デジタルワークプレースを「形」だけで終わらせない秘訣なぜITツールを入れても成果が出ないのか

オフィスとテレワークを柔軟に使い分けるハイブリッドワークの導入を目指す企業が増える中、一連のデジタルツールでコミュニケーション効率を高めるデジタルワークプレースに注目が集まっている。これを実現するための要件とは何か。

» 2022年01月05日 10時00分 公開
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 コロナ禍を経て企業のデジタル化の取り組みは大きく進んだ。この取り組みを発展させて、ビジネスプロセスやビジネスモデルの変革を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)につなげる動きも活発化している。しかし実情として「ITツールを導入したが生産性や業務効率の劇的な向上にはつながっていない」と嘆く声もまだまだ多く存在する。

 2021年9月1日付でIBMのグローバルテクノロジーサービス部門から独立し、インフラストラクチャサービス提供企業としてスタートを切ったKyndryl。その日本法人であるキンドリルジャパン(キンドリル)の東根作 成英氏(テクノロジー本部 クライアント技術戦略 技術戦略 ZTAビジネス開発担当)にデジタルを活用した企業変革のポイントを聞いた。

社外でも「以前と同じことができる」だけでは発展しない

 東根作氏は初めに「大切なのは、変革以前にできなかったことをできるようにすることです。『ITツールを導入する』という手段起点ではなく目的起点で考えることが重要です」と指摘する。

キンドリル 東根作 成英氏

 「テレワークでは『社外でも以前と同質のコミュニケーションが取れる』ではなく、『以前できなかったコミュニケーションができるようになる』ことが重要です。ITツール導入をゴールに置かず『以前の状態からどう良くなったか』と考えることが発展や変革につながります。この視点で考えると、多くの企業でコミュニケーションの質は高まる余地があります」(東根作氏)

 ITツールを導入しても効果が出ない背景には、既存のITインフラやアプリケーション、業務プロセス、組織、文化など広い意味での“既存資産”が関係している。人は「変革しよう」と考えても、既存の在り方を「疑う」のではなく「効率化する」ことに焦点を当ててしまいがちだ。“既存の仕組み”を見直さずにITツールを導入するだけでは局所的な効率化の域を出ず、成果は限定的になる。

「働き方改革」にしてもITツール導入はごく一部。働き方に関連した“既存資産”を、目的起点で包括的に見直す必要がある(出典:キンドリル提供資料)

 そのため、まずは既存資産を見直して「デジタルをどのように活用すると、どのような強みを、どのように伸ばせるのか」「それに向けて既存のヒト・モノ・カネをどのように配分すればいいのか」「それによってステークホルダーにどのような利益を渡せるのか」など目的起点で具体的にイメージすることが重要だ。

従業員エンゲージメントに注目することが、DXへの「有効な第一歩」

 しかし、既存資産を見直そうにもITインフラを含めた既存の仕組みやプロセスが複雑化しているケースも多い。そもそも目的起点で変革に取り組むには「どのような課題があり、それをどのように変えればよいのか」「どこから着手すればよいのか」を明確化する必要がある。そこで東根作氏は、DXの入り口として「従業員エンゲージメントの向上」を推奨する。

 DXを進めるには技術面だけでなく既存の業務プロセスや組織構造を含めた変革が必要だが、「人」が関わる以上、文化やマインドセットの変革とセットで進めなければならず一筋縄ではいかない。逆に「人の変革」をうまく進められれば、それにひも付く技術やプロセス、組織の変革も進みやすくなる。

 「企業にとって最も重要な資産の一つは人材です。従業員エンゲージメントを高めて、個人の能力を成果につなげることが企業としての強さにつながります。そこで、まず注目すべきは『働く人の多様性』です。パフォーマンスを発揮できる環境は人によって異なるため、従業員一人一人が効率良く働ける環境をどう整えるかを考えましょう」(東根作氏)

 テレワーク環境を実現するには「オフィス向け」「在宅勤務向け」の2つを整備するだけでは足りない。在宅勤務でも「一人で集中したい」場合があれば、「複数人でアイデアを発散させたい」こともある。家族のスケジュールによって「月曜は自宅」「水曜はカフェ」と使い分けるケースも出てくる。つまり「働く環境」の構成要素は複数あり、「オフィスか自宅か、カフェやサテライトオフィスか」といった場所だけでなく、コミュニケーションの在り方やアプリケーションの種類、デバイスの種類など人によって最適な構成は異なる。

 「社内という統一的な環境でできていたことを、構成要素が多数ある社外にそのまま適用することは困難です。ITツールを入れても従業員ごとに働く環境は異なるため、生産性が落ちたり従業員満足度が落ちたりするケースが増えています。ITリテラシーのばらつきも考慮すべきです。8割の人が満足できれば、残り2割の不満は切り捨てる考え方もありますが、この2割が突出したITリテラシーを備えており、より良い環境整備をリードできる場合もあります。今後はデジタルネイティブ世代や、就職するまでスマホしか利用したことがなくPCを使ったことのない若手も増えてくるはずですから、多様性を慎重に捉えて全従業員が働きやすい環境を考えることが、従業員エンゲージメントと自社の強みを効率良く向上させ、ひいてはDXにつながります」(東根作氏)

