Oracleは「クラウド企業」になれるか 収益構造の変化を読むCIO Dive

Oracleのインフラ部門の収益が初めてライセンス収益を超えた。エンタープライズITのトレンドがクラウドやAI採用にシフトする中、ラリー・エリソン氏はOracleをどんな企業にしようとしているのだろうか。

» 2024年07月31日 16時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 Oracleは2024年6月11日、マルチクラウドへの取り組みの強化とデータ転送料金廃止に向けてGoogle Cloudとの統合を開始し、OpenAIにコンピューティング容量を提供するためにMicrosoftとの既存の提携を拡大したことを発表した(注1)(注2)。

「ライセンスサポートで稼ぐ」から「AIニーズを支える」へ

 Google Cloudは「Oracle Cloud」の11のサービス対応地域で「Cross-Cloud Interconnect」のソリューションを公開し、2024年後半にはクラウドデータベース統合サービスを展開する予定だと両社は述べている。

 同様の動きとして、Microsoftは2023年に「Microsoft Azure」(以下、Azure)のエコシステムにOracleのデータベースサーバを導入したという(注3)。

 「オンプレミスのデータベースがクラウドに移行するのに伴い、『Oracle Cloud Infrastructure』(以下、OCI)に直接移行したり、OracleのデータベースがAzureやGoogle Cloud上で利用されたりすることで、これらのクラウドデータベースサービスがOCIや戦略的SaaSと並んで収益成長の第3の柱になると期待している」と、Oracleのサフラ・キャッツ氏(CEO)は2024年6月11日に開かれた2024年第4四半期の決算説明会で語った(注4)。

 同社がソフトウェアからクラウドへシフトした結果、インフラサービス事業の収益がライセンスサポート収入を初めて上回り、2024年初めに転換点を迎えた(注5)。

 この傾向は続いており、2024年5月31日までの3カ月間、同社のクラウドインフラの売上高は前年同期比42%増の20億ドルに達したという。2024年度のクラウド総売上高は2023年度から25%増加し、198億ドルに成長したと同社は2024年6月11日に報告した(注6)。

 「2024年第4四半期の結果は、当社の高成長クラウド事業が完全に台頭したことを意味する。今や顧客との会話は完全にクラウドサービスに集中している」(キャッツ氏)

 クラウドの後発組であり、ハイパースケーラーとしても新参者でもあるOracleは、容量の拡大を急いでいる。ラリー・エリソン氏(会長兼CTO《最高技術責任者》)は、2024年はデータセンターに100億ドルを投資することを同年3月の決算説明会で約束した。

 現在、Oracleのアクティブなクラウド対応地域は76に及ぶ。キャッツ氏によると、現在稼働中の47リージョンに加え、19のパブリッククラウドリージョンを構築中だという。

AIワークロードの拡大が成長のカギに

 AIワークロードの獲得は、Oracleのデータセンター戦略の柱の一つだ。

 エリソン氏によると、同社は2024年第4四半期に総額120億ドルを超える30以上のAI関連の契約を結び、年間では170億ドル以上になるという。OpenAIは追加の容量を求めてOCIを利用する大手顧客の一つだ。

 「OCIはAzureのプラットフォームを拡張し、OpenAIの継続的な拡張を可能にする」とサム・アルトマン氏(CEO)はプレスリリースで述べた。

 その他のAI開発企業であるNvidiaやxAI、Oracleが買収したCohereの3社はOracleのクラウドでワークロードを運用しているとエリソン氏は述べた。

 ハイパースケーラーとのパートナーシップを通じてマルチクラウド統合の障壁を取り除くことも、Oracleの計画の中心だ。「全てのクラウドが相互接続されるようになることが非常に重要だ」とエリソン氏はマルチクラウドの将来像について語った。

 「クラウドからクラウドへのデータ移動にかかる料金を廃止し、全てのクラウドが相互接続されることで、顧客は好きなクラウドから好きなサービスを選び、使いたいものを組み合わせて簡単かつシームレスに利用できるようになる」(エリソン氏)

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