2028年、単純作業者の9割がAIに代替? 「AI時代に職を守る」戦略とは

Gartnerは、AIやヒューマノイドの台頭によって、作業中心の職務に従事する人の90%が2028年までに業務を奪われるリスクがあると予測する。この転換期に、従業員はどう職を守り、企業はどう従業員と共に成長すべきか。

» 2025年05月19日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 ガートナージャパン(以下、Gartner)は2025年5月15日、テクノロジー人材の将来に関する最新の展望を発表した。

 Gartnerはヒューマノイドや汎用(はんよう)人工知能(AGI)といった先進技術の現実を背景に、「歴史的な転換期にある」との見方を示し、「作業中心の職務に従事する人の90%が、2028年までに業務を奪われるリスクがある」と予測した。実際、コールセンターでのAIへの置き換えや、ヒューマノイドの市場投入が既に始まっている。

 この転換期に、従業員はどう職を守り、企業はどう従業員と共に成長すべきか。

「AI時代に職を守る」ために企業と個人が取るべき行動

 先進技術がビジネスに取り込まれつつある中でも、紙の書類や印鑑、手作業による旧来の仕事の進め方を維持している個人や組織は依然として存在する。一方で、生成AIやAIエージェントなどの新しい技術を取り入れて業務プロセスを変革しようとする動きも広がっており、こうした動きに対応しない場合、競争上のリスクを伴う可能性がある。

 Gartnerによると、コールセンターでは人間のオペレーターからAIへの置き換えが既に進み始めている。自動車業界を中心に米国やドイツ、中国、韓国ではヒューマノイドの市場投入が始まっている。また、AIとの共生を前提とした新たなビジネススタイルを模索する企業も増えており、今後は多様なエージェントと連携し、ダイナミックな環境下でタスクを遂行する働き方が求められるようになると予想している。

 Gartnerのアナリストである亦賀忠明氏(ディスティングイッシュト バイス プレジデント)は「作業中心の職務に従事する人の90%が、2028年までにAIアシスタントやヒューマノイドによって業務を奪われるリスクに直面する」と予測した。

 また同氏はAIの進化について、「AIは精度が向上し、文脈を理解してより適切な対応が可能になることで、進化しない人間の在り方が問われるようになる」と述べている。現在はAIによる誤回答(ハルシネーション)が課題とされているが、今後はAI以上に、人間による誤認や誤情報の発信(人間のハルシネーション)がより深刻な問題となる可能性があるという。

 加えてGartnerは、「2028年までに日本企業の従業員の約70%が、企業や組織のためではなく、自身の生存戦略として新たな能力を身につけるようになる」との見解を示している。終身雇用の仕組みが崩壊する中、若手人材を中心に短期間で転職を検討する傾向が強まっており、自らのキャリアを守るために新しいスキルを習得しようとする傾向が広がっているためだ。

 このような背景から、資格取得を支援するオンライン講座やAIによる語学学習サービスなど、自費で学習できる手段の普及が進んでいる。今後は、高いケイパビリティを持つ人材の転職が増加し、人材獲得競争が激化すると見られている。これに伴い、企業は給与や待遇などの条件面を含めた雇用の在り方を見直す必要に迫られる。

 企業には従業員の活躍を促進する環境を整えることが求められており、People Centric(人中心)を原則としたマインドセットと具体的施策を人材戦略の柱とする必要がある。部門長や管理職は、「学習する組織」を目指し、不要な業務を削減して新たな学びの時間を確保するなど、業務プロセスを見直すことが重要だとしている。また個々も自らのタレント価値と能力の向上に主体的に取り組む姿勢が求められている。

 最後に亦賀氏は、「全ての人は、時代がかつてない転換期にあることを認識し、自分自身を変化に合わせてアップデートする必要がある。企業もまた、テクノロジーを使いこなせる人材を増やすことが重要」と述べた。その上で、変化に無関心な企業や組織は、やがて市場から退場する可能性が高まると警鐘を鳴らしている。ITリーダーには経営層と協働し、産業構造の劇的変化を前提とした人材戦略を早急に打ち出すことが求められている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR