ビジネス用のAIプラットフォームを開発するWriterの調査によると、経営幹部の約3分の2が、AIによって社内で分裂が起きていると回答したという。生成AI導入に関連して企業の中で何が起こっているのだろうか。
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ビジネス用AIプラットフォームを開発するWriterが2025年3月15日に発表した報告書によると(注1)、経営幹部の多くは「生成AIの導入が社内に対立や摩擦を生んでいる」と回答した。同社は調査企業であるWorkplace Intelligenceと提携し、800人の経営幹部と800人の従業員を対象に調査を行った。
ビジネスリーダーの約3分の2は「生成AIがITチームと他の事業部門との間、また経営者と従業員との間に分裂をもたらしている」と答えた。3人に1人以上の経営者が、これまでの生成AIの導入を「大きな失望」と表現している。
報告書によると、従業員の中には自社のAI戦略を「妨害」と認める人物がおり、その中の41%はZ世代とミレニアル世代の従業員だった。平均して3人に1人の従業員がAIツールの使用を拒否したり、AIに関連した研修の参加を見送るなどの形で反対の意思を示している。
生成AIの導入は企業に混乱をもたらしている。
経営幹部は導入に向けた最善の道筋を見つけ、何を優先すべきかを決定しなければならない(注2)。従業員は雇用の安定に対する不安や(注3)、必要なスキルアップに関する心配と闘ってきた(注4)。
場合によっては、このような変化が対立を引き起こした。
Writerのケビン・チャン氏(最高戦略責任者)は、電子メールで次のように述べた。
「これらの課題はささいなものではなく、変更に関する強固な管理やベンダーの品質向上、IT部門と他部門との連携の強化が求められる。内部の不一致や権力闘争は特に影響が大きく、生成AIの導入プロセスをさらに複雑にする可能性がある」
大手会計事務所であるEYが2024年12月に発表した報告書によると、AIの急激な発展により、ビジネスリーダーたちは圧倒され疲弊しているという(注5)。シニアリーダーの半数以上が「技術の急成長の中で失敗を感じている」と回答した。
テクノロジーリーダーたちは、発生した問題に対処することなくAIプロジェクトを進めなければならないというプレッシャーに直面しており(注6)、理想と現実との乖離(かいり)を強調している。
従業員も生成AIに依存することに不安を抱いている(注7)。ソフトウェア企業であるPegasystemsの報告によると、3人に1人以上の従業員が「AIが生成した作業は自分たちの作業と同等ではない」と述べている。
「従業員は自分たちが取り残されているか、または、自分たちの懸念が受け止められていないと感じている可能性がある。このようなサポートの不足は実際に影響を及ぼすものだ。変化に抵抗する人々やAIの能力に脅威を感じる人々が反発し、企業文化が分断されていく」(チャン氏)
AIに対する疲労や不安があるにもかかわらず、企業はその技術に価値を見いだそうとしている。困難や障害が続く中、ほぼ全ての企業が2025年にAIへの投資を拡大すると回答した(注8)。
「これらの課題を克服する鍵は連携だ。ITおよびビジネスリーダーが連携して構築に当たることで、AIに関する取り組みが技術的に正しいだけでなく、より広いビジネス目標に沿ったものとなる」
(注1)New data on navigating the AI adoption gap(WRITER)
(注2)2 years after ChatGPT’s release, CIOs are more skeptical of generative AI(CIO Dive)
(注3)Frontline workers split on AI’s workplace impact: BCG(CIO Dive)
(注4)Employers worry training won’t keep pace with tech advancement(CIO Dive)
(注5)AI fatigue, leader burnout stifle enterprise enthusiasm(CIO Dive)
(注6)AI project failure rates are on the rise: report(CIO Dive)
(注7)Workers worry over AI agent accuracy, quality(CIO Dive)
(注8)Stuck in the pilot phase: Enterprises grapple with generative AI ROI(CIO Dive)
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