「まあまあ高い」と回答)ことが判明しました。

情シスの半数(49.6%)が高いモチベーションを保持(出典:デル・テクノロジーズ「第2回 DX動向調査」)

 筆者は当初予測と異なるこの結果を見て、「キープ」というよりも、より積極的に、自ら士気を高め、コロナ禍の危機から会社のITインフラを守り抜き打ち勝つ、という高い闘争意識を感じました。そして東日本大震災のときに、発生直後から当時の職場の情シスたちが会社に何日も泊まり込んで対応していたことを思い出しました。

 ただし、多くの回答者が高いモチベーションを持っていた一方で、モチベーションが低い情シスも11%存在しており(7.1%が「低い」、3.9%が「とても低い」と回答)、改善が必要な職場環境が存在するのも事実のようです。

 また企業規模に見ると、従業員数が3000人を超える大企業では68.8%の回答者が「高いモチベーションを保持している」と回答していましたが、この割合は、中堅企業では44.5%、中小企業では33.4%と、企業規模に応じてモチベーションが下がる傾向が見られました。

DXは陳腐なキーワードか、情シスの願いを叶える魔法の言葉か

 筆者の感覚では、情シスの方々はDXというキーワードにはあまり反応しません。あえて無視しているのか、全く眼中にないように見える方も多いようです。DXといっても個々のテクノロジーを見れば既存のITとあまり変わりがないことや、そもそもDXは捉えどころがない概念だといったことを熟知しているからこそ関心を示していないように見えるのかもしれません。

 ITに知見がある方ほどDXという言葉への興味が薄い傾向にありますが、全く別の発想でDXに取り組む方もいます。ある時筆者は、大手企業のIT部門で実務マネジメントを担当している方から次のような言葉を聞きました。DXの可能性を示唆する印象的なものです。

 DXは久々に経営層も関心のある言葉だ。DX(への注目)を最大限生かし、IT全体を再構築するきっかけにしたい

 そこで、第2回のDX動向調査では、「情シスが考えるDXの可能性」についても探りました。

情シスが考える「DXの可能性」(出典:デル・テクノロジーズ「第2回 DX動向調査」)

 自社にとってのDXの可能性を聞いた質問に対して、情シスの約10.1%は「DX、デジタル化したところで業績が上がらない」、2,7%は「DX、デジタル化する領域はない」と回答しました。

 実際のところ、DXは比較的新しい概念で、ここ数年の取り組みが多く、現在はまだその実態や効果が十分に分かっていない段階といえます。それを考えると、この回答は決してシニカルな意見ではなく、本当にDXの効果が見えないことを意味しているのかもしれません。

 その一方、DXの可能性を示す回答は、予想に反して多い結果となりました。「まだまだ業績を向上できる可能性がある」との回答は54.6%、「大きく会社を変革する可能性がある」は36.9%、「事業を継続できる可能性がある」は34.5%でした。ITの最前線に立つ情シスは、日々の業務の中でDXの可能性を体感しているのではないでしょうか。

 この結果を見ると回答した情シスの皆さんは、前述の「DXを最大限生かしてIT全体を再構築したい」と語ったIT部門のマネージャーと同様の考えを持っている方が多くいらっしゃるのかもしれません。今回見た2つの調査結果から、コロナ禍の先行き不透明な時代においても、情シスの方々が静かにモチベーションを高め、DX時代の変革を虎視眈々と狙っている姿が見えてくるように筆者は感じました。

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