専門家「シャドーAIはピンチでもチャンスでもある」ってどういうこと?CIO Dive

ManageEngineのレポートによると、IT部門によるリスク評価よりも速いペースで従業員がAIツールを企業に持ち込んでいるという。

» 2025年08月23日 08時00分 公開
[Roberto TorresCIO Dive]

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CIO Dive

 IT管理サービスを提供するManageEngineの調査によると(注1)、従業員が独自のAIツールを職場に持ち込む「シャドーAI」が企業で広がっている。同社は2025年7月8日(現地時間、以下同)に発表した本レポートのために、米国とカナダにおいて350人のIT意思決定者と350人のプロフェッショナルを対象に調査を実施した。

「シャドーAIはチャンス」ってどういうこと?

 レポートによると、技術リーダーの80%以上が「従業員によるAIツールの導入速度が、ITチームが安全性を審査する速度を上回っている」と回答している。約60%の従業員が「2024年よりも未承認のAIツールを使う頻度が増えた」と回答している。

 ManageEngineでAIを研究するラムプラカシュ・ラマムールティ氏(ディレクター)は「シャドーAIは企業にとってガバナンス上の最も大きなリスクであると同時に、戦略的なチャンスでもある」と述べる。

 「成功する組織は、セキュリティ上の脅威に適切に対応した上で、シャドーAIを『本当に求められているビジネスニーズ』の表れとして戦略的に捉えているのだ」(ラマムールティ氏)

 とはいえ、そのリスクは無視できない。報告書によると、意思決定者の3分の2近くが、シャドーAIを取り巻く最大のリスクとしてデータ漏えいやデータ暴露を挙げている。

 企業は、AIツールの導入に莫大なリソースを投じており、優先度の高い用途を実現するために既存のサービスをカスタマイズしたり、データのプライバシー保護策を組み込んだりしている。しかし、従業員が許可されていない一般向けのAIツールを職場に持ち込むことで、企業のデータが漏えいするリスクが高まり、サイバーセキュリティ上の脅威も拡大しかねない。

 調査対象となった従業員のうち、3分の1は「社内で承認されていないAIツールに顧客の機密情報を入力したことがある」と答えている。また、37%の従業員が「社外のAIシステムに自社の機密情報を入力したことがある」と回答した。

 承認、未承認を問わずAIの利用が企業全体に広がる中で、明確かつ実効性のあるガバナンスポリシーを整備していない企業は全体のおよそ半数にのぼる。さらに差し迫った課題として、AI利用に伴うリスクに関する教育の不足が挙げられる。従業員の60%は、より多くの教育が必要だと感じているのだ。

 従業員による未承認ツールの使用を防ぐために、多くの企業は、正式に認可されたAIプラットフォームを迅速に導入しようとしている。食品メーカーのMondelēz Internationalは生成AIを搭載したアシスタント「Amazon Q」を開発チームに提供した(注2)。その結果、開発スピードが向上し、新入社員のトレーニングもスムーズになったという。

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