AIエージェントの導入率はトップ、しかし監視は追い付かず KnowBe4調査が示す日本企業のいびつな実態

生成AIやAIエージェントに由来するミスやインシデントは、既に現実に起きている。KnowBe4の調査では、セキュリティ業務を担う社員の半数超が経験、見聞していた。その背景にある、日本企業に特有の構造とは何か。

» 2026年11月06日 07時00分 公開
[松林沙来,ITmedia]

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 セキュリティ意識向上トレーニングなどを手掛けるKnowBe4は2026年11月4日、記者説明会を開き、日本企業のAI活用に関する2つの調査結果を発表した。同社のサービスは国内で1700社以上が採用し、日本企業での総ユーザー数は200万人に上るという。

 同社が2026年9月に実施した調査によると、セキュリティ業務を担う社員の半数超が、生成AIやAIエージェント由来のミスやインシデントを経験したか、周囲で見聞きしていた。一般従業員と比べても際立って高い割合だ。

 同社の別の調査からは、日本企業のAI活用が世界と比べて偏った形で進む構造が浮かび上がった。KnowBe4 Japanの力一浩氏(職務執行者社長)は「監視・管理できる仕組みを整えなければ、AIの活用を進めることは非常に難しい」と指摘する。

KnowBe4 Japanの力一浩氏(職務執行者社長)(左)と、KnowBe4のブライアン・パルマ(Bryan Palma)氏(社長兼CEO)(右)(筆者撮影)

日本のAI活用、何が「いびつ」なのか

 KnowBe4が2026年7月に公開した調査「エージェンティックAIのリスクを『人間の強み』へ」によると、日本はAIエージェントの導入率が調査対象の13の国・地域で最も高い一方、人間の監視が限定的なまま自律稼働させている割合も最も高かった。

 この調査は13の国・地域のセキュリティリーダー800人と一般従業員3200人を対象に実施したもので、本稿ではこのうち日本在勤のセキュリティリーダー75人(従業員250人以上の組織に所属)の回答に基づくデータを取り上げる。日本のセキュリティリーダーの79%がAIエージェントを業務ワークフローに導入済みで、世界平均の58%を大きく上回る。一方、導入済みの組織のうち34%は人間の監視が限定的なまま自律稼働させており、同社は世界平均(17%)の約2倍だとしている。力氏は「AIエージェントの導入は多いが、しっかり管理・監視しきれていない状況が読み取れる」と述べた。

AIエージェントの導入が進んでいるが、監視は手薄(出典:KnowBe4の説明会資料)

 冒頭で触れたもう一つの調査「AIによるミスを、会社は『罰する』のか『学ぶ』のか」(2026年9月)では、国内の432人を対象にAI由来のミスやインシデントの経験を聞いた。セキュリティ業務を担う社員(118人)では55.9%が「自分自身に発生した」(35.6%)か「周囲で発生した」(20.3%)と回答し、一般従業員(314人)の8.2%を大きく上回った。力氏はこの差について「セキュリティを担う社員の方が、ミスやインシデントを見られる可能性が高いためではないか」との見方を示した。

 経験・見聞した回答者にミスやインシデントの内容を複数回答で聞くと、セキュリティ業務を担う社員(66人)では「機密情報の漏えい」が50.0%で最多だった。「メール・ファイルの誤送信」(48.5%)、「AIが誤った情報を生成し、そのまま業務で使用」(45.5%)が続く。力氏が「特筆すべきだ」と指摘したのは「AIが権限のないデータ・システムにアクセス」で、21.2%が経験・見聞していた。

成功する攻撃の8割超はなお「人」狙い

 質疑応答では、AIの普及によって「人」側のリスクがどう変わるかという質問が出た。KnowBe4のブライアン・パルマ(Bryan Palma)氏(社長兼CEO)は次のように答えた。

 「成功するサイバー攻撃の85〜87%は、依然としてソーシャルエンジニアリングやフィッシングなど『人』を標的にしたものだ。攻撃の根本的な手法は従来の延長線上にあるが、生成AIやディープフェイクの登場で攻撃の精度と巧妙さが格段に向上した。さらに、プロンプトインジェクションのようにAIエージェントを介して人がだまされたり、意図しない誤操作を引き起こされたりする、新しいタイプの脆弱(ぜいじゃく)性が顕在化している」(パルマ氏)


 同社はこの日、組織内で使われるAIエージェントやツールを検出・可視化する新機能「Agent Risk Manager」も発表した。2026年11月現在はテクニカルプレビュー版として提供している。個人アカウントでの利用やシャドーAI(会社が把握していないAI利用)を含めて利用状況を可視化し、リスクの高い操作を検知した際にはその場でユーザーに適切な利用方法を通知する。

 「Microsoft 365 Copilot」やAnthropicの「Claude」、Googleの「Gemini」、OpenAIの「ChatGPT」との直接API連携と、「Google Chrome」「Edge」向けのブラウザ拡張機能で実現し、人のリスクとAIエージェントのリスクを1つのリスクスコアとして管理できるという。

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