AI戦略の担い手として財務責任者の存在感が高まっている。IBMの調査では、財務責任者らの62%が全社のAI戦略まで役割が広がったと回答した。一方、変革準備が整ったのは6%にとどまる。なぜ今、財務なのか。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
IBMは2026年9月30日(現地時間)、最高財務責任者(CFO)に関する調査結果を発表した。調査は同社のIBM Institute for Business ValueがOxford Economicsと共同で、2026年2〜4月に33の国・地域、26業種を対象に実施した。
調査では、企業へのAI浸透に伴い、CFOがAIを巡る全社課題、戦略実行、投資や資本配分で担う役割が広がっていることが分かった。
CFOや同等の財務幹部1500人のうち、62%は「職務が全社のテクノロジーやAI戦略を担う役割まで広がった」と回答した。56%はポートフォリオ管理と資本再配分の権限が増え、54%は事業モデルや成長戦略の設計責任が増したと答えた。ただ、「財務部門が変革準備を整え、AIを業務と意思決定へ継続的に組み込んだ」との回答は6%にとどまった。AI投資の配分や効果の追跡を通じて、財務部門が全社のAI戦略に関わる場面が増えている様子がうかがえる。
2030年には「AIの財務・倫理面の枠組み設計で責任が増す」と56%が予想した。「事業運営モデル、人材戦略、組織構造」では55%、「企業価値創出とポートフォリオ戦略」では52%が責任拡大を見込んだ。IBMのCFOを務めるジェームズ・カバノー氏は調査報告書の序文で「財務規律とリスク管理は不可欠だ」とした上で、CFOらは意思決定を初期から形作る必要があると記した。
調査は、全社戦略やAIガバナンス、統合インテリジェンス、資本配分、長期計画で高度な能力を持つ組織のCFOを「AI-first CFOs」と分類。この層は他のCFOと比べ、全社的な事業モデル実験の設計支援や業界を変え得る施策の主導に関わる可能性が2倍だった。同層が率いる組織は、2022〜2024年の収益成長率が同業組織より23%高く、新AI施策への資金承認までの期間も15%短かった。同層は「全社戦略を効果的に実行している」と回答する可能性も18%高かった。
資本配分において、48%がリアルタイム分析でAI・成長投資の配分を頻繁に更新し、38%はデータを判断材料にするが調整は遅いとした。AIが生む価値を財務部門が追跡し、資本を再配分するとした割合は48%。全社AI価値目標を財務が主導し、成果に連動して投資を自動で実行する仕組みを備えるとの回答は8%、定めた枠内でAIに再配分の提案もしくは実行を認めるとの回答は6%だった。
調査によると、財務部門ではAIスキルの育成が、AIを前提とした業務再設計よりも先行している。48%が財務部門を発展途上の段階と位置付け、AI技能が特定の職種やチーム、用途に集中していると回答した。42%は、財務部門がAIを使いこなすチームを持ち、活用を拡張できる高い準備段階に達したとした。調査報告書は、CFO向けの実践指針も収録し、全社戦略やAIガバナンス、意思決定、資本配分、長期的柔軟性を価値創出へ結ぶ考え方を示した。
AI投資で成果を出す企業は何が違うのか 厚労省が白書で示した「条件」
大企業に勤める回答者の過半数が「非エンジニアによる開発を実施」 全社に行き渡ったコード、検証できているのか?【調査】
なぜ、北國銀行は勘定系システムを内製するのか? 「できるわけない」という声を払拭した“5つの理由”
AIは魔法の杖ではなく“子ども”だ 「ずる賢く」育つのを阻止するための3つのポイントCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.