拡張性を保ちつつストレージ関連コストを30%削減 東芝グループはこれをどう実現したか

増え続けるデータとコストに企業は頭を悩ませている。そんな中、東芝グループはNTTが提供するサービスで30%のコスト削減を実現したという。

» 2023年07月13日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 増え続けるデータをいかにセキュアに保管するか――。多くの企業がデジタル化を推進する中でこのような課題を抱えている。解決策としてオブジェクトストレージの利用などに注目が集まっているが、高額な利用料金やベンダーロックインに頭を悩ませるところもある。

 このような現状に対処するために、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)はオブジェクトストレージを提供するWasabi Technologiesと提携し、サービスを展開している。

 両社の提携によって提供されるサービスはユーザーにどのようなメリットを与えるのか。Wasabi Technologies Japan(以下、Wasabi)の脇本亜紀氏(取締役社長)、NTT Comの山中重治氏(プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス本部 第二サービス部門 主査)、光本博竹氏(ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部 デジタルソリューション部門 主査)に話を聞いた。

東芝が30%のコスト削減を実現 NTT Comが企業の悩みを解決するか

NTT Comの山中重治氏

 NTT Comは企業のデータ活用を推進するために「クラウド/サーバ」「ネットワーク」「IoT(モノのインターネット)」「モニタリング」といった機能を備えた「Smart Data Platform」を提供しており、そのうちのストレージメニューの一つに「Wasabi Object Storage」がある。

 Wasabi Object Storageはマルチテナント型オブジェクトストレージサービスだ。「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)互換のAPIを提供しているため、Amazon S3のエコシステムを活用できる。また、1GB当たり約0.75円/月と安価でありながら、トラフィック料金に対して非課金なのも強みだ。他社製品は基本的に下り転送料やAPI利用料がかかるため、コストが大きくなりやすい。

Wasabiの脇本亜紀氏

 脇本氏はWasabi Object Storageについて「Wasabiの調査によれば、Amazon S3よりデータの書き込み・読み込みが早く、データの堅牢(けんろう)性は同程度です」と自信を見せた。Wasabi Object Storageはデフォルトでインターネット接続となるが、東京リージョンと大阪リージョンではNTT Comが提供する「Flexible InterConnect」による閉域網接続も利用可能だ。

 「NTT Comが提供するFlexible InterConnectは、オンデマンドで安全な接続を実現する次世代インターコネクトサービスです。Wasabi Object Storageを提供する上で、これを利用できるのはユーザーにとってもメリットだと思います」(山中氏)

100TB保存時におけるAmazon S3との料金比較(出典:NTT Comの提供資料)

東芝グループが採用したWasabi Tiering For X

NTT Comの光本博竹氏

 光本氏によれば、ストレージやバックアップツールとWasabiを組み合わせたソリューション「ストレージ最適化ソリューション」に注目が集まっている。同ソリューションは「大規模ファイルサーバのコスト削減(階層化)」「ランサムウェア対策、BCP(事業継続計画)対策のためのデータ保護環境」といった用途でエンタープライズ企業の導入が進んでいる。

東芝グループの事例における自動ティアリングの流れ(出典:NTT ComのWebサイト)

 実際の事例としてNTT Comが2022年10月12日に発表したのが東芝グループによる「Wasabi Tiering for NetApp」の導入だ。Wasabiと同じデータセンターに連携するNetAppのストレージ機器を配置し、高頻度アクセスデータをNetAppに、低頻度アクセスデータをWasabiに移動することで、全体コストの30%削減やスケーラビリティの向上を実現した。

 「大規模なファイルサーバの階層化で気になるのはパフォーマンス問題です。今回、NetAppをWasabiと同一のデータセンターに設置することでレイテンシーを最小化しました」(光本氏)

 東芝グループがNTT Comによる同サービスを選択した理由は2つだ。1つ目はAmazon S3と同品質でありながら、GB当たりの単価が安く、オブジェクトストレージにおけるトラフィック課金も0円というコストパフォーマンスだ。2つ目は基盤や通信なども含めた、複合的なサービスをワンストップで提供・運用・保守可能な点だ。

 「多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでおり、その中でデータの重要性は年々増しています。一方でその保管は安全性やコストの面から簡単ではありません。そんな企業の悩みを解決するサービスだと言えます」(山中氏)

 山中氏によると、企業はランサムウェア対策も踏まえて同サービスを採用するケースも増えているという。実際に「Wasabi Tiering for Cohesity」を導入した製造業の企業では、データに関するコストを削減しながら、Cohesityの機能も活用して予防・検知・復旧といったランサムウェア対策を実施しているという。

 冒頭にも記したが、増え続けるデータをどう保管するかに悩む企業は多い。NTT ComとWasabiが提供するサービスはそんな企業を支援するはずだ。

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