台湾のセキュリティベンダーCyCraftはAI駆動型のセキュリティソリューションを複数発表した。これらの中には「LINE」で利用できるAIチャットbotも含まれるという。同社が示すAIを活用したセキュリティ強化のビジョンとは。
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台湾のセキュリティベンダー、CyCraftは2025年5月16日、パートナーイベント「CyCraft Day」を開催した。台湾のスタートアップである同社は、今回のイベントで日本における展開や製品について講演を実施した。同社のCEOらが語ったビジョンやセキュリティ技術をレポートする。
基調講演「AIで守る世界の安全」は、CyCraftの呉 明蔚(Benson Wu)CEOが登壇した。同社は呉氏を含む3人のエンジニアによって2017年に創設された企業だ。予兆や強化、対応の3方向でAIを活用する脅威監視プラットフォーム「XCockpit」を展開しており、台湾ではTSMCを含む300以上の政府関連機関、金融機関、半導体企業に導入されている。
呉氏によると、スタートアップとして国家イノベーション賞を受賞、頼清徳総統および蔡英文前総統からの支持を得ているという。
呉氏は講演で、とりわけ台湾における地政学上の課題に触れ「台湾では蔡 英文(Tsai Ing-wen)元総統が就任前からサイバー司令部構想を立ち上げ、今後の戦争に備えている。頼 清徳(William Lai)総統はAIやサイバーセキュリティを国防と台湾の戦略産業に位置付けている」と述べた。
呉氏によると、台湾では毎日240万件のサイバー攻撃にさらされているという。「日本の企業にはこのようなサイバー攻撃に遭ってほしくない。CyCraftとパートナーでどのような支援、協業ができるかを考えている」(同氏)。
また、同講演では台北駐日清文化代表処 駐日副代表である蔡 明耀(Tsai Ming-yaw)氏が来賓として登壇した。蔡氏は台湾の現状を踏まえつつ、「台湾と日本はともに島国で貿易立国であり、天然資源には乏しいものの、豊かな人的資源を有している。双方の協力関係は今後ますます重要となる」とした。
続いてCyCraftのCISO(最高情報セキュリティ責任者)兼共同創業者の叢 培侃(PK Tsung)氏が登壇し、製品ロードマップと導入事例を紹介した。
叢氏は今回新たにエンドポイントにおけるアタックサーフェスマネジメント製品「XASM」を日本で展開することを発表した。XASMは、EASM(外部資産エクスポージャー管理)やIASM(アカウント攻撃サーフェス管理)、EDR(Endpoint Detection and Response)/MDRを組み合わせ、セキュリティ強化を一元化し、AIを活用した自動化技術によって効率的なサービスを提供するという。
叢氏は孫子の兵法における言葉「戦わずして、人の兵を屈する」を引用し、「当社も同じ考え方で、さまざまな情報を集めて活用することで先んじた手を打ち、そして敵に勝っていきたい」と述べる。
「煩雑な従業員のアカウント管理やサプライチェーンの拡大に伴ってアタックサーフェスが拡大し、さらなる備えが必要となっている。当社はAIを使ったセキュリティ評価によって、サプライチェーンを含めた全社のセキュリティ状況を適切に把握、可視化することを支援する」(叢氏)
同講演では、AIを活用した脅威予測の例として「CyCraft XASM AI Agent」のデモが実施された。CyCraft XASM AI Agentを使えば、チャット形式の対話型インタフェースによって情報漏えい状況を把握できる。叢氏はデモの中で、特定のドメインを指定し、月ごとの漏えい状況の差異を分析し、さらにその原因を対話形式で追跡することが可能であることを示した。
この他、叢氏は「LINE」で利用できるAIチャットbot「Crafty」を紹介した。同botは自然言語での対話に対応しており、無料でリスクインテリジェンス情報を照会したり、セキュリティニュースを要約したりすることが可能だという。
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