ファイル転送サービス「MOVEit Transfer」の脆弱性が悪用されたことに関連して、Progress Softwareの支出が高騰している。同社は、訴訟や規制当局による監視、政府の調査に直面している。
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ファイル転送サービス「MOVEit Transfer」の顧客を狙ったゼロデイ攻撃から1年が経過し(注1)、同サービスを運営するProgress Softwareの法的責任が拡大している。
Progress Softwareは2024年7月10日(現地時間、以下同)に米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で「当社は少なくとも144件の集団訴訟の当事者であり(注2)、それらはマサチューセッツ州連邦地方裁判所における保険企業からの代位請求と統合されている」と述べた。
2023年の戦没者追悼記念日の週末に顧客のMOVEit Transferの環境が攻撃されたことを原因として、Progress Softwareに発生する可能性のある影響や費用は、今後さらに拡大する可能性がある。
2023年末までに、ランサムウェアグループ「Clop」は2700以上の組織を危険にさらし、MOVEit Transferの環境で保持されていた9300万以上の個人記録を露出した。
2024年5月31日時点で、Progress Softwareに対して提起された集団訴訟の数は、同年2月29日に終了した前四半期末の127件から増加した(注3)。Progress Softwareは、2023年11月30日に終了した2023年度の末の時点で58件の集団訴訟を報告していた(注4)。
また、マサチューセッツ州に本社を置くProgress Softwareは、38の顧客から書簡を受け取っており、前四半期末の35件から増加している。それらの書簡の一部には、補償を求める意向が記載されているようだ。
Progress Softwareが法的判断や和解、罰金の可能性に備えているが、2023年における最も重大なサイバー攻撃となった同インシデントへの継続的な対応に関連する費用は増加し続けている。
MOVEit Transferの脆弱(ぜいじゃく)性に関連する費用は、Progress Softwareが第1四半期に想定していた100万ドルから、直近の四半期では300万ドルに増加している。これらの費用には、同社が6カ月間に認識した190万ドルの保険金は含まれていない。
Progress Softwareは政府および規制当局による調査にも対応している。SECは2023年10月に正式な調査を通知した。また、ワシントン D.C.およびニュージャージー州の検事総長から受け取った召喚状に関連する調査も継続中である。
Progress Softwareのヨゲシュ・グプタ氏(社長兼CEO)は、2024年6月25日の決算説明会で次のように述べた。
「私たちは、透明性を持って規制当局に協力している。なぜならば、MOVEit Transferの環境に対する攻撃に対して、当社は顧客の利益を第一に考え、適切に行動したと確信しているためだ」
英国やオーストラリア、スペインのデータプライバシー規制当局による調査は、特に措置が取られずに終了した。
また、Progress Softwareは、2023年12月に連邦取引委員会(FTC)から保存通知を受け取ったが、情報提供の要求や正式な調査が進行中であることを示す連絡は受け取っていない。
Progress Softwareは「今後の四半期においても、MOVEit Transferの脆弱性に関連する調査費用や法的費用、専門サービスを利用する費用が発生する見込みだ」と述べた。
複数の訴訟や調査が進行中であるため、Progress SoftwareはSECに提出した書類の中で「発生し得る損失の範囲を現時点で合理的に見積もることはできない」と述べている。
(注1)Progress Software’s MOVEit meltdown: uncovering the fallout(Cybersecurity Dive)
(注2)PROGRESS SOFTWARE CORPORATION(SEC)
(注3)PROGRESS SOFTWARE CORPORATION(Investors.Progress.com)
(注4)Progress Software’s financial hit from MOVEit cuts deeper(Cybersecurity Dive)
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