クラウドストレージでのバックアップにはセキュリティ向上はもちろんデータ活用にもメリットがある。Wasabiはこれらを多くの企業に提供するために低価格帯で高性能なサービスを実現しているという。
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クラウドストレージベンダーのWasabi Technologies(以下、Wasabi)は2023年2月28日(現地時間)、パブリッククラウドストレージに関する調査「2023年Global Cloud Storage Index」のAPAC版を発表した。同調査によれば、2023年のパブリッククラウドストレージの成長率は日本を含むAPAC(アジア太平洋)地域がトップだ。Wasabi Technologies Japanで取締役社長を務める脇本亜紀氏に、クラウドストレージやバックアップの重要性、そしてWasabiの強みを聞いた。
Wasabiは「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)互換のオブジェクトストレージサービス「Wasabi Hot Cloud Storage」を提供する企業だ。ストレージサービスに付随する専用線サービスやストレージ管理サービスも提供する。「Wasabi Hot Cloud Storage」はデータのダウンロードやAPIコールに課金が発生しないため、用途によっては低コストの差がさらに拡大する。脇本氏は「データのリストアにコストがかからず、バックアップデータの格納先として最適です」と話す。
企業からクラウドストレージに注目が集まる中、Wasabiはその低価格かつ高性能なサービスでビジネスを拡大している。その中で脇本氏は「安かろう悪かろうではない」と強調する。
「主要ハイパースケーラー3社をベンチマークにしてサービスを提供しており、価格設定や提供機能、性能については引けを取らない自信があります」(脇本氏)
このような発言の背景には、Wasabiが350社を超えるベンダーと技術的アライアンスを締結していることがある。各ベンダーとWasabiの連携によってユーザーはさまざまなソリューションを活用できる。
脇本氏は日本におけるクラウドストレージ活用の現状について、「やはり米国や欧州と比較すると遅れている傾向にあります」と話し、「Wasabiはバックアップの重要性を広め、『気付けばバックアップを通じてクラウド活用をしていた』という企業を増やしたいと考えています。結果としてクラウド活用のハードルを下げられるでしょう」と続けた。
では、なぜ日本ではクラウド活用が遅れているのだろうか。
脇本氏は「合理的な理由があるというよりは『何となくデータが手元にないのが心配』という企業が多いのではないでしょうか」と見解を述べる。一方、企業におけるクラウド利用は少しずつ進んでおり、脇本氏は「今後10年で大幅にクラウドアダプション(受容)が広がっていくと思います」と述べた。
2023年Global Cloud Storage Indexによれば、2023年のパブリッククラウドストレージの成長率はアジア太平洋地域がトップだ。この結果はまさにこれまでクラウドアダプションが遅れていたアジア太平洋において、これから大きな波が来ることを表している。脇本氏は、日本でクラウドアダプションの課題になっているのは「クラウドストレージ導入に対する心理的なハードルがあるからです」と指摘する。
「日本はまだまだオンプレ志向なので、クラウドのセキュリティに対する不安があるのかと思います。ただ、現在のクラウドサービスは強固なセキュリティ対策を実施しており、世界的なトレンドを見ても今後10年でクラウド移行が進むことは間違いないでしょう」(脇本氏)
脇本氏によると、海外でも「データを自国内に保存したい」という企業は多い。Wasabiは日本で東京と大阪にデータセンターを構えており、「データを自国に」という企業のニーズを満たしながらビジネス展開できる。
Wasabiの日本支社設立から約2年。現在はSaaSを中心にバックアップの要望が増えている。脇本氏によれば、これまでユーザーは「SaaSのデータは提供ベンダーがバックアップしてくれている」という認識を持っていたが、実際はそうではないという理解が進んでいるという。また、ユーザーはランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃対策に積極的に取り組んでおり、その流れでもバックアップに注目が集まっているようだ。
「バックアップの在り方が大きく変わっています。これまでは『何かあった時のために』という意識からバックアップが行われていましたが、現在は『日常のセキュリティ対策の一環』になっています。この点は今後も企業が意識すべきことです」(脇本氏)
データの蓄積ができでも、データの活用は別の話だ。実際に「データが増えすぎてどう意思決定をすればよいのか分からない」という声もある。この点について脇本氏は「まずは蓄積し、データを使いたいときに使えるような体制を持つことが重要です」と意見を述べた。
「ハイパースケーラーはデータ利用時に課金などを実施しますが、それではデータ活用への意欲が損なわれます。Wasabiではデータの取り出しは無料なため、ユーザーは予算計画に沿った利用料金でデータを活用できます」(脇本氏)
実際にWasabiを使ったユーザーからも「データの読み込みが予想よりも早い」といった声が出ているという。Wasabiは競合企業とのパフォーマンス比較をレポート「Wasabi Performance Benchmark Report」として公開している。図1はその一部だ。内容はコンピューティングキャパシティーを提供する「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)やAmazon S3との比較になっている。
同レポートによれば、書き込みや読み込み、オブジェクトサイズごとのパフォーマンスなどの多くの項目でWasabiが大きく上回る結果となっている。
「AWSなどからWasabiに移られた方からは『安くなった』と喜んでいただいています。ユーザーからは『ストレージ以外のサービスは出さないのか』という声もありますが、Wasabiはこれからもクラウドストレージ専業として取り組んでいきます。ワサビだけを食べる人はいません。適切な場所に適切なパッケージでサービスを提供できるように今後も注力していきます」(脇本氏)
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