やはり現金が最強か? モバイル決済アプリが早くもピークを過ぎた説Payments Dive

パンデミックの影響でオンライン決済の利用が拡大した。一方で人々の現金離れは進んでいないようだ。

» 2023年07月06日 08時00分 公開
[Caitlin MullenPayments Dive]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行もあり、2022年はオンラインショッピングの利用が増え、現金よりもクレジットカードによる決済が増加した。

 しかし、現金による決済の需要は安定している。FRB(米連邦準備制度理事会)が2023年5月5日に発表した「消費者の支払い選択に関する報告書」によれば、93%の消費者が「将来現金を使わなくなるとは考えていない」と答えた(注1)。

パンデミックの前後で支払方法はどう変化したか

 2022年に行われた全ての支払いのうち、現金が占める割合は18%で、2019年の26%から減少した。しかし、2020年は19%、2021年は20%とほぼ横ばいになっている。FRBは同報告書の中で「2019年から2020年にかけて(現金支払いが)減少したが、過去2年間は安定しており、現時点では下げ止まりになっている可能性がある」としている。

 クレジットカードは2022年に最も利用された決済手段であり、全決済の31%を占める。また、利用は増加傾向にある。FRBによれば、デビットカードの使用は現金の使用と同様に、2020年と2021年で水準がほぼ一致している。

 同報告書は2022年10月に行われた消費者調査で集まったデータに基づいており、この調査は2016年から毎年実施されている。

 同調査によれば、2016年以降は現金を積極的に使用する消費者が少なくなり、クレジットカードを選ぶ人が増えている。FRBは「消費者は現金と比較して利便性が高く、記録管理が容易といった理由でクレジットカードを好んでいる」と指摘する。クレジットカードの入会特典も利用増加の一役を買っているとみられる。

 それでも現金に対する需要が安定していることについて、米サンフランシスコ連邦準備銀行の執行副総裁でFedCash Servicesのチーフであるキャサリーン・ヤング氏は2023年5月19日に「現金を必要とし、現金を選択する消費者がいることは事実であり、これは確実性の高い決済システムの必要性を強調している」と述べている(注2)。

 FRBは「銀行口座を持たない人々にとって、現金は特に重要だ」と指摘する。銀行口座を持つ消費者のうち、買い物の支払いに現金を使う割合は、2019年の25%から2022年には17%へ減少した。一方、銀行口座を持たない消費者の間では現金利用が増加しており、2019年の55%から2022年には66%となった。

 年代別でみると、高齢世代は若年世代よりも現金を使用する傾向にある。FRBは「パンデミックが18〜24歳の消費者に与えた影響はその他の年齢層よりも大きかった」と述べている。彼らの現金使用率は2019〜2022年の間に33%から13%へと急落した。同期間における35〜44歳の現金使用は20%から13%へと減少し、45〜54歳の現金使用は25%から16%へと減少した。

 近年、クレジットカードの普及と利用が進む一方で、消費者はインフレや金利の上昇、景気後退のリスクに悩まされている。FRBは「不確実な時代には現金に対する需要が高まる」と主張する。

 FRBに調査によると、2022年における個人の財布にある現金の平均額は、2021年から5ドル急増し、73ドルになったことが判明した。FRBが2021年の調査結果で指摘したように(注3)、消費者が保有する現金のうち、多くを占めるのは日常の買い物以外の用途で、2022年は平均418ドルに達した。

 現金は少額決済の方法として人気がある。FRBによると、2022年に消費者が行った25ドル未満の対面支払いの回数は月平均13回で、同カテゴリーでは現金が最も多く使用された。オンラインショッピングの成長もあり、2022年に行われた購入や個人間取引決済のうち、オンラインまたはリモートの割合は19%、対面は81%になった。2019年にはこれらのシェアはそれぞれ13%と87%だった。

 FRBは「モバイル決済アプリの利用が頭打ちになっている」とも指摘している。2020年に利用率が3%に達したが、2021年と2022年は1%にとどまっている。

 FRBは「2020年に消費者はオンラインやリモートの決済手段にシフトしたが、モバイルアプリ決済を含め、平均利用回数はそれ以降増加しておらず、パンデミックの初期にピークを迎えた可能性がある」と指摘している。

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