ある調査によると、過去12カ月間で世界の消費者の80%が何らかのオンラインサービスの利用を中止していた。銀行や医療サービスといった規制の厳しい業界も含めて消費者の信頼が低下している理由とは。
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世界中でデータ保護サービスを提供するThales Groupが2025年3月18日(現地時間、以下同)に発表した報告書によると、世界の消費者の80%以上が、過去12カ月の間に何らかのオンラインサービスの利用を中止したという。
この調査では、世界的にデジタルサービスに対する消費者の信頼が低下していたり(注1)、横ばいの状態にとどまったりしていることが分かった。評価対象となった13の業界のうち、銀行やヘルスケアのような規制の厳しい業界を含む大半の業界で1年前と比べて信頼度が低下しており、信頼度が50%以上に達した業種は1つもなかった。
なぜこの1年間でデジタルサービスはこれほどまでに信頼を失ったのか。
同レポートでは、次のように指摘されている。
「サービスを利用するためにデータの提供を義務付ける傾向が強まっている。透明性の欠如や消費者にかかる負担の重さが信頼を損なっている」
同調査によると、過去1年間に個人情報の漏えいに関する通知を受けた消費者は約5人に1人という割合だった。こうした状況の中で信頼の低下が起きているようだ。
非営利の個人データ保護団体であるPrivacy Rights Clearinghouseによると、2024年に米国で発生したデータ漏えい事件は合計3158件で(注2)、2023年とほぼ同水準だった。同団体の報告書によると、2024年に発行されたデータ侵害通知の件数は2023年と比べて211%増加した。この増加の主な原因は、1件につき1億件以上通知された大規模な侵害事件が5件発生したためだった。
最大級の事例の一つが、医療サービスを提供するUnitedHealthのグループ企業であるChange Healthcareが2025年1月に受けたサイバーアタックだ(注3)。この攻撃により、約1億9000万人分のデータが侵害された可能性があると発表されている。これは米国の人口の半数を超える規模だ。
また、2024年に発生した別のデータ侵害事件では、あるサイバー犯罪グループがチケット販売会社Ticketmasterの顧客5億人以上の個人情報を盗んだと主張している(注4)。
Thales Groupの調査によると、個人データ保護に関して消費者から最も信頼されているのは銀行業界であり、信頼度は44%だった。
多くの業界が信頼を失う中で、信頼度が改善された唯一の業界が政府だ。世界の消費者の42%が「(政府機関を)信頼して個人データを提供できる」と回答しており、2023年の37%から5ポイント上昇した。
なお同調査は、Thales Groupが14カ国に在住する1万4000人以上の消費者を対象にブランドやサービスとのオンライン上の関係やプライバシーに対する期待、ブランドがどのようにして信頼を得ることができるかを把握することを目的に実施された。
(注1)Global Trust in Digital Services Declines, finds Thales(THALES)
(注2)Identity Theft Resource Center’s 2024 Annual Data Breach Report Reveals Near-Record Number of Compromises and Victim Notices(ITRC)
(注3)UnitedHealth hikes number of Change cyberattack breach victims to 190 million(Healthcare Dive)
(注4)Live Nation confirms Ticketmaster data breach after proposed class action(CFO Dive)
(初出)Data privacy fears erode consumer trust in digital services
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