導入したけど誰も使ってくれません！ 重視すべき「チェンジマネジメント」とは（1/2 ページ）

新しいシステムの導入は人的要因で失敗することがある。新システムに適応するには少なからず負担がかかる。そこで重視すべきが「チェンジマネジメント」だ。本稿ではチェンジマネジメントに基づくシステム導入のコツを紹介する。

[Pam Baker，TechTarget]

　「チェンジマネジメントがERP導入の成功を左右する」という言葉があるのだが、これはエンタープライズ領域で最も軽視されているアドバイスかもしれない。

　ERPはビジネスに大きなメリットをもたらすが、それはさまざまな事業部門に広く採用された場合に限る。CIOをはじめとするリーダー層は従業員について特に重点的に考えなければならない。

　コンサルティング企業Protivitiの組織変革担当ディレクターであるキャシー・トペル氏は「特にこのクラウド時代においては、人的な問題はERP導入の成功を左右する最も重要な要因の一つと考えられる」と言う。

　実際、人的要因によってERP導入が失敗することがあまりに多い。

チェンジマネジメントとは何か？

　The Association of Change Management Professionals（チェンジマネジメント専門家協会）は、チェンジマネジメントを「期待される利益を実現するため、組織を組み替える体系的なアプローチ」と定義している。

　簡単に言えばチェンジマネジメントとは、新しいERPの導入のような、従業員がこれまでと違うやり方に移行する必要がある場合に、リーダー層がその準備やサポートをすることだ。

ERP導入におけるチェンジマネジメントの6つの鍵

　ここでは、チェンジマネジメントについて、専門家から聞いた6つのヒントを紹介しよう。

1．チェンジマネジメントを優先する

　チェンジマネジメントの中でもERP導入のような大規模なプロジェクトを効果的に実行するには、慎重かつ入念に実行する必要がある。

　Info-Tech Research Groupの調査ディレクターであるトラビス・ダンカン氏は、「（ERPの導入は）まさに変革であり、何の苦しみもなしにできることではない。優れた組織的なチェンジマネジメントがその苦しみを最小化してくれる」と述べ、「一般的なチェンジマネジメントより戦略的に計画、管理する必要のある相互依存性が数多くあり、判断ミスによって時間や財源、キャリアが犠牲になる可能性もある」と説明した。

　同社の調査によれば、そうした判断ミスの結果、半数以上（55％）のERPプロジェクトが予算超過に陥り、3分の2が期待される利益の半分以下しか実現していないという。

　しかし、たとえ全ての計画をうまく実行したとしても、従業員に敬遠されればERPプロジェクトは失敗に終わるだろう。

　ERP導入を専門にチェンジマネジメントやビジネス変革のコンサルティングを提供するDeepak Lalwani & Associatesのプリンシパル、ディーパク・ラルワニ氏は、「チェンジマネジメントは重要だ。エンタープライズシステムを導入しても、従業員がそれを活用し、その潜在能力を引き出すとは限らないからだ」として、「システムを使う人がいなければ、システムを導入する意味がないため、広く採用されることが極めて重要だ」と指摘した。

2．リーダー層の賛同を得る

　ビジネスリーダー層は最も重要な変革推進者として機能するため、新しいERPの導入に積極的に関与しなければならない。

　David Ogilvie Consultingのプリンシパル兼ERPコンサルタントであるデイビッド・オギルビー氏は「変革には主導者が必要だ。企業上層部の努力は変革の推進に大いに役立つ」として、「これが欠けていると、変化を起こすことははるかに難しくなり、脱線しやすくなる」と述べた。

　抵抗勢力への対処も必要だ。

　Clarkston Consultingのパートナー、サラ・ブロイド氏は次のように述べている。「プロジェクトが承認されたら、リーダー層たちの足並みはそろっていると思われがちだ。しかし私の経験からすると、リーダー層が改革の音頭をとる必要があるというのは組織の全員が理解していても、1人の反対者が組織の対応能力をむしばむこともある」

　最初から積極的な役割を果たすべきリーダー層は経営幹部だけではない。事業部門のリーダー層もそうだ。

　一般的に、ERPプロジェクトでは、担当者だけでなくその変化の影響を受けるユーザーも最初から参加すべきだ。

　「（ユーザーは）『自分に何の利益があるのか』と考えていることに気付いてほしい」とトペル氏は言う。