「人を笑っている場合じゃない」 SentinelOneが引き起こした大規模システム障害Cybersecurity Dive

SentinelOneは2025年5月29日に発生し、世界中でサービスに深刻な影響を及ぼした大規模な接続障害の原因と今後の対応について発表した。セキュリティベンダーの障害時における対応にはCrowdStrikeの一件以降注目が集まっている。

» 2025年06月14日 08時00分 公開
[David JonesCybersecurity Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

Cybersecurity Dive

 サイバーセキュリティ企業のSentinelOneは2025年5月31日(現地時間、以下同)に、数日前に発生した世界的なサービス障害は、同社のインフラ制御システムにおけるソフトウェアの欠陥が原因であり(注1)、それによって広範囲にわたってネットワーク接続が失われたと発表した。

世界的な接続障害の原因と、SentinelOneのその後の対応

 原因を分析したレポートの中でSentinelOneは、2025年5月29日に発生し世界中でサービスに深刻な影響を及ぼした大規模な接続障害について(注2)、サイバー攻撃によるものではなかったと説明した。自動化プロセスにおけるソフトウェアの欠陥により、重要なネットワークルートやDNSリゾルバのルールが削除されたことが原因だったという。

 SentinelOneは現在、本番システムをInfrastructure as Codeの原則に基づいて構築された新しいクラウドベースのアーキテクチャに移行しているところだ。同社によれば、間もなく廃止予定の制御システムが新しいアカウントの作成をきっかけに作動し、その制御システムの設定比較機能に存在したソフトウェアの欠陥によって差異が誤認識され、正しいと判断された設定状態が適用された結果、既存のネットワーク設定が上書きされてしまったという。

 SentinelOneによると、顧客のエンドポイントは引き続き稼働していたものの、セキュリティチームが管理コンソールや関連サービスにアクセスできない状態になったという。同社は「この度のアクセス不能により、セキュリティ運用の管理や重要なデータへのアクセスに大きな支障が生じた」と述べた。

 SentinelOneは顧客に対してエンドポイントは保護されており、障害発生中もSentinelOneのセキュリティデータが失われることはなかったと保証している。

 同社は「当社のアーキテクチャにおける基本設計理念は今回のような事象を含むいかなる種類のサービス障害が発生した場合でも、クラウドへの常時接続や人手による検知および対応に依存することなく、保護と防御の機能が途切れないことを保証するところにある」と述べている。

 SentinelOneによると、この度のインシデントは政府機関向けクラウドサービスを利用している連邦政府の顧客には影響を与えなかったという。ただし、状況認識と透明性確保のため、連邦政府の顧客には念のため通知したと同社は説明している。

 同社は障害発生の詳細なタイムラインを公表した。その情報によると、この度の障害は午前9時37分(東部標準時)に発生し、午後4時5分(同)に復旧が宣言された。

 アナリストたちはこの障害により、自社のセキュリティ環境に関する透明性について即座に懸念が生じたと指摘した。

 調査企業であるForresterでセキュリティおよびリスクを担当するアリー・メレン氏(プリンシパルバイスプレジデント)は『Cybersecurity Dive』に対して電子メールで次のように述べた。

 「ベンダーは、障害発生時には迅速かつ透明性のあるコミュニケーションを顧客と取らなければならない。そうすることで、顧客は適切な準備や計画を立て、経営陣への報告ができるようになるためだ。さらに、今回のような障害に備えてベンダー側は、独立したパブリックなステータスページなどの帯域外の連絡手段を用意しておくことが極めて重要だ」

 この障害は、サイバーセキュリティ業界およびソフトウェア業界全体で、ソフトウェアの完全性や事業継続性への懸念が高まっている中で発生した。SentinelOneの主要な競合企業であるCrowdStrikeによる不具合を含んだソフトウェアアップデートが、850万台以上の「Windows」のコンピュータに深刻な影響を与えたことも記憶に新しい。

 2024年7月の決算説明会で(注3)、SentinelOneはCrowdStrikeの障害を受けて新規顧客からの問い合わせが相次いでいることを誇らしげに語った。同社のCEOのトマー・ワインガルテン氏は「その障害によって浮き彫りになった懸念は、今後何年にもわたって企業が負う責任やリスク問題として影響を及ぼし続けるだろう」と述べた。

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR