BCGの調査によると、2025年4月、経済に対する懸念を原因としてテクノロジーに関する投資の優先順位が入れ替わったという。企業はどのようにしてテクノロジー投資に活路を見いだしているのか。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
大手コンサルティング企業であるBoston Consulting Group(BCG)が北米と欧州の300人以上の上級ITリーダーを対象に実施した調査(注1)によると、2025年4月に発表されたドナルド・トランプ大統領による大規模な関税政策によって経済に不確実性が生じ(注2)、多くの企業がテクノロジー分野の投資の戦略を見直したという。
同調査によると、回答者の約3分の2が「コスト管理」を最優先事項に挙げており、5人に2人以上が「裁量的なITプロジェクトを延期した」と答えている。また、回答者の約3分の1は「中断したプロジェクトを6カ月以内に再開したい」と考えている一方で、約半数は「延期が最大で1年続く」と見込んでいる。
こうした状況は、企業が不確実性の中で、より即効性のある投資へとシフトしている現状を示唆している。それでは、企業は具体的にどのようなテクノロジー投資に活路を見いだそうとしているのだろうか。
BCGのクラーク・オニール氏(マネージングディレクター兼パートナー)は、2024年12月に実施された同様の調査と比べて、CIO(最高情報責任者)の意識が大きく変化していることが明らかになったと指摘している。
同氏は「2025年1月の時点では、誰もが2025年はAIおよびクラウド、セキュリティへの大規模な投資をする年になると予想していた。しかし現在は、マクロ経済の循環における関税を巡る不確実性が、人々に優先順位の見直しを迫っている」と述べた。
世界的な貿易摩擦やサプライチェーンの停滞といった懸念があるにもかかわらず、企業は効率向上と成長の原動力としてテクノロジーに期待を寄せている。そのため、プロジェクトの遅延や裁量的支出の削減は、クラウドやAIへの継続的な投資によって今のところ一部相殺されている。
「私たちは、クライアントが成熟したテクノロジーへの投資を控え、代わりに先端テクノロジーへ傾倒しているのを目の当たりにしている」(オニール氏)
この見直しは、技術投資に対する一律な削減を引き起こすのではなく、むしろ増加見込みを下方修正する形となった。BCGの調査によると、関税の発表前は、ITリーダーの4分の3以上が平均4%の予算増を計画していたという。
2025年4月時点の状況はそれほど楽観的ではなく、予算が2024年より増えると見込んでいる回答者は全体の56%にとどまった。前年比の予算増加率も平均で2.4%まで下がった。
オニール氏によると、企業が2026年まで先送りできるテクノロジーの購入が、2025年における見直しや削減の対象となるようだ。CIOたちは、即時でリターンが見込める投資を優先して守ろうとしている。
回答者の5人に4人以上が、生産性を高めるML(機械学習)を含むAIツールへの支出を維持または増加させる意向を示している。また、5人に3人は、今後12カ月間で関税の影響を緩和するために自動化技術への投資を予定している。
BCGによると、経済の不確実性が続く場合、CIOはサーバやストレージ、IT運用管理、コミュニケーションプラットフォームといった中核分野におけるベンダーの統合などを戦略として採用するという。
ITリーダーは、効率向上に直結するクラウドサービスやAIなどの支出分野について異なる方針を採用している。回答者の半数は「AIベンダーの数を増やす予定だ」と答えており、3分の1以上がクラウドプロバイダーのポートフォリオを多様化しようとしている。
この流動的な状況の中では、変化する地政学的要因に対する経済の反応を見極めて柔軟な対応を可能にするためのコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)が求められている。
「景気後退のときにも経済成長のときにも投資はできるが、不確実な世界で投資をするのが本当に難しい」(オニール氏)
© Industry Dive. All rights reserved.