「意思決定をAIに委ねたい」リーダーは70% 膨大なデータがビジネスに及ぼす影響が判明

データが氾濫する現在。果たして膨大な量のデータはビジネスにおける意思決定にどのような影響を及ぼしているのだろうか。米オラクルが『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』を執筆したデータサイエンティストと共同分析したところ、データに翻弄されるビジネスリーダーの姿が浮かび上がった。

» 2023年04月24日 16時30分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 日本オラクルは2023年4月20日、世界のビジネスリーダーの70%が「意思決定をAIに委ねたい」と考えているとの調査結果を発表した。

「データに圧倒されて、意思決定を断念」

 同調査は、日本を含む全世界17カ国の企業で働く従業員およびビジネスリーダーを対象に2023年1月に米Oracleが実施したものだ。

 計1万4250人から有効回答を得た。調査対象者は社長、CEO(最高経営責任)、会長、経営幹部、CFO(最高財務責任者)、CTO(最高技術責任者)、ディレクター、シニアマネジャー、HR(人事)マネジャーなどの役職者や従業員から構成される。米Oracleは同調査を米高級日刊紙『The New York Times』が選ぶベストセラー『Everybody Lies: Big Data, New Data, and What the Internet Can Tell Us About Who We Really Are』(日本語版タイトル『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』)の著者でデータサイエンティストのセス・ステファンズ・ダヴィドヴィツ氏と共同で分析し、調査レポート「意思決定ジレンマのグローバル調査 2023年版」としてまとめた。

 同レポートによると、膨大な量のデータが人々を圧倒する結果、データの信用度が損なわれ、意思決定がより複雑になり、生活の質に悪影響を及ぼしている。

 回答者の74%が「毎日行う意思決定が過去3年間で10倍に増えた」と回答し、意思決定する際に78%が「かつてないほど多くのデータソースからの大量のデータ攻めに遭っている」と回答した。

 86%が「データ量の増加により私生活や仕事上の意思決定がより複雑になっている」と回答し、59%が「どのような決断をすべきか分からないという意思決定のジレンマに1日に1回以上直面している」と認めた。

 また、35%が「どのデータやデータソースを信頼すべきかが分からない」、70%が「データに圧倒されて意思決定を断念したことがある」と答えた。

 意思決定できないことが「自身の生活の質に悪影響を及ぼしている」と回答したのは85%に上り、それに伴って「不安」(36%)、「機会損失」(33%)、「不必要な支出」(29%)の急増もみられた。

 その結果、93%が「過去3年間に意思決定の方法を変更したことがある」と回答。現在は、39%が「信頼できる情報源にのみ耳を傾け」、29%は「直感のみに頼る」ようになったという。

リーダーの決断の苦しみが組織を硬直化させる

 ビジネスリーダーはデータ活用が組織の成功に不可欠であることを理解している。しかし、成功するために最適なツールが手元にあるとは考えておらず、それが自信とタイムリーな意思決定を行う能力を低下させていることが明らかになった。

 同レポートによると、ビジネスリーダーの85%が「過去1年間に行った意思決定に対して後悔、罪悪感、疑問などを抱く『意思決定のジレンマ』(苦悩)を経験」していた。そして93%が、「より適切な意思決定インテリジェンスを有することが、組織の成功を左右する」と考えていた。

 さらに、97%が「データを活用したい」と考えており、「意思決定の改善」(44%)、「リスクの低減」(41%)、「意思決定の迅速化」(39%)、「収益の向上」(37%)、「不測の事態への対応」(29%)などへの支援が求められていた。

 しかし、実際には72%が「膨大な量のデータとデータに対する信頼の欠如により、一切の意思決定ができなくなった」と回答した他、89%が「データソースの増加により組織の成功が制限されている」と考えている。

 具体的には、異なるデータソースを管理することで「全てのデータを収集するために新たなリソースが必要になり」(40%)、「戦略的な意思決定が遅くなり」(36%)、「ミスが発生する機会が増えた」(26%)といった課題が挙がった。

 一方で、ビジネスリーダーは、データとアナリティクスに対する現在のアプローチは、こうした課題に対処できていないと考えていることも判明。77%が「現在使用しているツールのダッシュボードやチャートは、意思決定に必ずしも直結していない」と回答し、72%が「利用可能なデータのほとんどは、IT専門家やデータサイエンティストにしか役に立たない」と答えていた。

 ビジネスリーダーは、この現状を打破する必要があると認めており、適切なデータとインサイトを利用できれば「人事」(94%)、「財務」(94%)、「サプライチェーン」(94%)、「カスタマーエクスペリエンス」(93%)における意思決定の改善に役立つと考えていることが分かった。

AIに意志決定してもらいたい その理由は?

 ビジネス上の重要な意思決定に際して、データの収集と解釈はそれを担うビジネスパーソンにとって大きなストレスになる。

 調査レポートによると、回答者の70%が「膨大なデータの収集とその解釈は、自分には手に負えないほどの頭痛の種だ」と答えた。

 ビジネスリーダーの78%が「人間が決断を下してから、それを正当化するためのデータを探すことが多い」と答えた一方、従業員の74%は「企業はデータよりも、給料が高い人間の意見を優先することが多い」、24%は「ビジネスで下されるほとんどの決断は合理的ではないと思う」と回答するなど、適切にデータを活用できていない現状がみてとれた。

 こうした厳しい状況を反映し、全回答者の64%、ビジネスリーダーの70%が「こうした困難が消え去るなら、ロボット/AIに意志決定させたい」と望んでいることも分かった。

 私生活でも仕事上でもデータに対する不満はあるものの、人々はその必要性は認識しており、データがなければ「意志決定の精度が落ち」(44%)、「成功率が下がり」(27%)、「ミスが発生しやすくなる」(39%)と理解していた。

 また、テクノロジーを使ってデータ主導の意思決定を行う企業/組織については、「より信頼できる」(79%)、「より成功が見込まれる」(79%)、「投資したい」(76%)、「提携したい」(77%)、「勤めたい」(78%)とも考えていた。

 調査結果を受け、ダヴィドヴィツ氏は「今回の調査ではインターネット検索やニュースアラート、友人たちからの一方的なコメントなど、平均的な1日に人が受け取る圧倒的な量のデータのインプットは、脳が処理できる範囲を上回る情報量に達していることが明らかになった。人々はデータの中で溺れているようなものだ。人は、複雑で時に相反するデータを無視して、自分が正しいと思うことを実行したくなる傾向があるが、それが間違いのもとになるかもしれない。迷いを生みがちな直感ではなく、ビジネスに関連するデータを適切に理解した上で意思決定を行うことが最適であることは、繰り返し証明されてきた。企業にとって、手元のデータストリームを管理し、シグナルとノイズを区別できる方法を見つけることが重要な第一歩になる」とコメントした。

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