「メインフレームは決して終わらない」 クラウド全盛期でも選ばれ続ける理由CIO Dive

AIの普及によってシステムをクラウドへ移行する企業が増えているが、メインフレームの需要はむしろ拡大傾向にある。クラウドよりもメインフレームの方がコストパフォーマンスが高いケースもあるため、企業は慎重にインフラを選択する必要があるだろう。

» 2024年11月08日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 2024年10月3日に発表されたInformation Services Group(以下、ISG)の報告書によると、企業はワークロードをクラウドに移行する一方で、メインフレームの容量も拡大しているという。

 同調査によると、メインフレームを使用している企業の約3分の1がプロセッサやストレージのアップグレードを計画しており、約6分の1が今後3年以内にメインフレームを新規購入する意向だという。

クラウド化が進んでもメインフレームの需要は減らず

 この調査は、Forbesが発表する世界の主要企業「Global 2000」における、オンプレミスのメインフレームおよびメインフレーム管理サービスを担当するCIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、その他の技術幹部200人を対象に実施された(注1)。

 ISGの上級アナリストであるアレックス・バッカー氏は、「パブリッククラウドの導入は増え続けているが、企業のIT環境においてメインフレームが完全に置き換えられることはないだろう。実際、メインフレームのコンピュートとストレージの需要は、特にMFaaS(MainFrame as a Service)という形で増加すると予想される」と述べている。

 DX戦略が成熟するにつれ、企業はクラウドのコストとセキュリティに対する懸念などから、メインフレームを再評価している。メインフレームを保有する企業はワークロードを選択的にクラウドに移行する一方、オンプレミスのシステムを強化し、必要に応じて柔軟に機能を利用できるサービス型のメインフレーム機能を追加し続けている。

 「IBM Z Systems」シリーズはメインフレームユーザーの90%以上の企業で選ばれており、回答者の59%が2022年に導入される「IBM z16」シリーズを使用していることが明らかになった(注2)。IBMとAccenture PLCは、MFaaSで最も利用の多いベンダーだ。

 報告書によると、モダナイゼーションの推進により、IT幹部は新技術への投資と既存システムの保守・アップグレードの必要性を両立しようとしている。回答者の60%近くが過去3年間でメインフレームアプリケーションをクラウドに移行したと回答し、40%以上がMFaaSソリューションを選択した。

 ISGのマイケル・ドーナン氏(主席アナリスト)は、「企業がレガシーなインフラを廃止できないことがメインフレームの需要増の一因となっており、多くの場合、これはAIの導入など企業内の相反する要求によるものだ」と述べた。

 「競合する優先事項とメインフレームの課題によって、企業は既存の投資から最大限の価値を引き出すためにサードパーティーのモダナイゼーションサービスを利用するようになるだろう」(ドーナン氏)

 2024年9月に発表されたKyndryl Holdingsの調査によると、企業はクラウドで生成AIのユースケースを試験的に導入しているが、その多くはオンプレミスでワークロードを実行する計画を立てている(注3)。IBMは2025年、計算負荷の多い大規模言語モデルツールをサポートするためにメインフレームと「IBM LinuxONE」の顧客向けに大容量プロセッサを導入する予定だ。

 2024年6月30日までの3カ月間で、IBMのメインフレームの売上高は前年同期比6%増となった(注4)。ジェームズ・カバナフ氏(シニアバイスプレジデント兼CFO《最高財務責任者》)は、2024年7月の決算説明会でIBM z16が予想を上回る成果を上げたと述べた。

 同月、バッカー氏は「CIO Dive」に対し、「メインフレームの見通しは、ある意味でクラウドよりも明るい」と語っている。

 「メインフレームは成長を続けており、企業がそれに投資して活用しようとする計画は見受けられるが、メインフレームを廃止しようとする企業は限られている。一方、クラウドの話題はコスト最適化に関するものばかりだ」(バッカー氏)

 IT幹部は、一部のアプリケーションはオンプレミスのインフラに適しており、メインフレームで運用した方がコストがかからないことをクラウドの経験を通して学んでいる。

 「減価償却が終わったハードウェア上で稼働しており拡張性のないワークロードの中には、クラウドである必要がないものもたくさんある。データセンターが比較的新しく、1980年代の古い冷媒のエアコンを使っていなければ、これらのワークロードを非常に安価に実行できる」(バッカー氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR