国内エンタープライズインフラ市場、「2024年に落ち込む」理由は？ IDCが予測

IDCの予測によると、国内エンタープライズインフラ市場は2024年以降に成長が鈍化する。その理由は？　ITサプライヤーに求められるサービス戦略とは？

[金澤雅子，ITmedia]

　IDC Japan（以下、IDC）は2023年5月18日、国内エンタープライズインフラ市場の予測を発表した。

2024年以降から成長鈍化の理由は？

　IDCはサーバやエンタープライズストレージシステムで構成される国内エンタープライズインフラ市場について製品分類や配備モデル、バイヤータイプなどの視点から予測している。

　IDCは2023年の国内エンタープライズインフラの市場規模は、2022年比4.1％増の8014億1200万円と予測する。2022年の同市場は、サプライチェーンの制約によって積み上がったバックログ（受注残）の解消が進んだことから、2022年比成長率が20％を上回る高い水準となった。2023年はバックログの解消に加え、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の拡大によって抑制されていた経済活動の再開や、延期されていたプロジェクトの再開などによって、エンタープライズインフラに対する需要が堅調に推移し、プラス成長になると見込む。

2022〜2027年の国内エンタープライズインフラ市場支出額予測（2022年は実績値、2023年以降は予測値）（出典：IDCのプレスリリース）

　IDCはエンタープライズインフラ市場を3つの製品分類に分けている。OEM（Original Equipment Manufacturing）が提供する「OEMサーバ」「OEMストレージ」と、ODM（Original Design Manufacturing）が主にグローバルクラウドサービスプロバイダーなどの顧客ごとに設計、製造して提供する「ODMダイレクト」だ。

　IDCは製品分類別の2023年の2022年比成長率をOEMサーバが1.5％、OEMストレージが10.0％、ODMダイレクトが8.4％と予測している。配備モデル別の2023年の2022年比成長率は「非クラウド」が1.9％、「プライベートクラウド」が2.5％、「パブリッククラウド」が9.0％と予測。エンタープライズインフラがクラウドとして配備される割合がさらに高まるとみている。

　バイヤータイプ別の2023年の2022年比成長率は「サービスプロバイダー」が5.8％、「非サービスプロバイダー」が2.3％と予測している。IDCは「2023年に初めて、国内のエンタープライズインフラへの支出額は、サービスプロバイダーが一般の企業や組織を上回る」と予測している。

ITサプライヤーに求められるサービス戦略は？

　2024年以降の国内エンタープライズインフラ市場は、前年比でマイナス成長が続く見込みだ。IDCは「主にOEMサーバの出荷が大きく落ち込んだ2021年以前の出荷分の更新需要が減少するため」とその理由を分析している。

　ただし、2027年には、出荷が大幅に伸びた2022年以降の出荷分の更新需要などによってプラス成長に復する見込みだ。その結果、2027年の国内エンタープライズインフラ市場は7858億9500万円規模となり、2022〜2027年の年間平均成長率（CAGR）は0.4％となる予測だ。

　もっとも国内エンタープライズインフラ市場の成長性は一様ではない。2022〜2027年のCAGRが市場平均を上回るセグメントは、製品分類別ではOEMストレージとODMダイレクト、配備モデル別ではプライベートクラウドとパブリッククラウド、バイヤータイプ別ではサービスプロバイダーとIDCは予測している。

　エンタープライズインフラの配備モデルや購入者は、パブリッククラウドサービスの活用やプライベートクラウドへの刷新、as a Service消費モデルの普及といった要因によって変化する。その結果、「国内エンタープライズインフラ市場におけるセグメント別の成長性に差が出る」とIDCはみている。

　こうした状況に対し、ITサプライヤーに求められるサービス戦略は何か。IDCの宝出幸久氏（Infrastructure ＆ Devices　リサーチマネージャー）は「ITサプライヤーは、自社の強みに基づいて成長セグメントや収益を確保し得るセグメントにおける競争力を強化するとともに、エンタープライズインフラ関連分野のエコシステムを強化することで、デジタルビジネスの成功に向けて顧客のITインフラの刷新に伴走するパートナーとしての地位を確立するべきだ」と提言する。