原材料価格の高騰や顧客の行動パターンの変化などによって将来を予測することはより難しくなっている。強靱なサプライチェーンを構築するために企業は何をすべきか。
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コロナ禍の影響は小さくなり、サプライチェーンは正常化しつつある。ただし、ロシア・ウクライナ戦争や原材料価格の高騰、顧客の行動パターンの変化など不安要因は多く存在する。将来予測が難しさを増す今、より強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築するために企業は何をすべきか。
本稿では新しいソリューションを導入して、サプライチェーンマネジメントの最適化を図る企業を紹介する。
寝具メーカーのSerta Simmons Beddingは、より弾力的なサプライチェーンを構築するために製造業務のデジタル最適化を進めている。
同社は、パナソニックが提供する、最新テクノロジーを駆使して大手企業のサプライチェーンを支援する「Blue Yonder」の「Integrated Demand and Supply Planning」(IDSP:統合需給計画)を既存のプランニングシステムに導入した。「予測精度を高めることで、より正確な人員配置と工場で働く従業員の残業コストの削減、原材料の在庫切れや輸送コストの削減、売上損失の低減を実現する」と同社は「Supply Chain Dive」に語った。
「Blue YonderのIDSPが提供するリアルタイムシナリオプランニング機能は、Serta Simmons Beddingのプランナーが変化するビジネス状況を追跡し、必要な調整を検討するのに役立つ」と、Blue Yonderの製造業ソリューション担当のシュリ・ハリハラン氏は「Supply Chain Dive」に宛てた電子メールで語った。
「IDSPはサプライネットワークの能力を最適化し、最大化することで製造能力を向上させる。製品の入れ替えを最小限に抑え、最適な製品構成の計画を推進し、工場とサプライヤーの生産性を需要シグナルと一致させる」(ハリハラン氏)
顧客の行動パターンの変化や物流の混乱、在庫価格の高騰など、サプライチェーンに関する予測はますます難しくなっていることを同氏は指摘する。「企業が予測を誤れば、在庫の肥大化や過剰な廃棄物、収益性の低下といったリスクに直面することになるだろう」(ハリハラン氏)
さらに同氏は、「Serta Simmons Beddingのようなマットレスをはじめとする寝具を製造する企業は、外的要因によって製造や在庫の管理方法が大きく変わった」と指摘する。今は、低反発や衝撃吸収に優れたメモリーフォームのような素材を使用する製品が市場に多く出回っている。さらに、寝具販売に特化するBed In A Boxのようなeコマースが業界を揺るがし、顧客の期待を覆した。こうした変化に伴って製造のワークフローはより複雑になっている。
ハリハラン氏は「このような市場の変化に伴って、ネットワークが一定時間に処理できるデータ量を最大化し、機器の利用率を高め、適切な製品構成を適切な量と時間で生産する計画を立てることが重要だ。データ主導のデジタルソリューションを導入することで、同社はフルフィルメント業務(注1)を最適化し、コストバランスを取るために必要な意思決定が実行できる」と指摘した。
Serta Simmons Beddingの他にBlue YonderのIDSPを利用している企業は、運送会社と貨物をリアルタイムでマッチングするサービスを提供するUber Freightや、コンタクトロジスティクスプロバイダー(注2)で倉庫ロボット管理システムを提供するDHL Supply Chainなどだ(注3)(注4)。
(注1)受注から商品ピックアップ、発送、顧客への商品配送、返品などのアフターサービスまでの一連の業務
(注2)荷主企業から物流業務を受注する物流企業。物流戦略の立案や在庫管理など物流に関する包括的な業務全体を請け負う。3PL(3rd Party Logistics)とも呼ばれる。
(注3)Uber Freight partners with Blue Yonder on API for real-time quotes, booking(Supply Chain Dive)
(注4)DHL, Blue Yonder, Microsoft partner on warehouse robotics platform to speed deployment(Supply Chain Dive)
(初出)How Serta Simmons Bedding is optimizing manufacturing efficiency
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