AI分野で協業を拡大させる富士通とNVIDIA。ArmベースCPUの「FUJITSU-MONAKA」やGPUといった両社の技術を組み合わせ、AI技術の活用に適したインフラを共同で構築するという。その具体像とは。
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富士通とNVIDIAは2025年10月3日、AI分野での協業を発表した。富士通のCPUとNVIDIAのGPU(グラフィックス処理装置)を軸に、両社の製品・技術を「シリコンレベルから組み合わせて」(富士通代表取締役社長CEOの時田隆仁氏)、AI技術の活用に適したインフラを具現化。業種を問わず、さまざまな企業の課題解決にAIを生かしやすくする。
両社は、Armアーキテクチャベースの富士通製CPU「FUJITSU-MONAKA」シリーズと、NVIDIA製GPUを密接に連携させたインフラを構築する。中核技術として、NVIDIA製GPUと他社製プロセッサとの直接接続を可能にする、NVIDIAのインターコネクト(相互接続)技術「NVIDIA NVLink Fusion」を利用。AI関連処理の高速化といった、パフォーマンス向上につながるチューニングを共同で施す。
ソフトウェア面では、富士通のAI技術/サービス群「Fujitsu Kozuchi」に、「NVIDIA NeMo」「NVIDIA Dynamo」といったNVIDIAのAIソフトウェア群を組み合わせることで、企業が課題解決に役立つAIモデルやAIエージェントを開発しやすくする。NVIDIAの「NVIDIA NIM」を利用し、開発したAIモデルやAIエージェントをマイクロサービスとして広く提供可能にする仕組みも用意するという。
今回の協業の成果について、富士通は「ユーザー企業のニーズに合わせて利用できるようにする」(同社執行役員副社長CTOのヴィヴェック・マハジャン氏)との意向を示しているものの、発表時点では具体的な提供形式を明らかにしていない。つまり企業にとっては単体の製品/サービスとして購入できるようになる可能性も、システムインテグレーションの一要素として取り入れることになる可能性もある。
既に富士通はHPC(大規模科学技術計算)サーバベンダーSuper Micro Computer(Supermicro)と提携し、NVIDIA製GPU搭載サーバを「PRIMERGY GX2570 M8s」という製品や、クラウドサービス「Fujitsu クラウドサービス Generative AI Platform」として提供している。今回の協業の成果は、これらの後継製品や新メニューといった形で、部分的にでも利用可能になると見られる。
富士通製CPUとNVIDIA製GPUの組み合わせといえば、富士通は既に同種のインフラの開発を発表している。NVIDIA創業者で社長兼CEOのジェンスン・フアン氏が「今回の協業の原動力となった」と明かす、スーパーコンピュータ(スパコン)「富岳NEXT」(開発コードネーム)がそれだ。富岳NEXTは、FUJITSU-MONAKAの後継CPUである「FUJITSU-MONAKA-X」(仮称)と、NVIDIA製GPUを組み合わせた設計になることが明らかになっている。
今回の協業で富士通は、スパコンの主な用途であるHPCに限らず、広い業種でのAI技術活用に応えるインフラを実現したい考えだ。協業成果の活用をさまざまな業種に広げるべく、NVIDIAと共同でユーザー企業やパートナーとの協業を進める。既に産業用ロボット大手の安川電機との協業検討を始めており、同社のロボット技術を活用した「フィジカルAI」(物理世界での自律的な行動を可能にするAI技術)の具現化を目指す。
NVIDIAは2025年9月、x86アーキテクチャを開発したIntelへの出資を発表。AI関連インフラ向けに、x86アーキテクチャベースCPUを共同開発するという。少なくとも現時点では、NVIDIAは同社の中核ソフトウェア「NVIDIA CUDA」をArmアーキテクチャのCPUでも稼働可能にしているなど、x86アーキテクチャへの傾倒は見せていない。富士通は、CPUアーキテクチャには「さまざまな選択肢があるのが自然だ」(マハジャンCTO)という考えから、この動きを静観する構えだ。
電力効率に優れるとされるArmアーキテクチャのCPUは、電力消費量が激しいAI関連処理向けには有力な選択肢となる。ただし伝統のあるx86アーキテクチャには、ライブラリや開発者といったリソースの充実度で優位性がある。AI関連市場をけん引するNVIDIAが、Intelと進める提携の方向性によっては、AI関連処理でもArmアーキテクチャではなく、x86アーキテクチャを選ぶ必然性が高まる可能性があり、今後の動きに注目が集まる。
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