不確実な時代を勝ち抜く鍵は「ITインフラの近代化」 OracleとUberのCEOが語るOracle CloudWorld 2023

Oracleは「Oracle CloudWorld 2023」を開催している。サフラ・キャッツCEOがUberのダラ・コスロシャヒCEOと対談し「不確実な時代を勝ち抜く方法」を語った。

» 2023年09月20日 15時00分 公開
[大島広嵩ITmedia]

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 Oracleは2023年9月18〜21日の4日間にわたり、同社の年次イベント「Oracle CloudWorld 2023」を米ラスベガスで開催している。基調講演ではサフラ・キャッツCEO(最高経営責任者)が、グローバル企業のリーダーと対談を行った。Oracleの顧客はどのように業界で活躍し、日々複雑な課題を解決しているのだろうか。

基調講演会場の様子(出典:筆者撮影、以下同)

不確実な時代を勝ち抜くOracleとUberの共闘

サフラ・キャッツ氏

 まず、キャッツ氏は「顧客の皆さんに焦点を当て、教え、学び、分かち合い、正しい技術と正しい考え方を示すことで、多くのことを学ぶ機会になる」と基調講演の目的を語った。

 登壇したのは、世界70カ国以上で展開されている配車サービス「Uber」や、45カ国以上で展開されている出前・宅配サービス「Uber Eats」を提供しているUberのCEO、ダラ・コスロシャヒ氏だ。最初にキャッツ氏は、コスロシャヒ氏が6年間CEOを務めてどのようにして事業を拡大したのかについてを聞いた。

ダラ・コスロシャヒ氏

 コスロシャヒ氏は「私たちが目標にしている年21%レベルの成長を続けるためには、毎年10億5千万回の移動をプラットフォームに追加するような革新的なプロダクトが必要だ」と答え、今まで提供してきた新サービスを振り返った。

 「エジプトで作ったサービスでは、一台のバスに20〜30人を乗せることができ、交通の混雑を緩和している。サンティアゴでは食料品の配達をし、ニューヨークやローマ、パリでもUberでタクシーを利用できるようになった。これらは全て新しいイノベーションであり、新しい製品になった」(コスロシャヒ氏)

 多くの新サービスを提供し続けるUberに対し、キャッツ氏は2010年以降の特に重要な決断は何かを聞いた。コスロシャヒ氏は「2010年頃や私が入社した時、Uberはプッシュアップして乗車するだけのサービスを提供しており、基本的には“交通機関”を提供する企業だった。そこで私たちは同じテクノロジー、同じエコシステム、同じプライスシステム、同じマッピングシステムなどを、食べ物や物の輸送にも拡張すると決めた。(コスロシャヒ氏が)6年前に入社した際、これら事業の当時の売上は全体の5%ほどだったが、現在は500億ドル規模のビジネスになった」と答えた。

 コスロシャヒ氏はサービスをより良いものにするため、実際に車を運転したり配達したりする経験をUberの開発に役立てているという。わざわざ自身が“前線”に出ることで学ぶことは多いと語る。

 「顧客の立場に立つことは、ビジネスを“真に”理解することにつながると考えている。(中略)今、私たちのプラットフォームには600万人のドライバーがおり、彼らもまた顧客だ。そのため、私を含む従業員には運転や配達を自分ですることを奨励してきた」(コスロシャヒ氏)

 続けて同氏は「もしサンフランシスコでTeslaの『モデルY』を手に入れた人がいたら、それは私かもしれません。どうか私に5つ星をつけてください」と会場の笑いを誘った。

 成長を続けるUberに対しキャッツ氏はどのように「インフラの近代化」をしているのかを聞いた。コスロシャヒ氏は、「成長と収益性のバランスを取ることは、正直なところ企業として学ぶべきスキルだ」と語り、ブラジルなどで展開している「Uber motor」を例に現在の対応策を挙げた。

 「Uber motorは私たちの予想を上回るスピードで成長している。新しい製品には『どれくらいのスピードでスケールするのか』『どれくらいのスピードで成長するか』を予測できないものがある。バックエンドとエコシステムを近代化し、『Oracle Cloud』と連携したことで、成長を予測することなく従来の方法とは違った形で拡張できるようになった」(コスロシャヒ氏)

 それに対しキャッツ氏は、「Uberは規模の経済を利用することで新製品の展開に成功している。必要なときに必要なだけ(インフラを)利用できる。(成長の予測だけでは)弾力性と規模の経済に勝つことは難しい」と指摘し、Uberの具体的な取り組みについて続けた。

 「Uberは“巨大な”競合相手と闘っているため、小売店のPOSシステムを直接Uberのドライバーのプラットフォームに接続するのはとても重要なことだ。製品をコスト効率よく顧客に届けるというスケールメリットの恩恵を受けられる」(キャッツ氏)

 長年にわたるOracleとUber取り組みを基に、Oracleは2023年9月19日(現地時間)、小売業者と消費者を結び付ける「Oracle Retail プラットフォーム」の新サービスである「Collect and Receive」を発表し、ラストマイル配送を強化および充実すると発表した。

 Oracle Retail Data Storeはクラウドで利用するため、小売業者はAPIで配達ソリューションである「Uber Direct」にリンクできる。この共同ソリューションにより、小売業者は在庫の再調整はもちろん、同日配送および定期配送オプションや注文の受け取り、最寄りの小売店または郵便局への返品など、より多くの選択肢を顧客に提供できるようになる。

 「600万人のドライバーが人や食べ物、食料品などを運んでいる。私たちはそのロジスティクス・エコシステムを切り離し、世界中の小売業者に提供する。これにより、一角の小売業者がAmazonに勝てるようになり、翌日配達だけでなく当日配達もできるようになった。(中略)すでに3500のブランドがUber Directを利用しており、例えばAppleは『iPhone』を注文するとその日のうちに届けてくれる。私たちは、同じ喜びを全ての小売業者に提供したい」(コスロシャヒ氏)

 最後にキャッツ氏は、「不確実な時代に利益を上げながら成長し、テクノロジーを使って新しい市場に進出する。Uber Directがその“ハブ”として取り上げられているのは、皆さんの多くがまさにこれらの問題を解決しようとしていることを知っているためだ。皆さんと提携できることにとても興奮している」とコスロシャヒ氏との対談を締めくくった。

不確実な時代に対するクラウドの有効性を語る両者

(取材協力:日本オラクル)

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