サードパーティーの気象データは事業をどう変えるか 国内事例5選(1/2 ページ)

ウェザーニューズは気象情報を軸に、地震や台風から桜の開花や花粉など季節に関する情報に至るまで、独自のデータを基にしたきめ細かな情報提供を強みとする。近年は企業ITの変革に、このデータを生かす取り組みも増えている。サードパーティーの気象データを獲得することで事業運営はどう変わるだろうか。

» 2022年07月19日 15時30分 公開
[加山恵美ITmedia]

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ウェザーニューズ Mobile/Internet事業部 マーケティング&セールス WxTechビジネスリーダー 井原亮二氏

 気象情報の流通プロセスは通常、気象庁からウェザーニューズのような民間気象会社にデータが渡り、マスメディアや地方自治体を経由して国民へと届けられることが一般的だった。ところがウェザーニューズが提供する気象サービス「ウェザーニュース」(以降、企業名はウェザーニューズ、サービス名はウェザーニュースと表記)は、ユーザーが発信した天気報告を収集し、予報に反映している。

 気象情報の提供を手掛けるウェザーニューズは天気予報の高度化や精度向上に向けて積極的な投資を行い、独自のデータを獲得しつつある。専門企業だからこそ持ち得るデータを最大限に生かしたビジネスが好調だ。事業運営の高度化を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業のサードパーティーデータ活用事例として実績も積み上がる。

 本稿は、アイティメディア主催オンラインイベント「ITmedia DX Summit Vol.12」におけるウェザーニューズ Mobile/Internet事業部 マーケティング&セールス WxTechビジネスリーダー 井原亮二氏の講演「DXの実践を支える高精度気象データ-WxTechサービスによるData Experience Design-」から、ウェザーニューズの気象データ獲得方法と、事業者向けの情報提供によるビジネスモデルとその企業での活用事例を見ていく。

ないデータは観測機器を開発してまで取りに行く

 気象予報は3つの段階に大別できる。まず観測データの収集(Input)があり、そのデータを物理モデルなどに基づいて計算(Calculate)する。最終的にその計算結果をメッシュごとの予報(Output)として提供する。

 より細かく見ていこう。まずは「Input」、天気予報の基本となる観測だ。実況を把握するためには、できるだけ多くの実況値を把握できたほうがいい。現在日本では気象庁の地域気象観測システム(アメダス)のポイント(station)は1300あり、東京都内なら、東京(大手町)、世田谷、練馬、江戸川臨海、羽田などがある。十分多いような気もするが、そうとも限らない。

 例えば渋谷で何らかの活動をするため、渋谷の気象情報がほしいとする。しかしアメダスの観測地点で見ると、渋谷は東京(大手町)と世田谷の中間あたりで、しかも世田谷だと観測項目が少ない。ズバリ渋谷の情報がほしいとなると物足りない。

 同社はその不足をさまざまな観測機器を開発して測定できる仕組みを整えた。必要な場所に観測機を設置しさえすれば独自に気象情報を獲得できる。

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