「段階的クラウド移行」に見るインフラモダナイゼーションの最適解メインフレーム/ミッドレンジサーバ利用者必見

企業のIT活用の歴史において長らく重要な役割を果たしてきたのが、メインフレームおよびAS/400(現:IBM i)やUNIXなどに代表されるミッドレンジサーバだ。その高い信頼性から、今もなお多くの企業が基幹システムを中心に継続利用する一方、昨今主流となっているクラウドサービスを適材適所で活用する際に、その独自性が足かせとなり対応が難しいという問題も生じている。このようなハードウェアを有する企業は、変化の激しいビジネスに適したIT環境を構築するために、どのようにモダナイゼーションを行っていけばよいか。旧来のITインフラと最先端のクラウドインフラ双方の知見を持つキーパーソンの見解を踏まえ、最適なアプローチを解説する。

PR/ITmedia
» 2025年08月18日 10時00分 公開
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メインフレームとミッドレンジサーバのユーザーが直面する課題

 1950年代に登場し、長らく企業のミッションクリティカルなシステムを支えてきたハードウェアの代表格がメインフレームだ。現在は同事業から撤退する企業も多いが、日本市場は幾つかのベンダーによって今もなおビジネスが一定の規模で継続している。

 メインフレームだけでなく、ミッドレンジ帯のハードウェアにも同様だ。かつてはAS/400などのオフコンや、UNIX系OSを搭載したハイエンドサーバなど、さまざまなラインアップが企業向けコンピュータ市場をけん引してきた。現在はダウンサイジングやオープン化の波を受けつつ市場規模が縮小しているが、今でも多くのユーザー企業が最新のハードウェアへと更新し、その上で動くアプリケーションも継続利用している。

 ところが、システムのクラウド移行が進む昨今では、限界も見え始めている。ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの活用、AIやデータの活用といったトレンドが現れる中、こうしたハードウェアのユーザー企業は旧来のアーキテクチャ上で作り込まれたIT資産を最新のデジタルに適合させることが難しい状況となっている。そう語るのは、キンドリルジャパンの中尾友謙氏だ。

キンドリルジャパン プラクティス事業本部 コアエンタープライズ & zCloud事業部長 理事 中尾友謙氏

 「クラウドシフトの重要性が指摘されて以降、WindowsやLinuxといったIAサーバの領域では多くのシステムでクラウド移行が進みました。しかし、メインフレームやAS/400、ネイティブUNIXなどの環境では、マルチクラウドに移行させるにあたりシステムを刷新して作り変える必要があり、多くの企業が二の足を踏んでいます。モダナイズしたいと思いつつも、自社のデータセンターやオンプレミス環境に古いアプリケーションが残る状況です」(中尾氏)

オンプレミスのハードウェア運用にて生じる3つの課題

 こうしたハードウェアを現在のシステム環境で利用する企業は、どのような課題に直面しているのか。これには「クラウドとの接続性」「人材問題」「サイバーセキュリティ対策」の3つが挙げられる。

 クラウドとの接続性という部分では、アプリケーションをクラウドサービスの機能と連動させるニーズが高まっている中、レガシーなアプリケーションではシステムが「うまく接続できない」、またはオンプレミスゆえに「クラウドとの距離が遠い」という問題が生じる。特にAIを用いたアプリケーション開発は、クラウドサービス事業者が提供するエンジンや開発環境を活用するケースが多いが、AIの学習に用いるデータがオンプレミス環境にあることでパフォーマンスに影響が出る。

 人材面では、メインフレームやIBM iシリーズ、AIX関連の保守ができる人材が退職してしまい、今後はシステムの保守がより困難になるだろう。ただでさえIT人材の確保が難しい中、多くの企業は新たな人材をより事業の成長に貢献するクラウドやアプリケーション開発領域に振り分けたいと考えるのが普通である。古いインフラの維持や保守のために人材を割くのは、決して簡単ではない。

 セキュリティ面について、メインフレームや商用UNIXは、システム単体で見ればWindowsやLinuxより堅牢(けんろう)だ。しかし、その安全性だけでは不十分と言わざるを得ない。昨今は攻撃の手口が巧妙かつ複雑になり、内部からの情報漏えいが増加しているためだ。ハードウェア単体のセキュリティに頼るのでなく、ネットワークやアクセス経路全般を含めた複合的な対策が必要となる。それを踏まえると、企業が自前で完全なサイバーセキュリティ対策を維持することは、コスト面を含め負担が大きい。

段階的なクラウド移行アプローチで一歩目を踏み出す

 オンプレミスで個社のハードウェアを保有することは悪いことではない。しかし、現在のビジネス環境ではデメリットが際立ち始めている。

 「自社のオンプレミス環境にハードウェアを保有する限り、製品開発の終了や保守切れ問題に悩まされます。資産を維持するために、リプレース時には毎回大きな費用と手間がかかります」と中尾氏は指摘する。

 そうした中で、これからの時代に適合したITインフラのモダナイゼーションを図る上ではクラウドの活用が現実的な選択肢となる。そして、多くの企業が「モダナイゼーションを行うべき」という認識を持ちつつも第一歩を踏み出せていない現状に対して「段階的な移行」が有効な施策になると、キンドリルジャパンの橋本寛人氏は説く。

