「レジリエンシーを備えている」宣言ができる日本企業はわずか3割

日本企業でデジタルレジリエンシーを備えていると言い切れる企業はわずか3割しかない。経営幹部がレジリエンシーを重視している一方、現場が追い付かない状況が明らかになった。

» 2023年04月18日 08時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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SAS「RESILIENCY RULES REPORT」(出典:SASの公開資料)

 SAS Institute Japanは2023年4月13日、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、日本、英国、米国の7カ国で実施したレジリエンシー(回復力)に関する調査結果を発表した。それによると回答者の大半がレジリエンシーを重要だとして投資意欲を示した一方で、日本の経営幹部は自力でレジリエンシーを備えることが困難だと考えていることが分かった。

 今回の調査では、自国経済の将来について楽観的だった経営幹部の割合は70%であり、レジリエンシーの計画や戦略に投資していると回答した割合は80%だった。

 ところが、レジリエンシーを重要視していることと、実際に企業がどの程度レジリエンシーを備えているかとの間には隔たりがあった。日本に限っても同様で、87%がレジリエンシーを重要だと考えているにもかかわらず、自社がレジリエンシーを備えていると回答した割合は27%にとどまった。

 世界のビジネスリーダーのうち、「自社のレジリエンシーの構築に自信を持っており、適切な助言が得られればこうした隔たりを解消できる」と考えている割合は74%だった。一方で、日本のビジネスリーダーを見ると「自社が効果的なレジリエンシー戦略を実装するにはガイダンスが必要だ」とした割合は71%に上った。

デジタルレジリエンシーに必要なのはデータとアナリティクス

 SASは、レジリエンシーを維持し強化するには「スピードと機動力」「イノベーション」「公平性と責任」「データカルチャーとリテラシー」「好奇心」の5つのルールが必要だと指摘する。

 SASは今回の調査で、上記5つのレジリエンシーに関するルールによって企業の経営幹部が各分野にどのように優先順位を付けて実行しているかを調べた。それによると、日本の経営幹部は、レジリエンシープランニングにおいて5つのルール全てを考慮することが重要だと考えていることが分かった。つまり日本企業は、1つのルールを優先するために別のルールを犠牲にすることを避けるべきだと考えていた。そして5つのルールの中でも特に「スピードと機動力」を、競争力維持のために最も重要だと見ていた。

日本はスピードとアジリティを重視する傾向(出典:SAS「レジリエンシー・ルールレポート:日本」)

 また、今回の調査では「レジリエンシーの5つのルールを実装するにはデータとアナリティクスが不可欠だ」と回答した日本のビジネスリーダーの割合は80%以上となった。レジリエンシーレベルの高い世界の経営者の96%が「意思決定に必要な情報」として社内外のデータとアナリティクスを利用していた。そして、データツールを導入している経営幹部の割合は、レジリエンシーレベルの低い企業の22%に対して、レジリエンシーの高い企業では93%だった。

 SASでは、企業のレジリエンシーの高さとビジネス慣習を比べて、レジリエンシーの高い経営にとって構造化された戦略を持つことは、混乱に対処するだけでなくビジネスの安定にも寄与していることから、不可欠だと分析している。レジリエンシー戦略は、雇用実績や消費者からの信頼など主要なビジネス指標にも影響を与えるとしている。

 SASの経営幹部でバイス・プレジデント兼CIOを務めるジェイ・アップチャーチ氏は、「当社は、データとアナリティクスを活用して、持続可能なレジリエンシー戦略を構築することにより、あらゆる業界の経営者が競合他社に打ち勝つことを支援する。SASが開発したレジリエンシー指数評価ツールを活用することで、企業は既存の強みと成長可能な分野をより明確化できる。その洞察は、ギャップを埋め、課題や混乱に直面しても迅速に対応できるツールやシステムを戦略的に強化するのに役立つ」と述べている。

 なお、今回の調査は、金融サービスや小売/消費財、製造業、医療/ライフサイエンス、行政機関の分野でフルタイム勤務する、従業員100人以上の企業の経営幹部が対象で、2414人から有効回答を得た。そのうち日本での有効回答者は249人だった。

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