アプリ構築のトークン消費は通常の3倍 Anthropicデータが明かす、高度なタスクと計算資源のリアルIT調査ピックアップ

AnthropicはAIの利用実態を分析した最新報告書を発表した。分析手法の刷新により、アプリ構築が通常の3倍超のトークンを消費する実態や、週末の私用増、若手の失職懸念と高度委任層の成長実感などが判明した。

» 2026年06月30日 07時00分 公開
[ITmedia]

 Anthropicは2026年6月26日(現地時間)、「Claude」の利用実態と経済への影響を分析した「Anthropic Economic Index report: Cadences」を発表した。今回の報告において、同社は「Claude Code」や「Claude Cowork」の普及に伴い、タスクの難易度や成果物の価値によって計算資源の消費量が変わる実態を明かしている。これに伴い、従来のチャット形式だけではAI利用の実像を捉えにくくなったとして、データ処理の手法を大幅に見直した。

 具体的には、利用データをより高い頻度で抽出し、時間単位の変化を把握できるようにした他、会話の出力内容を「分類器(AI)」で仕分ける新たな仕組みを導入。チャットやCowork、「First-Party API」(1P API:自社提供の公式API)の利用状況も月単位で細分化して示した。報告書は3つの柱で構成される。

第1章:週末に私用増、Claude利用が映す仕事と生活のリズム

 第1章において、Claudeの利用が日常生活や仕事のリズムを反映している点を示した。チャットとCoworkにおいて、私的利用の割合が平日の約35%から週末には50%弱まで上昇した。平日は業務文書やマーケティング文案、スライド作成などの相談が多いのに対し、週末には感情面の支援や医療関連の質問、投資助言などが増えた。Claude Codeや1P APIでも同様の傾向が確認されたが、私的利用の水準は比較的低かった。

 Claude Codeにおいて、週末に減少する作業としてバックエンド設計やAPIのデバッグ、データ保存関連が挙げられた。逆に増える分野にはAIエージェント設計やクオンツ取引(機械的な資産運用、投資)、ゲーム関連が含まれた。起業に関する会話は各国で土日に高まり、週末が新規事業の準備に使われている可能性も示した。ただし、求人応募に関する活動は、他の仕事関連作業と同じく週末に減少した。

 時間帯別の分析において、利用目的ごとに明確な差が出た。ニュース関連の質問は午前7時、ビジネスメールなどの業務連絡は午前10〜11時に小さなピークがあった。レシピの依頼は午後6時に平均の2.3倍となり、メディア推薦は夜に集中した。睡眠に関する助言は夜明け前の数時間に多く、午前5時前後に目立った。夜間や週末に仕事目的でClaudeを使う場合、相談内容は高賃金職のタスクに偏る傾向も確認された。米国の税申告期限に関しては、2026年4月14日に税務関連の会話が5月の平均日の8倍に増え、4月15日も高水準が続いたが、4月16日には急減した。

第2章:会話から生まれる成果物の分析とトークン消費、AIの自律性

 第2章において、Claudeが会話の中で生み出す成果物を分析した。Anthropicは、会話の主要な出力を文書や説明、コード、学術論文など30超の分類に整理した。分類器はClaude会話の93%の成果物を特定した。多かったのは説明が17%、文書・報告書が15%、ガイダンスが11%だった。会話型の出力と、文書やプレゼン資料などの納品物はそれぞれ全体の約3分の1を占め、コードや技術作業は約6分の1だった。

 用途別において、創作やガイダンス、レシピは私的利用が8割を超えた。マーケティングコンテンツやブログ、記事、データベースクエリは仕事関連の比率が高かった。計画や戦略、翻訳などは私的利用と仕事利用が近い比率だった。仕事関連の会話では文書・報告書が20%と最多で、説明とメール下書き、分析・要約が続いた。学習関連では文書・報告書と説明が中心だった。私的利用では文書作成は6%にとどまり、説明と推薦が多かった。

 計算資源の面において、成果物の価値が高いほど使用トークンが増える傾向が示された。仕事関連の会話について、Anthropicは各タスクを業務を担う職業に関連付け、賃金水準とトークン消費を比較した。マーケティング管理者に対応するタスクは、編集者に対応するタスクより賃金もトークン消費も高かった。ただし、薬剤師関連タスクと統計アシスタント関連タスクのように、賃金とトークン量が一致しない例もあった。アプリ構築は中央値の3倍超のトークンを使い、説明は中央値の約5分の1だった。

 AIの自律性については、Claude Codeの方がチャットやCoworkより高かった。31種類の出力のうち26種類で、Claude Code利用時の自律性が上回った。ブログや記事の作成において、チャットやCoworkでは多数のやりとりを伴うのに対し、Claude Codeでは人間の入力が1回に近いケースが多かった。Claude Codeで高性能モデルが多く使われる影響もあるが、Sonnet同士で比べても差は残り、製品設計の違いが大きいと分析した。

高賃金職種での会話ではトークン消費量が多い(出典:Anthropicの公式ブログ)

第3章:意識調査から見える労働者の将来予測とキャリアへの影響

 第3章において、2026年4月に始まったAnthropic Economic Index Surveyの初期結果を示した。調査回答をプライバシー保護の仕組みでClaudeの利用データと結び付け、約9700人の回答を分析した。回答者は一般人口を代表するものではなく、コンピュータ・数学系や管理職が多かった。回答者の6割近くが、今後1年でAIが自分の仕事のより多くを担えるようになると見込んだ。3分の1超は、2027年にはAIが仕事の大半またはほぼ全てを担えると予想した。

 職務への見方において、経験年数が短い人ほどAIが担える業務の割合を高く見積もり、失職への懸念も強かった。他方で、Claudeにタスクを委任する割合が高い利用者ほど、賃金や雇用の安定、新しい仕事を得る力、仕事の意味、自律性、人間関係への影響を前向きに捉えていた。回答者の86%は作業速度、82%は仕事の範囲、69%は品質の向上を報告し、68%はAIで学習が増えた、57%は自分の技能価値が高まったと答えた。委任の多い利用者でも学習が減ったとの傾向は見られなかったが、報告書は自己評価だけでは技能低下の可能性を否定できないとも述べた。

 性別による利用差も示された。女性は連結サンプルの12%にとどまり、職業差を考慮しても仕事利用やClaude Code利用、自動化的な使い方が男性より少なかった。代わりに反復的な使い方が多く、チャット上の活動時間も長かった。

 最後に、AIが形づくる10年後の経済への希望として、回答者の多くは仕事の置き換えよりも、人間とAIの協働や退屈な作業の自動化、成果の広い共有を挙げた。

 報告書は、AIの経済的影響を測るには利用ログだけでは不十分だが、AIが多くの仕事を担い始める領域を観察することが、社会への影響を把握する手掛かりになると結論づけている。

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