“広報部システム課”が大活躍するアニメ『こうしす!』から得られる教訓半径300メートルのIT(1/2 ページ)

皆さんは社内システムエンジニアの悲哀を描く技術系コメディーアニメ作品『こうしす!』をご存じでしょうか。今回はセキュリティ担当者であれば思わず「あるある……」とうなってしまうこのアニメから得られる教訓を紹介します。

» 2024年06月18日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

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 テレビでアニメ『こうしす!』が放送されるというので録画し、遅ればせながら拝見しました。『こうしす!』は自主制作アニメで、ジャンルはなんと「社内システムエンジニアの悲哀を描く技術系コメディー」、しかも“セキュリティ”が大変重要なテーマになっています。可愛らしいビジュアルとは大きく異なる骨太のセキュリティが語られる作品です。

アニメ『こうしす!』は社内システムエンジニアをテーマにしたアニメ作品だ(出典:『こうしす!』の公式サイト)

 この作品は、IT技術系コメディーを掲げるだけあり、オリジナルシリーズは全てがフリー素材(クリエイティブ・コモンズ表示 4.0 国際ライセンス)を使用している他、商用利用についても「EE(Enterprise Edition)版」が用意されており、本作をそのまま教育に活用できるという“日本でも数少ないオープンソースのアニメーション作品”と述べられています。

アニメだからこそここまで描ける“インシデント”の生々しさ

 筆者は以前から『こうしす!』についてタイトルは知っていたのですが、これまでなかなか観賞する機会に恵まれませんでした。先日開催されたアイティメディア主催セミナー「ITmedia Security Week 2024 春」で、本作の監督・脚本を手掛けた井二 かける氏が登壇した講演「AIブームとセキュリティ、アニメこうしす!監督が考える今と未来」を拝見し、いよいよ視聴欲が高まり、録画した作品を家族と一緒に視聴しました。セキュリティにあまり興味のない家族ものめり込んで見ていました。

 テレビ放映版は、公開されているシリーズの一部を編集したものです。このお話の舞台は兵庫県姫路市で、兵庫県姫路市と京都府をつなぐ架空の鉄道会社「京姫鉄道」の広報部システム課の社内エンジニアを主人公に、「ITmedia エンタープライズ」の読者であれば「あるある……」と思えるような、大小さまざまな情報セキュリティインシデントが降りかかる様子をアニメーションで表現しています。

 テレビ放映版では、コンピュータウイルスに感染するのは「自覚が足りないからだ」というトップの鶴の一声から起きる、精神論的セキュリティ対策のごく当たり前の帰結から始まり、鉄道という重要インフラでシステム停止が起こった際の社内のドタバタを描きます。もうこれだけで胃が痛くなる話ですが、本作ではそれがコメディータッチで描かれており、確かに入口としては入りやすい、セキュリティインシデントストーリーのように思えます。

 面白いのは、DDoSやIPアドレスなどはコミカルなシーンとともにそれなりに紹介される一方、画面をよく見ると「AD」や「WSUS」などの言葉がほぼ説明なしに登場するなど、ところどころマニアックな描写が登場する点です(ただし、ストーリーとしてはそれが分からなくても問題がなく、知っている人ならさらに深みが出るという演出が素晴らしいです)。

この1枚だけで何となくインシデントの深刻さが伝わるシーン(出典:『こうしす!』#3.3より)

 本作は1時間という尺の中に、境界型防御の限界やウイルス対策の課題、重要インフラにおける心構え、そして内部犯行によるサプライチェーン攻撃など、現代ITセキュリティにおけるキーワードがてんこ盛りになっています。

 これに加えて制作陣のこだわりなのか、舞台が鉄道会社だけあり“鉄”風味が非常に強く、興味深くあっという間に見終わってしまいました。見終わってみると、タイトルにもなっている「広報部システム課」という絶妙な立ち位置が、インシデント対応と対外対応において重要なことが身につまされます。絵柄からは想像が付かない、大変素晴らしいセキュリティコンテンツでした。

 『こうしす!』はアイティメディアのエンジニア向け媒体「@IT」でも“支線”が連載されておりますので、ぜひチェックを。

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