なぜCIOはすぐにMSP(マネージドサービスプロバイダー)にすがるのか

景気の見通しが悪化し、コスト削減圧力が高まる中、IT業界も市場が冷え込むかと思いきや、盛り上がりを見せるのがMSPだ。CIOらはMSPにすがってでもすぐに実行したいことがあるのだという。

» 2022年10月13日 08時00分 公開
[CIO Dive]

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 好景気に陰りが見え、コスト圧縮のプレッシャーが強まる中、マネージドサービスだけが激烈に盛り上がっているようだ。テクノロジー関連の調査・アドバイザリー会社であるInformation Services Group(ISG)のパートナー兼プレジデントのスティーブ・ホール氏は、「今ほど市場が熱くなったことはない」と述べている。

 インフレや労働市場のひっ迫、為替圧力など、経済の不確実性が高まるにつれ、CIO(最高技術責任者)はコスト削減のプレッシャーから投資の優先順位の再考を余儀なくされている。こうした中でもマネージドサービスに対する需要は今後も伸び続けると予想されている。

冷え込みが見込まれるIT業界にあってMSPだけが一人勝ちの理由

 ホール氏は「インフレと景気後退の可能性が迫っているため、デリバリーコストを下げるためにアウトソーシングやマネージドサービスに目を向ける企業が増えると思われる」と述べている。

 アナリストはこの状況を、テクノロジーのモダナイズを進める必要性から、サードパーティーのマネージドサービスに対する需要が高まった、と分析する。より迅速な統合、人材へのアクセス、ニーズに合わせたサービスを通じて、企業のデジタル化とコスト削減を支援することになるという。

 ISGによれば、2022年第2四半期のマネージドサービスの支出額は88億ドルに達したという。しかしホール氏は、「為替変動の悪影響とインフレ懸念」を反映し、マネージドサービスの年間成長率予測を3.5%(前回予測の5.1%)に引き下げると述べた。

 Gartnerは、2022年のIT支出全体の成長率について、経済的な圧力もあり、第1四半期の更新からわずかに(4%から3%へと)下方修正した。Gartnerはまたビジネス変革、クラウド移行、マネージドサービスへの投資がリードするITサービス市場については、2022年に9.6%の成長を見込んでいる。前年の成長率から1ポイント低下したかたちだ。2021年のITサービス支出総額は1兆2000億ドルだという。

既存のITベンダーを切り捨てる準備に入る各社と客が殺到するMSP

 企業は業務のデジタル化を計画していることから、より効率的なIT戦略を含むマネージドサービスへの継続的な需要が発生する。

 システムインテグレーションやクラウドプラットフォームサービス、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援を担うグローバルマネージドサービスプロバイダーの1社であるTata Consultancy Services(TCS)は「顧客は既存のベンダーとの関係を整理するためにTCSと提携している」と述べている。

 TCS North Americaのプレジデント、アミット・バジャジ(Amit Bajaj)氏は次のように語る。「人々はさまざまなシナリオを想定している。ベンダー選択の波が押し寄せている。より優れたエンドツーエンドのサービスを得るため、そして規模の強みをより活用するために、少数のプロバイダーと仕事をすることを顧客は考えている」

 商業用不動産会社のJones Lang LaSalle(JLL)は、サードパーティーのMSPと連携し、他社のマネージドサービスプロバイダーとして不動産技術アドバイザリーサービスを提供している。同社は、MSPに対する需要は、焦点は異なるかもしれないが、一貫して続く可能性が高いと述べている。

MSP戦略変更のスキルギャップを埋めて自動化によるコスト削減もリードする

 JLLの一部門であるJLL Technologiesのデジタル部門のCIO、エドワード・ワゴナー氏は、「問題があるときや困難なときには、おそらくその戦略の適用に変更が生じる」と述べている。「企業がより効率的になる必要があるなら、これらの計画の実行を支援し、スキルギャップを埋めるために、マネージドサービス企業と提携する必要があるかもしれない」と同氏は付け加える。

 Gartnerのシニアディレクターアナリストであるブレット・スパークス氏は「経済的圧力に関係なく、DXのトレンドが引き続き需要を促進すると期待されている」と語る。

 自動化技術はその重要な一翼を担う。自動化に投資することで、特定のタスクを実行する人間の需要を削減できる。マネージドサービスプロバイダーはそのような自動化へのシフトを促進できると同氏は言う。「企業は先進技術を導入することで、労働力の最適化を進めてデジタルな運用に切り替えることで支出を年々削減することを望んでいる」。

 フロリダ州サンライズを拠点とするマネージドサービスプロバイダーのAccelirateは、ライセンス管理、導入およびサポートを通じて、RPAソフトウェア「UiPath」の導入と運用を支援している。Accelirateの共同設立者であるアーメッド・ザイディ最高経営責任者(CEO)は、「自動化の導入が進んでいるため、サポート業務の需要が高まっている」と述べている。UiPathのグローバルサービスおよびプロセス産業担当バイスプレジデントであるジェイソン・ワレルマン氏は、「MSPは、しばしばサブスクリプションを通じて企業にとってコストとなるが、自動化技術を導入するためのターンキーオプションとして企業が信頼できるため、需要が加速している」と話す。

 「ほとんどの中堅企業、例えば近所の病院は、自動化のメリットを求めているが、そのための投資をする人材や予算がない。必要なのは、接続を確立し、マネージドサービスプロバイダーがサービスとして自動化を推進することだ」と同氏は続ける。

 CIOの視点から見ると、マネージドサービスプロバイダーは、技術的な問題やプロセス上の問題への対処を含め、企業が景気後退に対処するための戦略の土台作りを支援できる、とスパークス氏は述べている。

 「意味のあるところには今よりもっとお金をかけ、将来的な経費削減を目指すべきだ」(スパークス氏)

 その結果、企業は会社全体のテクノロジー運用を維持するためにMSPを幅広く利用するのではなく、特定の問題に対処するために利用するようになるかもしれない。

 UiPathのワレルマン氏は次のように語っている。「不良債権を改善したいのであれば、収益サイクル管理に特化したマネージドサービスプロバイダーを見つけるべきだ。この種のプロバイダーは、企業内の全てに対してプログラムを作成するのではなく、特定の結果に非常に重点を置いている」


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