「AIと規制」の間で板挟みになる情シス 調査が示す“選べるクラウド”の必然性CIO Dive

AI活用を進めたい一方で、強化が進むデータ規制への対処に追われる情シス。ある調査結果は、こうした板挟みの状況を打開するために、ITインフラの在り方を見直す必要性を示す。鍵となるのが“選べるクラウド”だ。

» 2025年12月24日 08時00分 公開
[Makenzie HollandCIO Dive]

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 ITインフラサービスを提供するKyndrylは2025年11月12日(現地時間、以下同)、企業のクラウド戦略に関する調査報告書「2025 Kyndryl Readiness Report: Unlocking Cloud Readiness」(2025 Cloud Readiness Report)を発表した。ビジネスリーダーへの調査を基にした同報告書によると、回答者の4分の3は、クラウドサービスにおけるグローバルでのデータ保存・管理に伴う、地政学的リスクに懸念を抱いている(注1)。情報システム部門はこの状況をどう解釈し、どう対処すればよいのか。

AI活用と規制順守を両立させるITインフラとは?

 各国・地域は「デジタル主権」(データやITインフラといったデジタル資産を、組織が主体的に管理するための能力・権利)に関する規制などのローカル要件を定めている。報告書によると、これによりクラウド戦略の変更を余儀なくされているとの回答は65%に上る。

 AI活用では、さまざまなITインフラに分散したデータを横断的に活用できることが重要になる。報告書によると、回答者の84%がマルチクラウドを意図的に選択している。一方で規制の強化により、デジタル主権を巡るガバナンス要件は急速に変化している。報告書では、データの一部をパブリッククラウド(クラウドサービス)からオンプレミスサーバに回帰させているとの回答が41%ある。

 Kyndrylのニコラ・セッカキ氏(グローバルクラウドプラクティスリーダー)が「AI導入の成否を左右する重要な要素になる」と指摘するのが、クラウドサービスとプライベートクラウドを密接に連携させるハイブリッドクラウドだ(注2)。ユーザー企業がデータ保存・管理に関する規制を順守しながらAIを活用する上で、ハイブリッドクラウドが役立つという。

“選べるクラウド”としてのハイブリッドクラウドの魅力

 ハイブリッドクラウドの普及により、ユーザー企業はワークロード(アプリケーションやプロセス)ごとに最適なITインフラを選択できるようになったと報告書は指摘する。とりわけ厳格なデータ規制が存在する国では、データの配置や利用方法を用途に応じて選択・調整できるハイブリッドクラウドのメリットが大きくなる。

 報告書によるとハイパースケーラー(大規模クラウドベンダー)は、ユーザー企業がデータをローカルに保存できるようにするために、クラウドサーバの拡充を進めている。

 Googleは2025年11月11日の発表で(注3)、今後4年でドイツのクラウドインフラおよびAIインフラに55億ユーロを投資する計画を明らかにした。ユーザー企業が各国・地域の規制を順守できるようにするためのクラウドサービス「ソブリンクラウド」の提供を継続すると、同社は説明する。2025年6月には、Microsoftもクラウドサービスとオンプレミスインフラの両方を対象とした製品/サービス群「Microsoft Sovereign Cloud」を発表し、ソブリンクラウド関連製品/サービスの提供を拡大したと発表した(注4)。

 2025年10月開催のシンポジウム「Gartner IT Symposium/Xpo」に登壇した、調査会社Gartnerのバイスプレジデント・アナリストであるエド・アンダーソン氏によると、クラウドサービスやAIサービスの市場をけん引しているのは、依然としてハイパースケーラーだ(注5)。一方でAkamai TechnologiesやThe Constant Company(Vultrの名称で事業展開)、Continental Broadband(Expedient Data Centersの名称で事業展開)といった専業ベンダーが台頭している。

 専業ベンダーのサービスが充実することで「ハイパースケーラーのサービスでは対処しにくかった用途にも、ユーザー企業が対処できるようになってきている」とアンダーソン氏は説明する。こうしたサービスの中には、ソブリンクラウドも含まれると同氏は付け加える。

 「どのような状況であっても、ハイブリッドクラウドは極めて重要な存在になる」とアンダーソン氏は指摘する。

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