最も不憫な経営幹部? CISOの業務満足度の低下が企業に与えるダメージCybersecurity Dive

調査によると、CISOの仕事に対する満足度は、企業に深刻なダメージを与える可能性がある。満足度を上げるために企業がまずやるべきこととは何か。

» 2024年07月20日 08時00分 公開
[Sue PorembaCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 サイバーセキュリティの仕事には高い報酬が設定されている。特に専門家が管理職の階段を上るにつれて報酬は高くなる。CISO(最高情報セキュリティ責任者)の年収は一般に40万ドル〜100万ドルだ(注1)。

お金だけではセキュリティ担当者は幸せになれない

 しかし、お金で幸せややりがいを買うことは困難だ。コンサルティング組織であるIANSとArtico Searchの調査によると(注2)、2023年の時点でCISOの4人に3人が転職を考えていた。

 CISOは役職として存在しているが、必ずしも組織のリーダーとして受け入れられているわけではない。CISOはサイバーインシデントやコンプライアンス違反の責任を負わされる可能性があり、これが職場満足度の低下につながっている。

 報告書では「さらに、規制当局や検察当局はCISOに組織の透明性や不正行為に対する責任を問うようになっている」と指摘されている。

 データセキュリティサービスを提供するPathlockのピユーシュ・パンディ氏(CEO)は、電子メールで次のように述べた。

 「CISOは個人の責任と評判への影響に悩みながら、サイバーセキュリティリスクの重大性を把握できないリーダーシップチームを相手にしなければならない。こうした問題に日々のセキュリティ運営のプレッシャーが加わる。それに見合った報酬がなければモチベーションが欠如するだろう」(パンディ氏)

CISOの満足度低下が企業に与えるダメージ

 データ保護やプライバシーに関する規制要件が強化される中、CISOの肩にかかる重荷は燃え尽き症候群を引き起こしている。サイバーセキュリティ事業を営むCritical Startのジョージ・ジョーンズ氏(CISO)は、この問題を目の当たりにしている。

 「同じ役職の人たちがワークライフバランスやキャリア開発に苦心しているのを目の当たりにしている」(ジョーンズ氏)

 ジョーンズ氏はCISOの満足度の欠如が企業のセキュリティに重大な影響を与える可能性があると付け加えた。

  • 有効性の低下: CISOが不満を抱えると、サイバーセキュリティリスクを管理および軽減する役割に対するモチベーションが低下する可能性がある
  • 人材定着の問題: 不満を抱えたCISOは早期に退職するため、離職率が高くなり、組織が不安定になる。また、リーダーシップやプロセスに潜在的な空白が生じる可能性がある
  • 文化への影響: CISOは組織のセキュリティ文化を形成し、従業員のセキュリティ意識を高める重要な役割を果たしている。満足度の低さが、組織内で強固なセキュリティ文化を醸成する能力に影響を与える可能性がある
  • 脆弱(ぜいじゃく)性の増大: 満足感の欠如は、サイバーセキュリティの取り組みに割り当てられるリソースの不足にもつながり、組織はサイバー脅威や侵害に対してより脆弱になる可能性がある

CISOを腐らないために企業がやるべき優先事項

 CISOにリーダーとしての明確な役割がないことが仕事の満足度を低下させている。企業の取締役会にアクセスできるCISOは「仕事とセキュリティに関する要求の処理に対する満足度が高い」と報告している。

 IANSとArtico Searchの報告書によると、取締役会との接触がない場合、満足している人はわずか28%である。一方で、取締役会とのやりとりがあれば「満足している」とする人の割合は57%に上る。

 リーダーシップの会議において、CISOとサイバーセキュリティが見過ごされている場合、組織はサイバーセキュリティのベストプラクティスを採用しにくくなり、企業文化にサイバーセキュリティを意味のある形で統合するのに苦労することになる。

 企業の優先事項は、セキュリティとビジネスリーダーの間の障壁を取り除くことだ。

 これは、全ての取締役会において、CISOに席を与え、そこでサイバーセキュリティの取り組みについて積極的かつ定期的に議論することから始まる。また、サイバーセキュリティのベストプラクティスの積極的な実践、十分な資金を投じたサイバーセキュリティチームとプログラムは決して安価なものではないという事実を組織は受け入れなければならない。それらは、今後も決して安くならない。

 「侵害後の事後対応よりも先行投資の方が費用対効果が高いことを、取締役会レベルの意思決定者が理解するのが早ければ早いほど、サイバーセキュリティへの適切な投資と資金調達の面で顕著な進展が見られるだろう」(パンディ氏)

 CISOの見通しは、進化するサイバーセキュリティの脅威や組織の優先事項、規制の変更、職務の課題に対処するための対策の有効性などの要因によって左右される可能性が高い。

 「ただ将来の予測は難しく、仕事量やストレスレベルが減ることはない。そのため、今後もストレスが増加する可能性がある」(ジョーンズ氏)

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