本作では、何よりも「精神論的セキュリティ対策を実施してはならない」という、重要なメッセージが述べられています。そして、クライマックスでは組織のメンバーの一人が、このようなことを語ります。これこそが、本作が最も伝えたいメッセージであり、セキュリティ対策の本質だと思います。
事故は必ず起きる。それが当然だ
責任事故ゼロインシデントゼロ これは目標に過ぎん
隠蔽(いんぺい)や言葉遊びで実現したゼロに意味はない
今一番大切なのは、お客さまを安全に送り届けることだ
こうしす! #3.3「セキュリティに完璧を求めるのは間違っているだろうか(Part3/4)」 4分58秒から抜粋)
セキュリティは、担当者だけが考えれば良いものではなく、組織のメンバー全員が考えるべき、重要な項目です。誰一人として取り残さず、誰一人として他人任せにしてはならず、全員が“ジブンゴト”として考えなくてはなりません。そのためには、インシデントのきっかけが誰であろうと、犯人捜しをするのではなく組織全体で対策を講じる必要があります。それを実現するためには、やはりまず経営層がセキュリティを理解し、組織全体にその重要性を浸透させなければなりません。
これまでも本コラムで、情報処理推進機構(IPA)などが提供している動画コンテンツなどを紹介していました。ただ、やはりどうしても私たちがあまり乗り気になれないタイプの“研修”になりがちで、真剣に見る人も少ないように思えます。今回の『こうしす!』の取り組みは、セキュリティを学ぶというよりも、自主制作のアニメーションを見ていたらセキュリティの学びもあった、というちょうどいいところをつかめるように思えます。特にセキュリティに興味がない家族も「え、これ実際に起きたらどうするの?」と、問題意識を持つようになったほどです。アニメの力はすごいですね。
本作は、YouTubeチャンネルで全編が公開されており、商用利用を含め活用が可能です。どの作品もすぐに観賞でき、身につまされるトピックがたくさんあります。
セキュリティを学ぶ最良の方法は自らが興味を持つことだと思っています。その入口として本作は、特に若手が学ぶには、ちょうど良いコンテンツでしょう。絵柄からシニアの方たちは拒否反応を示すかもしれませんが、内容を見るとかなり本気のセキュリティが語られているので、見ていただければ考え方も変わり「これをみんなに見せよう」と思うかもしれません。そうなっていただければ、組織のセキュリティ意識も変わるのではないでしょうか。
本作は第1話公開から2024年で10周年を迎えるとのことで、現在クラウドファンティングを募り、新たな展開も考えているようです。「昭和100年編の小説制作」という“不穏”な展開もあるようで、個人的にも興味を持っています。今後の展開にも期待しつつ、ぜひ、皆さんもこの作品をチェックしていただければと思います。
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