損益計算書の読み方 主要な勘定科目と計上基準を基礎から解説

損益計算書(P&L)は、一定期間における企業の売上高や費用、純損益を示す財務報告書だ。本記事では、損益計算書の読み方や主要な勘定科目、2つの計上基準を紹介する。

» 2024年09月12日 07時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

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 損益計算書(P&L)は、営業損益計算書とも呼ばれ、一定期間における企業の売上高や費用、純損益を示す財務報告書だ。期間は任意に設定できるが、通常は月単位、四半期単位、年単位で作成される。暦年または会計年度に基づく場合もある。

 本記事では、損益計算書の読み方や主要な勘定科目、2つの計上基準を紹介する。損益計算書の基本を確認しよう。

財務報告のプロセスの3つの主要な計算書

 損益計算書は、財務報告のプロセスに含まれる3つの主要な計算書のうちの一つで、他の2つは貸借対照表とキャッシュフロー計算書だ。貸借対照表は、特定の時点における組織の資産や負債、資本を示す。損益計算書は、特定の期間における組織の収益に焦点を当てている。キャッシュフロー計算書は、これら2つの計算書とは異なり、特定の期間にどれだけの現金が組織に出入りしたかを示す。

 組織は、2002年のSarbanes-Oxley法などの米国証券取引委員会(SEC)の規則を順守するため、またはその他の基準や規制要件を満たすために、損益計算書を作成することが多い。事業主や経営者も、損益計算書や他の財務情報を活用して、組織の業績を把握し、業務改善が必要な箇所を特定する。投資家や融資担当者も、組織の業績を確認するために損益計算書や他の財務書類を参照する。

損益計算書の読み方

 損益計算書は、収益と費用を比較して、報告期間中の組織全体の損益を算出する。最も基本的な勘定科目として、組織の損益計算書には以下のものが含まれる。

  • 売上高: 組織が主要な製品またはサービスから得た収入の総額だ。収入は、製品またはサービスごとに区分される場合もある
  • 売上総利益: 売上高から売上原価(COGS)を差し引いたものだ。売上原価には、企業が製品やサービスを販売する際に発生する費用が含まれる。売上原価には原材料費、包装費、輸送費などが含まれる。この金額を売上高から差し引く
  • 営業費用: これには地代家賃や水道光熱費、保険料、広告宣伝費をはじめとして、製品やサービスの提供に直接関係しない費用が含まれる
  • 純損益: これは、粗利益から全ての費用を差し引いた後に組織が示せる利益または損失の金額だ。この金額はしばしば最終利益と呼ばれる

 損益計算書を作成する際、組織は、総収益や純売上、粗利率、純収益など、許容される範囲で代わりのカテゴリー名称を使用することがある。特に上場企業が発行する場合、損益計算書には他の情報が含まれることも多い。例えば、多くの損益計算書には営業利益の項目があり、利息や税金などの費用を考慮する前の組織の利益が記載されている。損益計算書には、利息や税金など、その他の収入源や支出源も記載されている場合がある。

 図1は、Appleの損益計算書のサンプルだ。これは、Appleの2023年会計年度第1四半期の連結財務諸表の一部だ。この明細書には、売上高(総収益)、売上総利益率、営業費用、営業利益、純利益(最終利益)などのカテゴリーが含まれていることに注目してほしい。

 組織が損益計算書を作成する際は通常、2つの計上基準のいずれかを使用する。

  • 現金主義: 収入と支出は、製品やサービスの引き渡しや受け取りがされた時点ではなく、支払われた時点で計上される。例えば、代金を受け取るまで収入は売上高に計上されない。費用についても同様だ。サービスや材料に関する費用は、それらに対する支払いが発生するまで計上されない。現金主義は、中小企業や個人において使われることが多い
  • 発生主義: 収入と支出は、支払いがされた時点ではなく、取引が発生した時点で計上される。企業は、組織が実際に支払いを受けた時期に関係なく、製品を顧客に引き渡した時点で収入や支出を計上する。同様に、原材料を受け取った場合、翌月に支払われるとしても、それらは費用として計上される。上場企業は、発生主義を採用する傾向があり、一般に公正妥当と認められた会計原則(GAAP)や会計基準においても、発生主義が支持されている

 企業は、財務情報を追跡して報告するためにさまざまなリソースを使用できる。自動化された財務報告プロセスが推奨され、組織は厳格なデータガバナンスを維持しなければならない。これは多くの場合、企業資源計画(ERP)システムの財務モジュールや、専用の財務報告ソフトウェアを導入することで実現できる。

 GAAPと国際財務報告基準(IFRS)の違いなどの会計上の課題をどのように解決すべきか探ろう。クラウド型のERPを活用することで財務変革がどのように迅速化するのか、金融機関がAIを使ってコンプライアンスをどのように効率化するのか確認してほしい。

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