「ペルソナ」起点でユーザーニーズとITインフラの要件を両立

 東根作氏は、従業員の多様性を考慮した環境こそが「デジタルワークプレース」本来の姿だと話す。単なる「ITツールを導入した環境」ではなく、「従業員エンゲージメントの向上という目標を起点とし、誰もがパフォーマンスを発揮できる環境」であることがポイントだ。そのためにはデジタルだけでなく物理的なオフィスも重要になるため、キンドリルでは一級建築士のチームを擁する。

 「誰もがパフォーマンスを発揮するためには、『物理空間とデジタル空間の良い点を融合させること』『あらゆるデバイスであらゆるアプリケーションを使えるようにすること』『従業員がセキュリティを気にしなくてもいい仕組みをつくること』などが求められます。キンドリルは既存環境のアセスメントをはじめ、デジタルワークプレースの整備と継続的改善に向けたロードマップの策定から整備に必要な技術の提供、システム基盤の運用サービスなど、コンサルティングからシステム運用まで包括的に支援します」(東根作氏)

 コンサルティングでは、ITインフラやオフィスのファシリティーの視点でデジタルワークプレースの構築を具体的に提案し、課題と「最終的にどのように成長したいか」という目的をヒアリングする。それを基に計画を立案して実施するロードマップアプローチで「顧客に寄り添ったコンサルティング」を実現している。

 具体的なサービスとしては「ロードマップ策定コンサルティング」や「ペルソナコンサルティング」がある。ペルソナコンサルティングは従業員に着目し、そのペルソナを明らかにした上で個人に最適な環境を構築する。

ペルソナコンサルティングにより「全従業員がパフォーマンスを発揮できる環境」を具体的に導き出す(出典:キンドリル提供資料)

 ペルソナコンサルティングでは5つのステップでデジタルワークプレースの要件と効果を整理する。

  1. 社長から従業員までをユーザーとして類似のワークスタイルでグルーピングしペルソナを作成
  2. 作成したペルソナごとにユーザーの視点に立ち、提供中のITサービスの現状と課題、要望を整理
  3. 働き方の将来像(To Be像)をユーザー視点で描きながら、実現に必要なITサービスを検討
  4. ITサービスの提供に向けて、今後の施策の抽出とロードマップを作成
  5. 施策の実現でもたらされる働き方改革の効果を整理
ITサービスのペルソナ例(出典:キンドリル提供資料)

「人材」に対する視点を変えると、発展の道が見える

 キンドリルのコンサルティングを活用したある企業は、同社のロードマップアプローチを活用してゼロトラストアーキテクチャの実装を進めている。

 「テレワークの導入に際してセキュリティを強く意識することは必要ですが、それによってユーザーの使い勝手をあまりにも強く制約すれば、生産性の低下につながりかねません。また、ゼロトラストアーキテクチャを『NIST SP800-207』に沿って厳格に実装すれば、多くの企業はその実装にかかる時間とコストが大きな負担になるでしょう。デジタルワークプレースの構築やゼロトラストアーキテクチャの実装は目的ではなく手段です。目的はユーザーが高い生産性を発揮して働ける環境の実現と、それに必要なビジネスの安全性を確保することです」(東根作氏)

 ゼロトラストアーキテクチャの実装方法は一つではない。「エンドポイントからアプリケーションまでのエンド・ツー・エンドの暗号化」が望ましいが、アプリケーションの更新や改変が困難な場合は、アプリケーションやデータをセグメント化し、そうしたエンクレーブ(飛び地)への入り口にゲートウェイを配置する方法もある。キンドリルは企業が持つ既存のIT資産を俯瞰(ふかん)し、さまざまな角度で実装方法を検討することでコストや工数を抑えるヒントを顧客に提供する。

 「ユーザー目線の環境をつくる」と言葉では簡単だが、現実には企業の目標や組織文化を基に、ユーザーニーズ、ITインフラの構成を熟慮し、予算など一定の制約をクリアしながら最適な手段で整備しなければならない。経営環境は変化する以上、「作ったら終わり」ではなく継続的改善も必要だ。

 デジタルワークプレースはツール起点やITインフラ起点で作れば成果が見えづらく、ユーザー主導で作ろうとすれば実現不可能だったりコストや工数が掛かったりする。これらの問題を解消し、包括的な観点から取り組みに伴走できるノウハウや知見こそがキンドリルならではの強みだ。

 「デジタルワークプレースを活用したテレワークといえば『DaaSを利用する』『Web会議ツールを使う』や『ユニファイドコミュニケーションを導入する』といった技術の導入から検討するケースが多いです。企業にとって大切なのは技術の導入ではなく、人のパフォーマンスを引き出して組織の成長につなげることです。まずは従業員の働き方に対する多様性に焦点を当てて、検討してみてはいかがでしょう。少し視点を変えるだけで、組織の発展の可能性や手段が見えてくるはずです。キンドリルは顧客の変革への取り組みを、可能な限りご支援したいと考えています」(東根作氏)

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提供:キンドリルジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年1月27日