AIエージェント市場は急拡大し、ベンダー各社は次々と新機能を投入している。一方、企業側はガバナンスやシステム統合の課題から慎重な姿勢を崩さない。市場の熱狂と現場の冷静な判断、その温度差の背景と今後の展望を探る。
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Snowflakeは2025年2月12日、データの統合と検索、処理を簡素化するサービスとして、AIエージェントの提供を開始した(注1)。
同社の「Cortex Agent」はユーザーのリクエストを解析して非構造化データと構造化データを分析したり、アプリケーション内で任意のステップを実行したりできる。ユーザーはエージェントのパフォーマンスを理解してメトリクスを追跡することで挙動を改善できる。
現在パブリックプレビューで利用できるこのエージェントは、Anthropicの「Claude 3.5 Sonnet」で動作する。主なユースケースとしては、会計年度の開始日の特定や社内の命名規則の説明、SQL生成時のキーテーブルの優先順位付けなどが挙げられる。ユーザーはエージェント内のSQL翻訳ツール「Cortex Analyst」をビジネスニーズに合わせてカスタマイズできる。
企業はAIエージェントによる生産性向上を期待しているが、テックリーダーは実際の機能性を誇張するような誇大広告を警戒している。
Forrester Researchの市場分析によると、最新のAIトレンドに対するベンダーの注目度は顕著であり、約400のプロバイダーが新しいプラットフォームや関連サービスを提供している。
クラウドプロバイダー大手のAmazon Web Services、Microsoft、Google Cloudはここ数カ月でエージェントの導入促進とガバナンス強化、開発を容易にする機能を多数追加した。さらにSAPやWorkday、ServiceNow、Slack Technologies、Salesforce、そして今回のSnowflakeも参入障壁を下げることでAIエージェントの普及を促進しようとしている(注2)。
企業の関心はあるものの、ほとんどのビジネス意思決定者はまだ導入準備の段階にとどまっている。Tray.ioの調査によると、IT担当者の10人中9人近くがAIエージェントを導入する前に組織の技術スタックをアップグレードする必要があることを認めている(注3)。
ガバナンスとセキュリティプロセスの強化も最重要課題だ。Gartnerは今後3年間でAIエージェントの悪用が急増すると予測しており、ビジネスを守るための投資の必要性を強調している(注4)。
すでにAIエージェントを活用している企業もある(注5)。Accentureでは約600人のマーケティング担当者がこの技術を活用してキャンペーンの立案やその他の作業を支援しており、コンテンツ制作エージェントを試験的に導入している。トヨタ自動車も早期に導入した企業の1つで、現在9つほどのエージェントがナレッジの蓄積と共有を支援している(注6)。
(注1)Your Enterprise Data Needs an Agent(Snowflake)
(注2)ServiceNow adds agentic capabilities, thousands of pre-built AI agents(CIO Dive)
(注3)Security, data challenges hinder agentic AI adoption(CIO Dive)
(注4)4 ways AI could impact employees, workflows: Gartner(CIO Dive)
(注5)AI agents spark interest, concern for businesses in 2025(CIO Dive)
(注6)Microsoft readies Copilot Studio for agentic AI(CIO Dive)
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