キンドリルジャパン クラウド事業本部長 執行役員 橋本寛人氏

 「オンプレミス環境を繰り返し刷新するのではなく、変化が激しい昨今のビジネス環境に対応するため、拡張性や柔軟性を備えたクラウドを前提としたインフラへ移行すべきです。さまざまなテクノロジーが日進月歩で進化する中で、レジリエンスを確保しつつ、そうした最新テクノロジーを最大限に生かせるインフラへ少しずつ置き換えることがポイントです」(橋本氏)

IBM PowerのAzure移行の障壁を低減するソリューション

 では、このようなシステムをどのように構築するか。キンドリルはIBM Zユーザーの他、IBM iやAIX環境向けのミッドレンジサーバ「IBM Power」ユーザーに向けた段階的なモダナイゼーションを支援するソリューションを提供している。

 まずメインフレームユーザー向けには、キンドリルが運用するIBM Z向けマネージドクラウドサービス「zCloud」を用意している。これは既存のIBM Z環境をそのままキンドリルのクラウドに移行できるソリューションだ。メインフレーム上のアプリケーションの大幅な改修を回避する他、メインフレームに保存されていた大規模かつ重要な基幹系のデータをクラウド環境に移植することで、クラウド側のAIとの親和性も向上する。さらに、他の各種クラウドサービスとの高速接続によって、それらが提供するPaaSメニューも低遅延環境で利用できる。

 「昨今メインフレームマイグレーションがバズワードになっていますが、メインフレームを完全に脱することは簡単ではありません。当社としては、残すべきものはzCloud上の新しい環境で維持しつつ、パブリッククラウドを組み合わせてシステム環境を段階的にモダナイズする形を推奨しています。お客さまのワークロードの特性に合わせて最適なアプローチを提供できます」(中尾氏)

 同様のアプローチがミッドレンジサーバでも可能だ。キンドリルは2024年にIBM iやAIXなどIBM PowerのワークロードをMicrosoft Azure上に移行する「Skytap」を買収したことで、より多彩な選択肢を顧客に提供できるようになった。

 これまで、上記のワークロードをクラウドへ移行する際は、アプリケーションをLinuxベースなどで再構築する必要があった。しかし、このSkytapはAzure上にIBM Power環境をそのままホスティングできる。

レガシー環境を維持しつつDXに適した基盤を構築可能

 Skytapを利用することで、ITインフラの段階的なクラウド移行を実現する他、現在のビジネス環境に適した柔軟かつ堅牢な環境を構築できる。

 「既存システムの改修を最小限に抑えながら、ITインフラのコストを、資産を持たないOPEXモデルに移行できます。オンプレミス特有のハードウェアの制約から脱却することで、ビジネスの需要に応じたITリソースの縮退も可能です。クラウド環境を生かしたDR環境構築で、事業継続計画(BCP)をより強化しやすくなります」(橋本氏)

 さらにSkytapは、2025年秋に新たに東京と大阪リージョンの利用が可能となる。データを日本国内のデータセンターで保持したいというガバナンスの観点やデータ通信のレイテンシの観点からも、日本企業にとってより利用しやすいソリューションとなっている。

 「こうしてクラウドリフトしたその次のステップとしては、システムをLinuxやWindowsベースに刷新したり、Azureが提供するAIやデータ、セキュリティなど各種機能を活用して最新のクラウドネイティブなモダンアプリケーションを開発したりという段階的なアプローチが可能です。そこでは、Skytap上のIBM Power環境にデータを置きながら、リアルタイム性を備えたハイブリッド型のアプリケーションの開発も可能です」(橋本氏)

コンサルティングフェーズから運用までトータルで支援

 キンドリルは、zCloudやSkytapなどのサービスを活用したクラウドリフト支援だけではなく、インフラモダナイゼーションをトータルで支援する。既存の環境に関するアセスメントを行って移行する必要がある対象のシステムを判断したり、「ワークショップゼロ」という無償のオンサイト相談会を実施し、システムに関連するステークホルダーを集めて自社の現状の課題を洗い出しつつ最適なステップを提案したりする。そしてクラウドリフト実施後も、移行したシステムの最適化といった調整やマネージドサービスを提供する。

 「キンドリルはIBMのインフラサービス事業を引き継いだ会社なので、IBM ZやIBM Powerの専門知識を有する技術者が多く在籍しています。既存の仕組みの勘所を踏まえた上で、コンサルタントが最適なモダナイゼーションジャーニーをプランニングし、実際の移行およびその後の運用まで支援可能です。移行に際しては、メインフレームのCOBOLやPL/Iで書かれたコードのリファクタリングを行う他、関連会社やパートナーと連携してアプリケーションの再構築も対応できます」(中尾氏)

 「われわれはモダナイゼーションジャーニーのトラステッドアドバイザーとして、共に歩んでいきたいと考えています。その際に、お客さまにはシステムを『刷新する』のではなく、『進化させる』という考え方で臨んでいただきたいと考えています。一歩、踏み出していただければ、あとはわれわれが運用フェーズまで導きます」(橋本氏)

 現在、国内ではメインフレームは数百台、UNIXサーバは数千台が稼働していると言われている。長い歴史のある製品の技術と最新技術の双方の知見を生かしたキンドリルのサービスモデルは、まさにこうした製品のユーザー企業にとって有益なものとなるだろう。

※本稿は、キンドリルジャパンからの寄稿記事を再構成したものです。

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提供:キンドリルジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年9月3日