住友商事グループが推進するDXとクラウドジャーニー AWS採用で何をする?

住友商事グループが推進するDXの内容が分かった。その中でAWSを選択した理由とは。

» 2023年06月29日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は2023年6月22日、大規模な基幹システム(SAP ERP)移行の事例として住友商事グループを紹介した。

住友商事グループが推進するDXとクラウドジャーニー AWS採用で何をする?

 住友商事グループは2021年から3年間の中期経営計画「SHIFT 2023」に基づき、「事業ポートフォリオのシフト」「仕組みのシフト」「経営基盤のシフト」を推進している。その中でも同グループが注力しているのがデジタルトランスフォーメーション(DX)による「ビジネス改革」がある。

住友商事の塩谷 渉氏

 住友商事の塩谷 渉氏(IT企画推進部長 DX・IT統括責任者補佐)はDXの取り組みについて「(SHIFT2023が始まる前の)2018年4月にDXセンターを設立して以来、ITサービス企業のSCSKと連携してDXを推進しています。グローバルで150人以上が300件以上のプロジェクトに取り組んできました」と語った。

中期経営計画「SHIFT 2023」(出典:AWSジャパン提供資料)

 住友商事グループはDXへの取り組みが全社的に浸透してきたことを受け、2023年4月より新たなDX体制を確立した。従来はデジタル事業本部などがデジタル事業とDXを推進していたが、新体制では「デジタル事業」と「DXに関連する機能提供」を行う2つのグループに分け、それぞれの業務をより明確にした。

住友商事のクラウドジャーニー

 塩谷氏によれば、住友商事は約10年前に基幹システムをオンプレミスから(ホスティング型の)プライベートクラウド環境に移行し始めた。住友商事グループの基幹システム「SIGMA基幹システム」は2001年のSAP導入時に構築されたものだ。その後、2017年にSAPが提供するPaaS型のマネージドサービスである「SAP HANA Enterprise Cloud」に移行、2023年にRISE with SAP on AWSを採用した。現在はパブリッククラウドの飛躍的な進化などもあり、それを活用した「SCデジタル基盤」(SCDP)の構築とRISE with SAP on AWSによる基幹システムの刷新に取り組んでいる。

住友商事のクラウドジャーニー(出典:AWSジャパン提供資料)

 SCDPは、住友商事グループが一体となり「スピーディー」「効率的」「安心」「セキュア」に使えるインフラ環境の構築を目指す取り組みだ。グループ各社がDXを推進していくためにはその基盤となるインフラが整備されている必要がある。この取り組みがフェーズ1だ。それが達成できた後にフェーズ2の「収益改善」、そしてフェーズ3の「各社のプラットフォーマー化」、フェーズ4の「新たな価値提供」につなげていくという。塩谷氏によれば現在はこのフェーズ1に取り組んでいる段階だ。

 塩谷氏はSCデジタル基盤に「Amazon Web Services」(AWS)を採用した理由として、「住友商事グループのグローバルなシステム運営を担っているSCSKがAWSとパートナーシップを持っていたこと」「200以上のクラウドサービスを利用できること」などを挙げた。

 SAPが提供する「RISE with SAP」は、基幹システムに対してコスト最適化や拡張性確保を考慮した上でS/4HANAに移行するための支援プログラムで、RISE with SAP on AWSはそのAWS版だ。

SIGMA基幹システム(出典:AWSジャパン提供資料)

 塩谷氏は「RISE with SAP on AWSであれば、マルチリージョンで冗長性の確保や災害時の迅速な対応が期待でき、コスト体系も柔軟です」と評価した。従来は住友商事グループ内でライセンス費用などをそれぞれ管理していたが、RISE with SAP on AWSではライセンスや利用料などの一式を1つのサブスクリプションにまとめられる。

 住友商事グループはこの取り組みを通して、ERPに含まれる各機能のコンポーザブル化を目指している。現在はERPの標準機能と業務で必要な機能のギャップをアドオン開発で対応しているが、今後は極力標準機能を活用し、API連携などでギャップに対応する考えだ。

 「ビジネス環境の変化が激しい時代には、このようなコンポーザブルなERP環境が欠かせません。今後も段階的に推進していきます」(塩谷氏)

コンポーザブルなERPを目指して(出典:AWSジャパン提供資料)

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