CBREの調査によると、AIの導入が進む中で2025年の最初の3カ月間にコロケーションのための施設の賃料が急激に上昇した。
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商業用不動産に関連するサービスを提供するCBREが2025年6月24日(現地時間)に発表した調査によると(注1)、インフラ設備の建設が続いているにもかかわらず、2025年の最初の3カ月間でデータセンターの空室率が急激に低下したという。
CBREによると、この傾向は米国の主要市場において特に顕著であり、第1四半期における平均空室率は世界平均である6.6%の約3分の1にとどまり、前年比で2.1ポイントの減少を記録した。この背景には旺盛なAIとクラウド需要がある。
調査によると、大規模なクラウドインフラの構築とAI導入の推進が相まって、米国の主要地域ではコロケーションのための賃料が2桁台の上昇を記録しているという。CBREのデータセンターソリューション部門に所属するパット・リンチ氏(エグゼクティブマネージングディレクター)は報告書の中で「AI導入を進めたり、大規模なITインフラを必要としたりするユーザーからの需要の増加によって空室率が低下しており、主要市場において空き容量を持つ事業者はプレミアム価格を設定している」と述べた。
企業がインフラを多様化し、クラウドとオンプレミスの環境に分散して展開する動きが進む中で、データセンターのスペースに関連する費用が急騰している。
CBREにおいて、米国地域のデータセンターに関する調査を担当するゴードン・ドルヴェン氏(ディレクター)が『CIO Dive』に語ったところによると、約10年にわたってコロケーションスペースの募集価格の下落が続いていたが、2023年に急騰し始めたという。米国内の主要市場の上位4つのうちの2つであるノーザンバージニアとシカゴでは、賃料がそれぞれ前年比で15%、14.7%上昇した。
ドルヴェン氏は「2013〜2020年は毎年価格が下落するのが通例だったが、現在はそのような従来の傾向は見られない」と述べた。
賃料上昇の要因として、CBREは高水準の需要に加え、建設コストの上昇を挙げている。また、クラウドプロバイダーがAIワークロードを処理するために従来のCPUから電力消費の大きいGPUへと切り替えており、業界は電力供給の制約にも直面している。
「以前は電力を施設に引き込んでいたが、今では電力のある場所を選んで施設を建設しなければならない。高電圧の送電線や新しい変電所を建設する際、地域によっては計画や許認可、用途地域の規制、通行権や地役権の確保などのさまざまな面で困難を伴う。こうした事業は大規模なものなのだ」
容量の制約は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google Cloudをはじめとするハイパースケーラーによる建設ラッシュを引き起こしている。これら3社のクラウドプロバイダーは、AI導入および企業のモダナイゼーション施策を支えるために、半導体やハードウェア、新規建設に総額2500億ドル以上を投資する計画を立てている(注2)。
CBREによると、ハイパースケーラーによる設備投資が原因となり、北米の主要4都市(ノーザンバージニアおよびアトランタ、フェニックス、シカゴ)における新規データセンター建設が過去最高を記録し、前年同期比で43%も増加した。新たな設備容量が稼働を開始する中で、アトランタとフェニックスはダラスやシリコンバレーを抜き、全米第2位および第3位のデータセンター市場に浮上したという。
ドルヴェン氏は「新たな容量は稼働と同時に消費されており、先行契約が活発になっている」と述べた。また同氏は「建設上の障害によりスケジュールが2027年以降に延期されている」とも指摘した。
コロケーションサービスを提供する事業者も容量の拡充を急いでいる。大手パブリッククラウドプロバイダーへの接続を提供するキャリアニュートラルなデータセンターを運営するCoreSiteのオペレーション部門に所属するアンソニー・ハッツェンビューラー氏(シニアバイス・レジデント)は、2025年6月の初めに『CIO Dive』に対して「シリコンバレーやニューヨーク、デンバーの拠点において、追加容量の稼働を継続している」と語った(注3)。
「私たちは土地の先行取得などの従来のプロセスに取り組みながら、早期の調達に注力し、顧客のニーズに応えられる十分な準備期間を確保できるように努めている。先を見据えて行動できていないとしたら、それは既に他社と比較して遅れているということだ」(ハッツェンビューラー氏)
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