2024年9月に公表された新リース会計基準によってリース会計処理の前提が大きく変わります。新リース基準で何が変わるのか、そして企業はどんな対応が必要なのかについて解説します。
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2024年の9月13日に「新リース会計基準」の確定版が発表されました。本連載では、確定した最新の基準にのっとって「何が変わるのか」の基礎から紹介した上で、Excelで対応できる/できない企業の特徴や、システム検討の考え方についても解説していきます。
2024年9月に公表された新リース会計基準(以下、新リース基準)。原則全てのリース契約についてオンバランス計上が義務付けられるだけでなく、定義や期間などの根幹部分を含め、リース会計処理の前提が大きく変わります。今回は、新リース基準で何が変わるのか、そして企業はどんな対応が必要なのかについて解説します。
「リース」というと、カーリースや複合機のリースなどが真っ先に頭に浮かぶと思います。これまでリース会計の対象として処理してきたのは、このような「リース」と名のつく取引がメインでした。
一方で新リース基準では、「お金を払って何かを使う権利(=使用権)」に該当するものは全てがリース会計の対象となります。1番影響が大きいのは不動産賃借契約で、オフィスビルの賃貸はもちろん、小売店のテナントや借上社宅なども対象となります。さらに、自社が自由に使えるプライベートクラウドや、貸し広告看板まで対象となるケースもあるため、業種や事業の特性に応じて契約の洗い出しを漏れなく進める必要があります。
これまでのリース会計では、リース取引の中でも貸借対照表に計上(オンバランス)しなければいけないものは限られていました。「中途解約できない」「フルペイアウト」などの条件で契約を区分し、実質的に購入と変わらないもののみを「ファイナンスリース」としてオンバランス対象にしていたのです。
一方で、新リース会計基準では、短期・少額を除き原則全てのリース契約がオンバランス対象となり、資産と負債を計上する必要が生じます。
特に不動産賃借契約などはオンバランスになるケースが非常に多く、店舗の多い小売業やサービス業、一括借上で事業展開する不動産業などでは、「債務額が10倍になる」といった顕著な影響が出たり、ROA(総資産利益率)などの財務指標の変化も予測されます。専用ツールを利用することで早めに影響額の概算を算出し、影響度に応じた対策を進めることが重要です。
オンバランス対象が増加する結果、経理部門の負担増が懸念されます。例えばオンバランスに伴い、これまでは支払だけ処理すればよかった不動産契約の仕訳は大きく増加します。契約締結に伴う資産と負債の計上、支払時の利息の考慮、月々の減価償却、満了時の除却処理などが求められるため、システム対応などを含め対応方針を考える必要があります。
さらに、リース期間についての考え方も変わることで、経理が判断しなければいけない内容も増えていきます。これまでは契約期間=リース期間でしたが、新リース会計では「合理的に確実な期間」を見積ることになりました。
賃借不動産を例に取ると、契約期間は2年だとしても、実質5年や10年入居することが明らかな場合は、その年数分での計上が求められます。どのようなケースで何年と計上するかをルール化し、契約の実態に合わせた判断が必要になるため、経理部門の負荷が大きく増加すると言えます。
こうしたさまざまな実務的な影響に対して、システムで対応するのか、「Microsoft Excel」(以下、Excel)で対応するのか早めに方針を判断する必要があります。
数件程度のリース契約ならExcelでも問題ありませんが、契約数が多い場合はシステムを導入しなかったことで実務が限界になるケースもあります。次回は、Excelでの対応にはどういったな限界があるのか、システムの導入がなぜ必要なのかなどについて説明します。
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