攻撃者はAIを使って攻撃の規模と速度を拡大している。CrowdStrikeがNVIDIAと共同開発し、年次イベント「Fal.Con 2026」で発表した新システムは、AIを活用した防御の在り方をどう変えるのか。
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セキュリティベンダーのCrowdStrikeは2026年8月31日〜9月3日(現地時間)、年次イベント「Fal.Con 2026」を米ラスベガスで開催した。テーマは「AI革命の安全確保」だ。日本法人のクラウドストライクは2026年10月16日に記者説明会を開き、鈴木滋氏(執行役員 セールスエンジニアリング本部 本部長)が発表内容を解説した。鈴木氏によると、イベントには71カ国から約4000の組織、1万人超が参加した。
鈴木氏は説明会で、攻撃者が既に攻撃に特化した高度なAIモデルを使い、攻撃の規模と速度を拡大していると指摘した。一方、防御側には同等の性能を持つ防御特化型のAIモデルがなく、攻防の非対称性が課題になっていたという。
この課題に対してCrowdStrikeがFal.Con 2026で発表した答えが、新システム「CrowdStrike SafeMind」(SafeMind)だ。その中身は「AIが脅威を見つけて知らせる」という従来のAI活用型の防御とは異なる。
SafeMindは、攻撃役と防御役の2つのAIモデルを仮想環境で戦わせ続け、防御能力を鍛えるエージェント型システムだ。CrowdStrikeが設立した研究組織「Cyber Superintelligence Lab」が開発し、2026年9月1日(米国時間)に発表した。
攻撃役のモデル「Red Tempest」は、高度な攻撃シナリオを前提に、AIを活用した攻撃者を模倣する。防御役のモデル「Blue Solano」は、防御の現場で実際に使われている対策を展開して企業の資産を守るよう設計されている。CrowdStrikeは両モデルを、NVIDIAと連携してオープンモデル「NVIDIA Nemotron」を基に構築した。トレーニングと推論には、AIクラウド事業者CoreWeaveの「CoreWeave AI Cloud」を使う。
2つのモデルを組み合わせて運用するのが、同社が「ハーネス」と呼ぶ実行基盤だ。ハーネスは両モデルをクローズドループで継続的に競わせ、防御策を改善していく。
鈴木氏はモデルとハーネスの関係を車に例えた。
「モデルが車のエンジンだとすると、ハーネスはシャシー(骨組み)だ。高度なエンジンでも軽自動車に載せればスピードは出ない。F1のようなしっかりしたシャシーに載せて初めて性能が出る」
攻防の舞台になるのは、顧客の環境を疑似的に再現した仮想環境(デジタルツイン)だ。Red Tempestが未知の攻撃手法で侵入を試み、破られた経路をBlue Solanoが学習してふさぐ。Red Tempestは別の経路を探して再び攻撃する。鈴木氏によると、実環境に影響のない仮想空間でこのループを繰り返し、防御力を段階的に高める仕組みだ。
モデルの学習には、Falconセンサーのテレメトリーや同社の脅威インテリジェンスに加え、MDR(Managed Detection and Response)サービス「Falcon Complete」が扱うイベントへの注釈、15年分のインシデント対応の知見を使っている。
CrowdStrikeによると、主要なフロンティアモデル(最先端の汎用AIモデル)やオープンソースのベースラインモデルと比較して、SafeMindは検知率を29%高め、検知から修復までの処理を6倍高速化し、検知と修復にかかるコストを99%削減した。比較対象のモデル名や測定方法は公表していない。
説明会では記者から、AIの攻防では攻撃側が優位とされる中で、AI同士を戦わせる手法は成り立つのかという質問が出た。鈴木氏は次のように答えた。
「攻撃者が高度なモデルを使う中、守る側も同等のモデルを持たなければ対抗できない。攻撃者だけが優位な状況を打破するために研究組織を設立した」
コストについて鈴木氏は、一般的なフロンティアモデルで10ドルかかる処理をBlue Solanoでは0.03ドルに抑えたと説明した。
SafeMindは「CrowdStrike Falcon」プラットフォーム上でネイティブに動作する。モデルとハーネスは、パートナー向けプログラム「Project QuiltWorks」を通じてスタンドアロンでも提供する予定だ。
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